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ほぼ残業なし!『ボス・ベイビー』3人の日本人クリエイターに訊くハリウッドCGアニメ現場 ─ ドリームワークスはホワイト企業?

ボス・ベイビー
(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

ドリームワークスはホワイト企業?

映画『ボス・ベイビー』が、2018年3月21日(水・祝)より日本公開となる。ユニバーサル・スタジオと、『シュレック』などのヒット作で知られるドリームワークス・アニメーションが、夢の初タッグを組んで製作された今作は、全米では『美女と野獣』を超え初登場1位、そして2週連続1位をキープした大ヒット作だ。

実はこの作品には、ドリームワークス・アニメーションから日本人クリエイターが参加している。THE RIVERでは本作の日本公開を記念し、『ボス・ベイビー』キャラクター・リギングの森廣 康二(モリヒロ・コウジ)さん、CGライティングの中村 創(ナカムラ・ハジメ)さん、武広 修(タケヒロ・オサム)さんの御三方にお話をうかがった。御三方は、『ボス・ベイビー』の製作現場でどのようなお仕事をされていたのか、また、どのような経緯で日本からドリームワークスに入社することとなったのか…など、『ボス・ベイビー』ファンはもちろん、将来ハリウッドの映画業界を志すクリエイターの方にとっても大変貴重なインタビューだ。御三方のお話によれば、ドリームワークス社ではプロジェクト管理がかなり徹底されており、それゆえに「ほとんど残業をしたことがない」ホワイト環境が実現されているという。

ボス・ベイビー
キャラクター・リギングの森廣 康二さん。
ボス・ベイビー
CGライティングの中村 創さん。
ボス・ベイビー
CGライティングの武広 修さん。

ドリームワークス社はバランス取れた労働環境、「10年以上働く方も多い」

──森廣さん、武広さん、中村さんのそれぞれの『ボス・ベイビー』におけるお仕事内容を、少し詳しく教えてください。

森廣:
キャラクター・リギングをしています。キャラクター・リギングとは、人形劇でいうと、元の人形を作るのがモデリングといって、人形を舞台の上で動かすのをアニメーターというのですが、リギングではモデリングの人が作ったキャラクターに関節を入れたり、アニメーターの人が動かせるような状態にする仕事をしています。口を引っ張ったら人間の口が広がるように広がるとか、口を開けたら顎の骨が下がるとか、目を開けたら瞼がちゃんと開いて、閉じたら目を包むように閉まるとか、そういうのを設定する仕事をしています。

武広、中村:
ライティングをしています。まさしくライトを当てる仕事をしています。もちろんライティングがメインの仕事なのですが、ライティングはデパートメントの最後の部門なんですよ。だから、いろんな部門からいろんなデータがやってくるんですね。そこで最終的にレンダリング(コンピュータ上で絵を作ること)をかけるのも一つの仕事なんです。そして、必ずしもデータがキレイにくるわけじゃなくて大体が何かしら問題があるんですね。特にうちはパイプラインが複雑なのでうまく来ることのほうが少ないんですよ。なんでうまく来ないのかを見つけてレンダリングをしなければいけないので、どこに問題があるのかを見極めて、テクニカルな部門であればテクニカルサポートの人に手伝ってもらったり、簡単なことであれば自分で直したりとか、もしくはモデリングの人に直してもらったりしてレンダリングできる形に持っていきます。

レンダリングをかけた後にコンポジティングという仕事があります。コンポジティングというのはレンダリングしたコンピュータで作った一枚一枚のレイヤーを最終的に合わせることなんですけれども、ここではそこまで含めてライティングの仕事です。コンポジティングした後、絵をもうちょっと変えたいなってなった時にもう一回レンダリングをするのはものすごい時間がかかって手間なので、コンポジティングで細かい調整をするところまで含めてライティングをやっています。

──将来御三方のように、ハリウッドの製作現場で活躍したいという方もいらっしゃると思います。御三方は、どのようなキャリア・経験を経て現在に辿り着いたのでしょうか。

武広:
もともと映画がやりたくてこのCG業界に入ったんですけども、なかなか最初から映画業界っていうのは入れなくて。かなり苦労してテレビ業界とかで経験し、いろんな映画会社に応募してやっと映画のCGができるような映画会社に入ったんですが、やっぱりアニメーションが大好きなんで、ここではこういうスタライズされたアニメーションが出来て幸せですし、ずっとやっていきたいと思っています。

中村さん:
僕は結構なりゆきですね。ドリームワークスはいい会社だからと勧める人がいたんで、それならどんなもんかと思ってきた感じです。しばらくはVFXをやっていたんですけど、その次にフィーチャーアニメーションの仕事をして、これがまたVFXと違うんですよ。考え方が違うというか。それが結構面白くて、もっと突き詰めてみるのもいいかもなと思い入社しました。

森廣:
私も映画の仕事がしたかったっていうのが大きな理由ですね。ドリームワークスの前に実写の仕事をやったこともあるんですけど、ドリームワークスのようなアニメーション映画を作るところは同じ映画の仕事でもスケジュールに融通利くので、いい面が組み合わさった感じがしました。実写の方の仕事は、仕事があるときはかなりキツくて、無いときは無いというような多少不安定な状況。それに比べ、ここは大きな仕事を継続的に出来て、自分の時間もそんなに犠牲にすることなくバランスが取れるっていうのがいいところですね。ドリームワークスは10年以上働いている人がたくさんいます。

ボス・ベイビー
(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

海外の現場には「チャレンジ精神あれば飛び込んでしまえばいい」

──日本人クリエーターがハリウッドで活躍するためには、どのようなことに挑むと良いでしょうか。

森廣:
仕事の実際の能力というのは仕事で経験すれば、ある程度上達すると思います。日本語が喋れない環境で仕事がしたいのであれば、ある程度その地でのコミュニケーション能力(ここでいえば英語)を多少は携えていなければ厳しいと思うので、そこをいかに仕事以外で上達させていくかだと思います。仕事のスキル、仕事の習慣の違いとかは慣れれば問題ないので、コミュニケーションが一番の課題になるんではないでしょうか。

武広:
僕も日本人の方は凄いスキルは高いと思うんです。ただ、一番の問題はやっぱり、ハリウッドで働きたいとすると、映画をやったことがないとまずハリウッドの会社は雇ってくれないんですね。どんな小さいプロジェクトでもいいから映画に関わることが、早い道だと思います。やっぱり経験を積まないとレジュメも見てくれない場合が多いんです。だから、どんどん海外に出て行くのがいいと思います。もう25年いますが未だに英語は大してできないですし、スキルがちゃんとしていれば英語も追いついてくると思います。どちらかというとCGの技術がちゃんとしていないと。英語ではどちらにしろ外国人に勝てないので。いかにCGのスキルをつけて、いいものを作っていくかっていうのが大事だと思います。

中村さん:
日本のCGの方にも時々お話するのですが、皆さん頑張っていてそんなにスキルの差はないと思います。チャレンジする精神があれば飛び込んでしまえばいいのではないでしょうか。英語とかも心配するのはよくわかります。私もあんまりしゃべれなかったですし。やっても無駄とは思いませんが(笑)、できないからって気に病むことは無いと思います。

「余裕を持ってスケジュールを組んでいるので、そんなに残業をしたことは無いです。」

ボス・ベイビー
(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

──『ボス・ベイビー』製作中の平均的な一日の流れを教えてください。

森廣さん:
リギングの方はほぼ定時で、残業は無いです。9時から18時の中で仕事をこなしていくっていう感じです。我々リギングは実際映画に出てくるショットの作業が無く、ショットの作業をする人の準備をする係なので、スケジュール的には流して切られるんで残業はほぼない状態です。

中村さん:
9時ごろに出社し、昨晩コンピュータに投げておいた計算をチェックして、まあ大体こんなもんだろうっていうのが終わるころ、みんなでスーパーバイザーの部屋に集まって最初のミーティングをします。それでそれぞれ進行具合を見せて、もっとこうした方がいいんじゃないかという話をします。それで、お昼の後にVFXスーパーバイザーの方に大きなスクリーンで見せる場があるんですね。そこで自分がライティングしたものを見せて指示をもらいます。キャラクターをもっと目立たせた方がいいとか、輪郭をきちっと出した方がいいとか、ここの背景が暗いから明るくして、など具体的な指示をもらいます。それで自分の席に帰り作業を進めて、言われたところを直し、夜コンピュータに計算を投げて帰ります。大体一晩経つと計算が終わるのでまた同じことを繰り返すといった感じです。

武広:
ライティングの仕事はそんな感じで、全体の流れからすると、一年ぐらい前から始まるんですけれども、半年くらい前になってくるとだいぶ忙しくなってきます。ショットが具体的に割り振られて、アニメーションがそのころから少しずつ上がってくるんで、それを見ながらライティングをつけていきます。ライティングの場合は締め切りがきっちり決まっているので、それを終わらせるために期間の最後の方には帰りが遅くなることもありますが、ドリームワークスは比較的余裕を持ってスケジュールを組んでいるので、そんなに残業をしたことは無いです。どちらかというと終わりそうになかったら人数が増えるというパターンなので。二本のラインで作業をしているのですが、最後の方になると全員投入というパターンが多いです。

ディレクターの細かなヴィジョンを実現するのが目標

──先日、荒牧伸志さんと松本勝さん(CGアニメ『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』など)にインタビューした際、お二方は「CGアニメは作り手の”手垢”みたいなのがつかないところが、クリエーターにとってはちょっと辛いところ」と仰っていました。御三方が『ボス・ベイビー』に残した手垢のような(実はこだわりと苦労が詰まっている)ポイントを教えてください。

森廣:
『ボス・ベイビー』のテーマとしては、あえて昔の2Dのアニメのような絵柄をCGでやるっていうのがあって、キャラクターに関してもシンプルだけど印象が強いようにしました。例えば私がやったキャラクターだと、悪役のフランシス・フランシスは、額のシワとか監督自らこういう線っていうのを描いてくれて、ほうれい線もダラっとカーブがあるんじゃなくて真っ直ぐにして、あるところで直角にクっと曲がって口に降りてくるようにするとか。シンプルだけど絵的に印象があるっていう監督なりのこだわりを自ら注文して作業させて頂いたので、そういう意識を持つようにしていました。意図しないところでシワや表面のヨレがでないように常につるんとした感じを保つということをしていました。

中村:
ライティング部門ではみんな髪の毛をこだわってやったんじゃないでしょうか。ディレクターがこういう金髪がいいっていうのが決まっていて、例えばラスベガスにいくシーンでカラフルなネオンの光があるのですが、光に当たってそれでも金色に光るのはあり得ないんですね。赤い光が当たったら赤く光るはずなんですよ。そんな環境でも金髪に見えるようにするなど、そういう細かいところにトリックを入れていたので、そういうところがある意味手垢ですね。

武広:
全員で作っているのであまり自己主張もできなく、基本的にはアートディレクターやディレクターの意向がすべてなんですね。なので、ディレクターがこういう風なビジョンを持っていて、それになるべく近い形でライティングを仕上げていくというのが目標なんです。ディレクターは、人によってはすごい細かいこだわりがある方もいます。例えば、普通はディレクターの方はあまりアーティスティックなインプットはせず、アートディレクターの方がするのですが、この『ボス・ベイビー』のディレクターはライティングまですごいこだわりがあって、すごい細かいことまで指示を出してきます。そういうビジョンを我々が実現するっていうのが目標ですね。

ボス・ベイビー
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──最後に、『ボス・ベイビー』を楽しみにしている日本の観客に向けてメッセージをお願い致します。

森廣:
面白いし、笑える。何なら大人の方が笑えるんじゃないかっていうギャグが沢山入っていて、話が面白いのはもちろん、その上に腹の底から笑えるギャグがあるという点が楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

武広:
僕も観ていてちょっと涙がホロってなるくらい良いシーンとかがあって、この映画って監督のかなり個人的な経験からきていると思うんですね。だから凄いこだわりがあるし、ドリームワークスの映画ってストーリーよりもハチャメチャをやっているっていう映画が多いんですが、この映画はストーリーもちゃんとしていて感情移入も出来るし、そういう点で楽しんでいただけるんじゃないかと思います。

中村:
是非、ご家族で観て楽しんでいただけたらと思います。

──貴重なお話をありがとうございました。

映画『ボス・ベイビー』
(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

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映画『ボス・ベイビー』は2018年3月21日(水・祝)全国公開。森廣さん、武宏さん、中村さんの想いも詰まった話題作を、是非劇場で。

『ボス・ベイビー』公式サイト:http://bossbaby.jp/

(取材:Naoto Nakatani)

Writer

THE RIVER編集部
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