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【レビュー】マーベル『ブラックパンサー』最速感想が到着!「この映画は文化的な事件」深いテーマで現実に響く ― 海外評価、ヴィランにも絶賛

©MARVEL STUDIOS 写真:ゼータ イメージ

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品、映画『ブラックパンサー』は、かねてより従来のマーベル映画とは一線を画したものとして製作されてきたことが語られている。ライアン・クーグラー監督が「MCU版のジェームズ・ボンドにする」と述べた、その全貌が米国でついに解禁された。

2018年1月29日(現地時間)、ロサンゼルスにて『ブラックパンサー』のワールド・プレミアが開催された。会場でいち早く本編を観た人々が、その感想をSNSに投稿している。
どうやら一線を画したのは、その内容だけではないようだ。従来のMCU作品とは、感想を寄せている人々の顔ぶれもやや異なるのである。彼らの言葉からうかがえるのは、『ブラックパンサー』という映画が到達しようと試みた“深み”だった。

「文化的な事件」現実に響くマーベル映画

『ブラックパンサー』のワールド・プレミアから届いた感想に“新しい”ところがあるとすれば、感想の書き手たちが、いずれも本作のテーマや意義について語らざるを得なくなっているところだ。まずは本作を「文化的な事件」とまで評した、映画ライターのパトリック・“PJ”・キャンプベル氏による感想から入っていこう。

パトリック・“PJ”・キャンプベル氏(OmegaUnderground)
「みなさんは、まだ『ブラックパンサー』への心構えができていないと思います。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)以来、MCU最高の映画かもしれません。ライアン・クーグラー(監督)は、とても鮮やかで、また新しい作品をマーベル・ユニバースに生み出してくれました。(チャドウィック・)ボーズマンや(マイケル・B・)ジョーダンは本当に素晴らしい。もっとワカンダを観てみたいと思います。
この映画が存在することが、まだ信じられません。クーグラーはユニークで、独特で、MCUのみならずヒーロー映画全体にとって重要な仕事をしてくれました。アクションも優れています。ここで達成されたものに対して、僕はひれ伏すしかありません。この映画は文化的な事件です。」

一方、いつもMCU作品の熱い感想を届けてくれる、Colliderのスティーヴン・ワインストローブ氏も、いつもとは少々語調が異なる。もちろんマーベル映画について語る熱さはあるのだが、むしろ印象的なのは、ライアン・クーグラー監督の作風についての言及だ。

スティーヴン・ワインストローブ氏(Collider)
「マーベルが『ブラックパンサー』でまたやってくれました。ストーリー、また映画として優れており、マイケル・B・ジョーダンはヴィランの役割を完璧にやってのけています。ロキ以来最高のキャラクターです。ダナイ・グリラも最高にカッコ良く、(出番の)毎秒が大好きでした。大ヒットすることでしょう。
そのほか『ブラックパンサー』で素晴らしかったのは、ライアン・クーグラーが、現実の世界が抱える重要な問題を、説教臭くならず、また偽ることなく描く、その純粋な方法を獲得したことです。どんな映画でも難しいことを、マーベルの大作映画で成功させたことに深く感動しました。」

いつもの顔ぶれの中で、いつも通りのコメントを残している印象があったのは、CinemaBlendのエリック・アイゼンバーグ氏だ。彼は「大好きな映画。ワカンダ王国の掘り下げは素晴らしいし、エリック・キルモンガーは確実にマーベル最高のヴィランの一人。そして、愉快かつドラマティック」と、ヒーロー映画としての快感をありのままに表現してくれている

魅力的なヴィラン、そしてサブキャラクターたち

ワールド・プレミアでの感想で特別に目立ったのは、マイケル・B・ジョーダンが演じたヴィラン、エリック・キルモンガーへの絶賛だ。「『マイティ・ソー』のロキ以来」「泣かされた」といった、彼の演技に対するコメントが含まれている感想をいくつかご紹介しよう。
とりわけ気になる感想を投稿しているのは、本作のテーマに正面から切り込んでくれたロサンゼルス・タイムズ誌のジェン・ヤマモト氏だ。

ジェン・ヤマモト氏(ロサンゼルス・タイムズ)
「『ブラックパンサー』は、見事で、活発で、目的のある作品でした。表現の問題、アイデンティティの問題についてのスーパーヒーロー映画にして、それらが人々に拒まれることがいかなる悲劇かを描いているのです。現実的な初めてのMCU作品でした。マイケル・B・ジョーダンのキルモンガーに泣かされましたし、彼こそがヴィランなのです。」

マイク・ライアン氏(UPROXX)
「『ブラックパンサー』にムダはありません。ずば抜けて政治的なマーベル作品で、これがマーベル映画だということを思い出さなければいけないほどでした。『ブラックパンサー』は、言うべきことがたくさんある映画なんです。それにマイケル・B・ジョーダンは…スゴい。」

フランク・パロッタ氏(CNN)
「『ブラックパンサー』はマーベルで最も優れた作品のひとつにして、マーベルやその他を含めて最高級のヴィラン、マイケル・B・ジョーダン演じるエリック・キルモンガーが登場します。彼は登場シーンをすべて自分のものにしているんです。しかもこの映画には、宣伝で謳われているすべてがある。長く愛される作品となりますように。」

マイケル扮するエリックのほか、思わぬ目を奪われてしまうキャラクターとして、本記事に紹介できなかった感想でも多数の賞賛を受けているのがダナイ・グリラ扮する親衛隊長オコエ、そしてティ・チャラ/ブラックパンサーの妹にして天才発明家のシュリ(レティーシャ・ライト)
作品のテーマや見どころとともに、彼女たちの演技について語っているのは、最速感想の常連者であるFandangoのエリック・デイヴィス氏である。

エリック・デイヴィス氏(Fandango)
「『ブラックパンサー』は非凡なる――MCU版ジェームズ・ボンドです。こんなスーパーヒーロー映画は観たことがありません。大胆で美しく、そして激しい。従来のマーベル映画とは異なる深みと神秘性も備えています。100%アフリカン、そして最高にカッコいい。
一番素晴らしかったのは、家族の絆や部族を守ることについて、かくもエモーショナルで複雑なストーリーが展開されること。マイケル・B・ジョーダンへの絶賛が相次ぐでしょうが、私のお気に入りはダナイ・グリラとブラックパンサーの妹、レティーシャ・ライト(シュリ役)でした。
最後に、『ブラックパンサー』は観客の映画です。大勢と一緒に観てください、盛り上がることでしょうから。壮大で、フィメール(女性)・ファーストの映画。大ヒットして、未来のさらに優れた表現への道が開かれることを願います。」

いつものマーベル映画とは違う…!?

たとえばMCU作品の感想で、ウィリアム・シェイクスピアの名作戯曲『ハムレット』が引き合いに出されることがあっただろうか。Variety誌のラミン・セトゥーデー氏は、『ブラックパンサー』について「マーベル・スーパーヒーロー映画の『ハムレット』。それほど画期的な作品でした」語っているが、これは本作がいかにMCUで異質な輝きを放っているかを象徴しているだろう。

以下では本作のテーマや背景、そして同時代性などに言及されている感想の数々を連続でご紹介したい。しばらくコメディ路線が続いたMCUだが、やはり『ブラックパンサー』は、その大きな転換点となる作品なりそうだ。なにせ、従来のMCU作品には批判的なのだと思しき人物も、今回は好意的なコメントを寄せているのである。

ロス・コーネット氏(ScreenJunkies)
「『ブラックパンサー』は私たちの求めていたすべてです。スマートで、エモーショナルで、よくできたストーリー。そして、非常に美しい。 理屈抜きのファイト/アクションシーンがあるマーベル映画にして、さまざまなレベルで成功した作品です。優れたストーリーに豊かな演技、複雑な関係性のリアルなキャラクター、そして現実に通じる課題。」

ヨランダ・マチャド氏(Rotten Tomatoes認定批評家)
「『ブラックパンサー』は、ブラックで、美しく、そして壮大です。見事なショットの映画で、温かく、アクションもあれば、現在とても必要なメッセージもある。女性たちが輝いていて、大胆で、そして強い。有色人種の女性に、これまで認められてこなかったすべてがありました。ライアン・クーグラーは天才です。」

アダム・B・ヴァリー氏(BuzzFeed)
「『ブラックパンサー』は驚くべき映画。ライアン・クーグラーは、深いテーマを掘り下げ、黒人が成功する鮮やかなイメージを具現化するため、スーパーヒーロー映画を手なずけてみせました……そして、本当に愉快な作品なんです!これまでのハリウッドでは作られなかった大作映画です。すごい、すごい、すごい!」

デヴィッド・エールリッヒ氏(IndieWire)
「『ブラックパンサー』はマーベル映画のようで、しかしそれ以上の作品。アクションは予想通り退屈でしたが、これはアイデンティティや歴史、そして音楽について、初めて現代的感覚を備えたMCU作品なのです。ワカンダ王国は実在します。出演者の全員が素晴らしいのですが、女性たち(それから戦闘用のサイ)が場面をかっさらっていきます……ダナイ・グリラ!」

ここまでお読みいただけた方なら、『ブラックパンサー』が従来のMCU作品、ひいてはヒーロー映画とは異なる受け入れられ方をされていることが十分にご理解いただけたのではないだろうか。もちろん、いつもながら全貌を自分自身で確かめないかぎりはなんとも言えない……のだが、もうひとつ、最後に想いのこもった感想をご紹介しておこう。もしかしてこの映画、異色作にして恐るべき傑作なのでは?

シーン・ガーバー氏(SuperHeroNews)
「『ブラックパンサー』が、マーベル・スタジオの帝王として王座に腰かけ、王冠を被りました。予告編で期待させられた以上にエモーショナルで、アクションはまばゆく、VFXは魅力的で、衣裳と美術のデザインは実に優れています。史上最も美しく作られた大作映画のひとつです。
この映画は、史上最もアカデミー賞候補に近いマーベル・スタジオ作品となるでしょう。衣裳と美術デザインは言うまでもなく、今年の作品にもよりますが、作品賞や監督賞、あるいは俳優賞にもノミネートされるかもしれません。」

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国ロードショー

©MARVEL STUDIOS 写真:ゼータ イメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。