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マーベル『ブラックパンサー』は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に近い作風に ― 政治的要素、ユーモアの取り扱い方

マーベル・シネマティック・ユニバースの新作映画『ブラックパンサー』は、2014年『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に近い作風になるという。2017年、撮影現場にてプロデューサーのネイト・ムーア氏が語っていた。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)に初登場したティ・チャラ/ブラックパンサーを主人公とする本作は、父親である先王ティ・チャカを亡くした彼が、若き国王としてワカンダ王国に戻ってくるところから始まるという。外界から遮断されたワカンダは、すぐれた科学技術と豊富な資源を持ち、それゆえに外敵から狙われることもあるのだ……。

『キャプテン・アメリカ』に通じる「政治」と「ユーモア」

マーベル・コミックを原作としたヒーロー映画である『ブラックパンサー』について、ムーア氏は「本質的に政治についての映画だと思う」と述べている。ワカンダという国の設定は、世界を取り巻く現在の状況や歴史的観点に照らしてみると、政治的な意味から逃れられないのだ。

「アフリカのワカンダという国が、世界で最も進歩した技術を持っているという設定は、その過去を深く考えるまでもなく政治的ですよ。映画が公開される時、それがどれほど政治的な意味をはらむことになるのかは、政治の状況がすさまじい速さで変化している以上わかりません。しかしアフリカ人とその外部の世界を描く時、政治の問題は本質的に存在するものなんです。」

しかし繰り返すが、『ブラックパンサー』はマーベル・コミックを原作としたヒーロー映画であり、すなわち家族で観られるエンターテインメントでなければならない。それゆえだろう、ムーア氏も「過剰に政治的にはしたくない」とも語っているのだ。「決してメッセージ・ムービーではありません。それでも映画を観てもらえば、政治に関係があるんだとわかってもらえると思います。」

こうした中で、本作によく似た作風の映画として提示されたのが、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』だった。そもそもキャプテン・アメリカというキャラクター自体が、政治的であることから絶対に逃れられないキャラクターではないか……。

「(『ウィンター・ソルジャー』は)国防や情報収集といった問題を、問題そのものについて語りすぎることなく、うまく描いていました。『ブラックパンサー』もそれとよく似た映画になっていると思います。」

またムーア氏は、本作がコメディ路線の作品ではないこともきちんと明言している。2017年は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『スパイダーマン:ホームカミング』『マイティ・ソー バトルロイヤル』とコメディ要素を大切にした作品が続いていたが、ここにきてシリアス路線への回帰というわけだ。とはいえ本作にも、きちんとユーモアの要素は織り込まれているという。

「キャラクター同士の関わりから、“楽しさ”は生まれてくると思うんです。ブラックパンサーはシリアスなキャラクターですが、シュリ(編注:ティ・チャラの妹)はいつもシリアスでなくてもいいわけですしね。オコイエ(編注:親衛隊隊長)や、ルピタ・ニョンゴが演じるナキア(編注:ヒロイン)はすごく楽しいキャラクターですよ。キャプテン・アメリカがそうであるように、彼の周りにいるキャラクターが個性豊かなんです。」

確かに『キャプテン・アメリカ』シリーズでは、苦悩する主人公スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカに、周囲の人物がさまざまな関わり方を見せることでユーモアが生まれている。『ブラックパンサー』のユーモアも、きっと同じアプローチで作り出されているのだろう。

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国ロードショー

Sources: https://www.cbr.com/black-panther-inherently-political/
https://www.cbr.com/black-panther-movie-tone-winter-soldier/
©THE RIVER

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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