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【レビュー】DC『ブルービートル』日本の特撮ヒーローファンにも刺さる「変身モノ」の歓び ─ 劇場未公開が惜しすぎる、今年ベスト級の傑作アメコミ映画

ブルービートル
DC LOGO, BLUE BEETLE and all related characters and elements © & ™ DC. Blue Beetle © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

DC映画『ブルービートル』は、ここ日本では劇場で観られなかったのが、とにかく惜しい。DC映画としては『アクアマン』や『シャザム!』1作目と並ぶ、またはそれ以上に、誰もが楽しめる高純度ヒーロー・エンターテインメントに仕上がっている。鑑賞すれば、今年のベストの一作に加えたくなる方も多いはずだ。その魅力をレビューする。

『ブルービートル』日本の特撮ヒーローや少年漫画好きに絶対ハマる

『ブルービートル』は、アメコミヒーロー映画としては意外にも珍しく、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』のような“変身モノ”である。つまり、特撮ヒーロー育ちの日本のファンとの相性がすこぶる良い。“ブルービートル”との名の通り、モチーフはカブトムシ。甲虫ヒーローといえば、日本の『ビーファイター』シリーズや『仮面ライダーカブト』を思い出す。

意外なことにDCユニバース映画において、フルフェイスマスクの装甲型ヒーローはブルービートルが実写初。ジャスティス・リーグのメンバーも、シャザムやブラックアダムも、みな顔の一部または全部を晒したコスチュームだ。見よ、このデザイン。こんなにも童心をくすぐるスーツのアメコミヒーローは久しぶりではないか?

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コンセプトは王道の特撮ヒーローものだ。ある日、どこにでもいる心優しい青年ハイメ・レイエスが強大な力を秘めた古代異星人の兵器“スカラベ”の宿主にひょんなことから選ばれる。人工知能を持つスカラベはハイメの体内に入り込み、ハイメにしか聞こえない声となって語りかける(監督は本作を、ボディ・ホラーの名手クローネンバーグ映画の“子ども向け版”と表現する)。スカラベには意思があり、宿主ハイメの命を絶対に護るという使命がある。

この未知のスーツは宿主ハイメに代わって動くこともでき、高速で飛行したり、ピンチになると身体を乗っ取って格闘もこなしてくれる。また、ハイメの望むがままに武器や防具を具現化できるという能力もある。サイボーグとグリーン・ランタンを組み合わせたような力を持つわけだ。

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言わばスーツと“合体”してしまったハイメだが、その力に振り回され、そしてアビリティを発見していく様子は『シャザム!』の1作目や、『スパイダーマン:ホームカミング』のようなワクワク感がある。また、何もわからない主人公にサポート役の相棒が常に付いてるという構図は日本の少年漫画的だ。例えば『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』がそうである。バトルになると身体の主導権を切り替えたり、サポートしたりするという点では『ヴェノム』『アップグレード』のようであり、日本の作品であれば『仮面ライダー電王』や『寄生獣』、『うしおととら』などにも通ずる。

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ハイメは初めのうちこそワケもわからず戦うが、次第にスーツの力に自身が適応していき、新ヒーローとして相応しい活躍を見せるようになる。ソフトとハードがそれぞれ輪唱していたところ、あるタイミングでぴたりと重なるような瞬間があり、えも言われぬ快感を与えてくれる。ヒーロー・オリジンの醍醐味を明るく楽しく享受している印象だ。

家族総出で戦います!

本作の画期的なところは、初めての変身シーンを主人公の家族全員に目撃させ、以降は彼らをサポートキャラに据えたことで、ヒーローであるという秘密を抱えて苦労したり、ヒーローとしての責任に1人で悩んだりするような時間を与えず、物語進行とアビリティ探索に全振りしたところだ。結果、鮮やかなまでのテンポとノリの良さが実現している。

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本作の最重要テーマのひとつは“ファミリー”だ。「多くのヒーロー映画は、1人の奮闘で世界を救う。この映画は、“1人じゃ無理”と言っている」と主演のショロ・マリデュエニャが語るように、本作はファミリーとの絆や連携こそが他の映画にはないポイント。ラテン系の陽気なキャラクター性も相まって、誰もが共感しやすく、明るくて笑えて、そして感動できる物語に仕上がっている。また、サポートキャラにも盛り上がる見せ場があり、戦いに参加するという要素は、最近では『シャン・チー/テン・リングスの伝説』があったが、『ブルービートル』はさらに賑やかでカラフル。そこにDC映画らしい神秘的な瞬間もきちんと絡めているから、全く隙がない構成になっている。

青 vs 赤!ヴィランとのガチンコ・パワードスーツ対決

本作のヴィランは、『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『アントマン』『ブラックパンサー』と似たパターンで、ヒーローと同じリソースによって、ヒーローと同等またはそれ以上のパワーを持っている。カラパックス中尉は、OMACと呼ばれる“ワンマン機動部隊”アーマーで戦う屈強な男。長年の多大な犠牲とともに開発されてきたOMACはスカラベの不思議な力を持って完成するのだが、肝心のスカラベがハイメに“寄生”したため、主人公を狙って襲うという筋書きだ。

新ヒーローにとって、自身のパワーの写し鏡のような相手と戦って勝利することこそ、その力を真に会得できる重要な機会となる。ブルービートルの青、カラパックスの赤のパワーが激突するバトルシーンは、まさしく少年漫画的で華々しい。

新DCユニバースにも続投決定!見逃せないヒーロー快作

ブルービートル
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主演のショロ・マリデュエニャはドラマ「コブラ会」で注目を集めていたところ、本作主演に大抜擢。ブルービートル役としてジェームズ・ガンによる新DCユニバースにも続投する、数少ないひとりだ。スパイダーマン役トム・ホランドぶりとも言える、今後成長していく姿が楽しみなタレント。本作後には早速、名優アル・パチーノと共演する映画も決定している。

『ブルービートル』は、DCであれば『シャザム!』や『アクアマン』、マーベルであれば『スパイダーマン』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のような、スッキリ明るくて楽しいヒーロー単独映画が好みの方なら間違いなくハマるはず。特定の文化の神秘性や奥深さを引き出した良作として『ブラックパンサー』とも比較できるし、『リメンバー・ミー』の明るくて前向きなメキシコ文化の描写が心に残った方にも鑑賞いただきたい。それから『仮面ライダー』のような日本の特撮ヒーローファンにも絶対オススメで、観ればわかるが『鬼滅の刃』的なところもある。間違いなく、日本で大きな人気を博すポテンシャルを備えた作品だったのだ。小学生から大人まで、スーパーヒーローを愛する全世代で応援したい。

ブルーレイ版では、観ればきっとMVPに選びたくなる名キャラクター「ばあちゃん」に迫る特別映像や、コミックにおけるキャラクター解説や制作舞台裏がたっぷり詰まった特典映像も豊富に収録。劇場公開を逃した分、お好きな環境で腰を据えてじっくり『ブルービートル』を堪能いただきたい。

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『ブルービートル』はデジタル販売中。12月20日(水)デジタルレンタル開始、ブルーレイ&DVD発売(税込5,280円)、DVDレンタル開始。

『ブルービートル』予告編映像

『ブルービートル』本編冒頭10分間 無料公開中

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© & ™ DC. Blue Beetle © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

Supported by ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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