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『美女と野獣』野獣のモデルになった実在の動物たち ─ ライオンのたてがみ、イノシシの牙、見えないところまで

美女と野獣
© Walt Disney Pictures 写真:ゼータ イメージ

ディズニーによる名作『美女と野獣』(1991)は、アニメ映画史上、はじめてアカデミー賞の作品賞にノミネートされた作品だ。監督のゲーリー・トゥルースデイル&カーク・ワイズ、楽曲を手がけたハワード・アッシュマン&アラン・メンケンら多くのキーパーソンによって生み出された本作に欠かせなかったのが、作品の顔である“野獣”のアニメーションを指揮したグレン・キーンである。

本作以外にも、『リトル・マーメイド』(1989)のアリエルをはじめ、『アラジン』(1992)『ポカホンタス』(1995)『ターザン』(1999)そして『塔の上のラプンツェル』(2010)で主人公のアニメーションを担当したグレンは、いわばディズニー・アニメーションのレジェンド。2010年に実施された米ScreenRantのインタビューでは、野獣のデザインができあがるまでの裏話が語られている。

そもそも『美女と野獣』の基になったのは、18世紀のフランスにて語られていた民話である。ディズニー以外にも多くのスタジオやテレビ局、クリエイターが翻案に挑んできたのは、そうした背景があるためだ。しかしグレンは、ディズニーが「美女と野獣」をアニメ化することにはいささか懐疑的だったと語る。その印象が変わったのは、グレン率いるアニメーターのチームが、リサーチのためにヨーロッパを訪れた際、フランスのロワール渓谷にあるシャンボール城に足を運んだ時だったそうだ。

「不穏で印象的な場所でした。朝、車を運転していて、もやと霧の中を抜けたら、尖った塔が目の前にたくさん現れるんです。あれは決して忘れないでしょうね。“これこそ野獣の城だ、ここに彼は住んでるんだ”って思いましたよ。」

現実の風景に刺激を受けたグレンは、野獣のデザインに取りかかるにあたって、“ベルが恋に落ちる相手としての説得力があること”を目指したという。そこで採用されたのが、実在する生き物の部位をデザインに取り入れて、野獣の内面を表すというアプローチだ。「キャラクターの感情は、主に眉と目に表れるもの。観客はそこを見ますよね。角など、いろいろな動物の要素も、目に合うよう整えていったんですよ」

感情をはっきり表せるゴリラの眉、文字通りやわらかい印象をそなえるライオンのたてがみ、剥きだしになったイノシシの牙、哀しみをたたえたバッファローの角とひげ、オオカミの脚としっぽ、屈強なクマの肉体、そして人間のまま残された目。グレンが生み出したのは、まるで鵺のように、全身があらゆる動物の部位で構成された“野獣”だった。彼を四本足で描いた時、デザインの正しさは確信に変わったという。

「その姿を見た時、“これこそが野獣だ、これが彼なんだ”と思えたんです。“もともと存在した生き物のようにしたい”と言っていたんですが、それがいきなり紙の上に現れた。誰もが、これこそ野獣だと認識できたんです。」

ちなみにグレンは、ちょっと大人向けのジョークを添えてもいる。なんと、野獣のお尻はマンドリルのような虹色だというのだ。グレン本人の言葉によれば「野獣のお尻は虹色ですよ。ベル以外は誰も知りませんけどね」。ええんか、夢と魔法の国やぞ……。

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Source: ScreenRant

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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