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【考察】映画『美女と野獣』を「城」で考えてみる

美女と野獣

世界的に大成功を収めているディズニー映画『美女と野獣』。ゴールデンウィークを利用して鑑賞したという方も多いのではないでしょうか。

恋愛はもちろん、ジェンダー、前作との比較、ミュージカル…。様々な視点と様々なキーワードで語られている2017年版『美女と野獣』。今回は「城」とその機能に注目して『美女と野獣』をおさらいしたいと思います。

【注意】

この記事には、映画『美女と野獣』に関する微ネタバレ内容が含まれています。

 

そもそも「城」って?

まずは一度『美女と野獣』から離れて「城」の持つ役割について考えてみましょう。少々の回り道になりますがお付き合いください。

「お城」は権力の象徴?

まず、大前提として「城」は権力ある者の建てた物であるという認識が必要です。東京タワーやスカイツリーがいくら高くても「城」と呼ぶことはできませんよね。

高い城は強い城

先ほど東京タワーなどを例に出しましたが、「高さ」は城に必要な要素です。地上にいる人間は否応なく高くそびえ立つ建物 ―この権力の象徴 ― を認識せざるを得ません。「権力者は知名度があり、知名度がある者には権力がある」という複雑な概念を「高さ」だけで城は体現しています。権力者に知名度があるのは当然だけど、知名度があるだけで権力になるの?と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、不倫で仕事を失うことになったタレントや議員の顔を思い出してください。この人たちの転落は知名度の高いマスコミに報じられてしまった結果ではないでしょうか?

逆に食品卸の関係者は「マツコ・デラックスがテレビで何を食べたか」という情報にはかなり敏感なんだとか。たしかにマツコが美味しいって褒めてたら買いたくなりますよね。

城の内部構造に注目

『カリオストロの城』などを思い出して頂くと分かり易いかと思います。伯爵は城の高い所からルパンをガトリングで狙いますし、ルパンと銭型は地下に閉じ込められます。ルパンはクラリスを目指して上へ上へと登っていきます。

このように、一般的に「城」は権力の上下関係と実際の物理的上下関係がイコールで結ぶことが可能です。(ラスボスって大抵最上階に居たりしませんか?)

『アナと雪の女王』のエルサなどはこの例外にあたりますが、この場合はざっくり「へそを曲げて引きこもるために自分で城をもう一つ作っちゃった」と表現することができます。つまりエルサは他人を支配しているわけではないのでこの原則からは外れるようです。城の持ち主が悪役の時にこの原則が当て嵌まることが多いのかもしれませんね

では、『美女と野獣』はどうだったか

まず、王子様が住んでいたわけですから権力者の住居であることは間違いありません。「王子様」と聞くと少なくとも僕はどうしても「女性にとっての憧れ、完全無欠のヒーロー」というような記号的なイメージがまとわりつくのですが、ここではしっかりと「王権のナンバー2」という本来の意味を忘れずにいたいです。

日本の公式サイトのあらすじでも野獣は「王子」と記載されていますが、他に家族は居ないようですし実質の王様ですよね

次に高さ。村から城までは馬を走らせるほど距離があるのでこの「高い城は人々に常に認識されるから強い城」という定義からは外れますが、ここでは権力=知名度という関係に注目したいところです

たしかに城はしっかりと迫力ある高さを終始保っていましたが、知名度はどうでしょうか。不道徳な王子への罰として魔女が彼を野獣に変身させますが、同時に魔女は村の人間から彼の記憶を消してしまいます。つまり、知名度を奪われてしまっています。つきつめれば彼は権力を奪われたことになります。

彼が人間の姿に戻ると再び村人たちの記憶も元に戻り、盛大なフィナーレを迎えることになります。最後は権力と呼ぶほど強張ったものではないにしろ、村の人々は彼に対してしっかりと敬意を払っています。

そして城の内部構造。最後の野獣討伐のシーンではまずは入口で攻防戦があり、次に1階での乱闘。村人たちは徐々に徐々に上へ登ります。ガストンと野獣との直接対決は城の上部で交わされ、それに敗れたガストンは地上へと落ちていきます。家臣は下部で闘い、野獣は上部で構えます。勝利した野獣は上部に位置しますが、敗れたガストンは下部へと落下していきます。権力者の居住地として「城」がしっかりと機能しています。

このように丁寧に色々なパーツを拾っていくと「権力」という新たな側面が見えてくるような気がします。城が「城」として成り立っている以上、そこに住む野獣を「権力者」とみなしても問題ないように思えます。

このようなフィルターを通して『美女と野獣』を要約すると、①一度失権した孤立した野獣が、②内面的な成長を果たすことで、③再び権力を取り戻す 物語であるとも言えますね。

「内面に問題アリの権力者」。なんだか心当たりがありますね……。声高に唱えるには少々無茶があるかもしれませんが、ここまで付き合ってくれた読者の皆様は筆者と同じことを考えてくれていると思います。

「トランプ批判だ!」(あ、名前出しちゃった…)と鬼の首を取ったよう断言してこれを武器に筆者自身が米国を非難したいというわけでは決してありませんが、このように1つの物語の中に様々な解釈の可能性を見出すことは興味深く、なんなら「お得」ではないでしょうか?

あくまでも可能性のご提案なのでこれが絶対正しいというわけではありませんが、楽しんで読んで頂けたら本望です。広く親しまれる作品のヒット作。観客の母数が多い分、当然解釈の数も多いはず。色々な感想や色々な解釈に触れて「たしかにそうかも」とか「それは違う」とあーだこーだ言うのも映画の醍醐味ですよね。

Writer

けわい

不器用なので若さが武器になりません。西宮市在住。

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