マーベル『ブラックパンサー』主人公ティ・チャラ、『シビル・ウォー』からどう変わった?単独映画は若き国王の「個人的な物語」に

マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作、映画『ブラックパンサー』の主人公ティ・チャラは、アフリカ大陸にあるワカンダ王国の若き「国王」だ。
ワカンダはキャプテン・アメリカの盾にも使用されている金属・ヴィブラニウムの産出国であり、高い技術力を誇りながら、諸外国にはその特徴を伏せているという特徴を持つ。ティ・チャラ/ブラックパンサーを主人公とする初めての単独映画である本作は、彼が国内外の脅威から自国をいかに守るのか、という点がストーリーの大きなポイントとなるわけだ。

そんなティ・チャラは、あのスパイダーマンとともに、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)に初登場したキャラクターだ。父ティ・チャカをテロによって失った彼は、その犯人を探して復讐を果たすという執念にとらわれた、いうなれば“ダークヒーロー”的な側面が強調されていたのである。
では、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を経て、彼はどのように変わったのか? そして単独映画『ブラックパンサー』は、いかなる経緯を経て構想されたのか? ライアン・クーグラー監督や主演のチャドウィック・ボーズマンら、キャスト・スタッフの証言とともに振り返っていくことにしよう。

なぜティ・チャラは『シビル・ウォー』が初登場だったのか


ティ・チャラにとって最大の悲劇は、ヒーローたちを国連の管理下に置くという「ソコヴィア協定」の署名式で起こった。突如起こった爆破テロによって、演説中だった父親ティ・チャカが死亡。容疑者となったバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーをめぐって、彼はチーム・アイアンマンの一員としてキャプテン・アメリカらと真っ向から対立するのである。
『ブラックパンサー』で主演を務めるチャドウィック・ボーズマンは、『シビル・ウォー』での初登場について、英Total Film誌にてこのように語っている。

「(ティ・チャラの)ある側面を『シビル・ウォー』で掘り下げてみて、それがうまくいくかを確かめるのは素晴らしいと思いましたよ。でも、プレッシャーはすごかったですね。だって、もう演じられなくなるのはイヤだったから。わかりますよね……?」

多くのヒーローがオリジン・ストーリーで初登場を飾るのとは違い、ブラックパンサーは、その一面のみを先に紹介される形でお披露目となった。単独映画を前提とする初登場ではあったわけだが、これは観客側からもスタジオ側からも、ヒーローとしてのポテンシャルや人気を値踏みされる機会でもあったのだ。

『ブラックパンサー』のプロデューサーであるネイト・ムーア氏は、そもそも単独映画の第一作をオリジン・ストーリーとして構想していた時期があったことを、英Empire誌のポッドキャストにて明かしている。

「2010年に単独映画の企画を、素晴らしい脚本家(編注:共同脚本のジョー・ロバート・コール)と一緒に始めました。それからすぐに、オリジン・ストーリーの落とし穴にハマったことに気づいたんです。つまり、どこかで知っているような構造で、求めていたものほどワクワクしなかったんですよね。そこで(企画が)しばらく保留になりました。その後、『シビル・ウォー』を企画している時に、(オリジン・ストーリーとは)別の形でブラックパンサーを登場させる機会だと思ったんです。」

チャドウィックの不安をよそに、『シビル・ウォー』のブラックパンサーは大きな好評を得る。『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督も、マーベルとの契約以前に『シビル・ウォー』を観たことが刺激になったと語っているのだ。
ネイト氏は、『シビル・ウォー』での初登場がブラックパンサーというキャラクターにとって非常に良かったことを強調している。

「(『シビル・ウォー』は)キャラクターにとって最高の出発点になりましたし、単独映画でオリジン・ストーリーの落とし穴を回避し、クールなストーリーを描くことを実現してもくれました。」

 

『ブラックパンサー』では“等身大の国王”に

映画『ブラックパンサー』のメガホンを取ることは、ライアン監督にとって「挑戦だった」という。主人公のキャスティングや、キャラクター造形の初期段階に自分自身が携われないことは、作り手としてそれだけ高いハードルなのだ。
それでも、前述の通り、監督は『シビル・ウォー』を観て、またチャドウィックやマーベル・スタジオ側との話し合いを経て、『ブラックパンサー』を手がけることを決意している。脚本の執筆も担当した彼は、ティ・チャラ/ブラックパンサーというキャラクターを、いかに『シビル・ウォー』から変化させたのだろうか。

Fandangoのインタビューにて、ライアン監督は、『ブラックパンサー』が『シビル・ウォー』直後の物語であること、そしてティ・チャラは多くの意味で「同じ人物」なのだと語っている。

「僕が大切だと考えたのは、ティ・チャラをほとんど等身大の目線で見せることでした。彼が周りの人たちをどんなふうに愛するのか、どんな時に安心するのか。
『シビル・ウォー』で、彼はワカンダの外にいました。本当はいたくなかった場所にいて、父親を殺されるわけです。全編にわたって使命を負っていて、苦しんでいて、口数も少ない。それが彼を魅力的にしていたんだと思うんですが。」

そこでライアン監督は、本作の物語を、ティ・チャラ自身の目線から描く冒険物語として捉えることにしたようだ。

「この映画のティ・チャラは(『シビル・ウォー』と)同じ人物ですが、彼のあらゆる面を見ることになります。ティ・チャラの目線から描かれた映画ですし、彼は自分の愛する人や大切な人たちに囲まれている。つまり、個人的な視点の物語ですね。一人の人間が、自分の持ちうる大きな責任や、一つの国を率いる責任を引き受けていく。この映画を通して、彼はその重みを知るんですよ。」

『シビル・ウォー』に登場した「父親の復讐に燃える青年」から、「ワカンダ王国を牽引する若き王」へ。作品を連続して観てみると、その成長物語がさらに腑に落ちやすくなることだろう。本作でティ・チャラは何と対峙し、そして何を乗り越えるのか……。

俳優、チャドウィック・ボーズマン

チャドウィック・ボーズマン

Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chadwick_Boseman_(28635126335).jpg

『シビル・ウォー』に続いてティ・チャラ/ブラックパンサーを演じるのは、1977年生まれのチャドウィック・ボーズマン。「若き国王」と言いつつも、2017年11月に40歳を迎えた、実は相当のキャリアを積んでいる人物だ(ちなみに、『ドクター・ストレンジ』(2016)のベネディクト・カンバーバッチは1976年生まれ)。

2003年よりテレビドラマなどで活躍しているチャドウィックが、映画で初めて主演を務めたのが2013年の『42 ~世界を変えた男~』である。同作でアフリカ系米国人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソン役を演じたのち、『ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~』(2014)でタイトルロール、『マーシャル 法廷を変えた男』(2017)でアフリカ系米国人初の最高裁判事サーグッド・マーシャル役と実在の人物を次々に務めているのが特徴だ。
その一方で『ブラックパンサー』に直結するのは、ド直球のエンターテインメント作品『キング・オブ・エジプト』(2016)や、社会派スリラー映画『キングのメッセージ』(2017)だろうか。ジャンルを問わず、きちんと社会にメッセージを発信する映画を中心に活躍してきたスタンスが、ハリウッド初の黒人ヒーロー大作映画『ブラックパンサー』につながったといえるのかもしれない。

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国ロードショー

『ブラックパンサー』公式サイト:http://marvel.disney.co.jp/movie/blackpanther.html

Sources: Total Film 2018 February
https://screenrant.com/black-panther-origin-story-marvel/
https://soundcloud.com/empiremagazine/black-panther-spoiler-special-ryan-coogler-nate-moore
https://www.fandango.com/movie-news/exclusive-black-panther-director-ryan-coogler-talks-james-bond-influences-and-that-kendrick-lamar-album-752910
©MARVEL STUDIOS 写真:ゼータ イメージ

About the author

THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすくお伝えしたいと思っています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp へ。

JOIN THE DISCUSSION

※承認されたコメントのみ掲載されます。