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『ブラック・ウィドウ』単独映画、なぜ実現に10年かかったのか ─ スカヨハ「長い間演じてきたので、試練が必要だった」

ブラック・ウィドウ
©2019 MARVEL

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作ブラック・ウィドウは、スカーレット・ヨハンソン演じるナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウを主人公とする初めての単独映画だ。ファンの間では長年待ち望まれてきた“夢の企画”が、『アイアンマン2』(2010)での初登場から10年が経過した今、いよいよお目見えとなる。

それにしても、『ブラック・ウィドウ』の実現には、どうしてこれほどの時間がかかったのか。なにしろ『ワンダーウーマン』が世界的ヒットを記録し、多くの観客が女性ヒーロー映画を求めていると証明されたのでさえ、すでに約3年前となった2017年のことである。このたび、米Entertainment Weeklyでは、スカーレット・ヨハンソンとマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長がその背景と目論みを明かしている。

この記事には、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレが含まれています。

もともとブラック・ウィドウの単独映画を作るというアイデアが語られ始めたのは、MCUの記念碑的一作『アベンジャーズ』のプロモーションが行われていた2012年だったという。ただし当時は「ほんのアイデアにしかすぎなかった」といい、具体的に企画として動き出すことはなかったのである。その後、MCUは作品同士のリンクを深めていき、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)という集大成に向けて走り始める。

その間、ナターシャ・ロマノフの物語は――単独映画が実現しない代わりに--それぞれの作品で少しずつ描かれてきた。ファイギ社長いわく、MCUという大きな構造そのものが『ブラック・ウィドウ』の製作を先送りする理由のひとつだったようだ。

「私たちは過去5~6年間、インフィニティ・サーガを終わらせることを計画してきました。その中でナターシャの物語を描くことを優先したのです。(インフィニティ・サーガが終わりに向かう中で)すでに知られているキャラクターの過去を、単独映画として突然描くのは良くないと思いました。」

ただしファンやメディアは、そうした思惑など知るよしもない。数々のインタビューでは、ヨハンソンに「ブラック・ウィドウの単独映画はいつですか?」との質問が投げかけられてきたのだ。ヨハンソンは、そうした質問の答えを濁さなければならない中、ある思いに至ったという。「もしも作るなら、創作的に充実した作品にしたいと思いました。(ナターシャを)長い間演じてきたので、試練がなければいけない。以前やったのと同じことはやりたくなかったんです」

『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、ナターシャは任務のために自らの命を差し出した。それゆえに、単独映画『ブラック・ウィドウ』はMCU史上初の“前日譚映画”となる。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でアベンジャーズが分裂した後、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で彼らが再会するまでの、“ナターシャ・ロマノフの知られざる物語”が描かれるのだ。過去に示唆されてきた、秘密が隠されているらしい“ブダペスト”や、ナターシャをスパイに育て上げた訓練プログラム「レッドルーム」にも光が当てられるという。

ヨハンソンは「アベンジャーズに再合流する前、究極の犠牲を払う以前のナターシャを描くことに興味がありました」と語る。「バラバラの破片のようだった彼女が、どのように完全な人間になったのか、ということです」。ファイギ社長も同調する。「単に空白を埋めるだけの前日譚では面白くない。彼女がどうやってウィドウズの一員になったのか、どうやってバク転を習得したのか、そんなことは問題じゃありません」。

Kevin Feige / ケヴィン・ファイギ
Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kevin_Feige_(28556369381).jpg

物語を描くキーパーソンに選ばれたのは、女性監督ケイト・ショートランド。『さよなら、アドルフ』(2012)では第2次世界大戦後を舞台にナチス高官の娘が味わう苦境を描き、『ベルリン・シンドローム』(2017)では女性写真家が突如として監禁事件の被害者となる不条理を紡いで高く評価された俊英だ。『ブラック・ウィドウ』への就任にあたっては、“立ち直る力”こそがナターシャの魅力だと考え、あくまでスーパーパワーを持たない人物であることを重要視したという。

「(ヨハンソンとは)信頼や親密の物語、女性たちが生き延びることの物語を描くということで意気投合しました。(ナターシャは)厳しい幼少期を過ごし、これまで生き抜いてきて、思いやりがあり、他者を助けている。自分がスーパーヒーローじゃなくても、そんな女性には共感できますよね。だけど過去の作品を観ていると、彼女が視線の対象や物として扱われている場面も多い。ナターシャという人が、ヒーローではない時の彼女がどんな人間なのかがわからなかったりするんですよ。」

監督のアプローチについて、ナターシャの“母”メリーナ役を演じるレイチェル・ワイズは「ユニバース自体はファンタジックですが、演出はすごくリアル」とコメント。“父”アレクセイ/レッド・ガーディアン役のデヴィッド・ハーバーは「直球のアクション映画だと思っていましたが、機能不全家族を描く人間ドラマになりました」と述べている。

アメコミ映画で女性キャラクターを主人公にして、その内面を掘り下げる。しかも、彼女がスーパーパワーを持っていないことに注目する……。ヨハンソンはこうした取り組みについて、“5~10年前ならば不可能だったもの”だと強調する。

「この映画のことを、“5年前、10年前に作られるべき作品だった”と言う人もいます。だけど私は、(もし実現していても)充実した作品にはならなかったと思います。そんな映画を作ることはできなかったでしょう。この作品は時代精神の結晶として作られているものだし、それが素晴らしいと思うんです。」

なお、ヨハンソンは本作で主演とプロデューサーを兼任。いよいよ劇場公開が近づきつつある今、作品のすべてを指揮した人物として、「まだ観客のみなさんに観てもらっていないので、どんなリアクションが返ってくるかが楽しみですね」と期待を述べている。

映画『ブラック・ウィドウ』は2020年5月1日(金)日米同時公開

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Sources: Entertainment Weekly(1, 2

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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