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『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ネイモアはヴィランではない? ─ 「我々はヒーロー」

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
© 2022 MARVEL.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』には、コミックでも人気のネイモアが実写初登場となる。コミックのネイモア・ザ・サブマリナーは海底王国アトランティスの王(王子)だが、MCU版のネイモアは海底王国タロカンの王という設定。マヤ文明に基づく独自の設定で実写映画の世界に参入する。

公開まで約1ヶ月となった現在、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のヴィランはネイモアであるとの推測が有力だ。US版ポスターでは、シュリやラモンダをはじめとするワカンダの人々と、ネイモア率いるタロカンの面々が対立するデザインになっている。日本国内のプロモーションでも、ネイモアは「ワカンダの平和を脅かす存在」として紹介されているのだ。

ところが、ネイモア役に起用されたテノッチ・ウエルタの認識はそうではない。「ナルコス:メキシコ編」(2018-2021)などで知られるメキシコ人俳優であり、映画界における人種問題などに取り組むアクティビストでもあるウエルタは、英Empireにてこう述べている。

ハリウッド映画において、ラテンアメリカ人は常に悪役。けれど、この作品で我々はヒーロー、あるいはアンチヒーローなのです。自分たちが誇りに思えるものをハリウッドで作っています。」

現時点で、この発言におけるウエルタの真意はわからない。しかし言葉通りに捉えるなら、本作におけるネイモアの役割は“悪役”ではないのだろう。少なくとも「アンチヒーロー」と呼べるだけの性質が彼には備わっている、すなわち“ティ・チャラの死を受けてワカンダに攻め込む敵国の王”という単純な理解にとどまるキャラクターでないらしい。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
海底王国・タロカンの人々 © 2022 MARVEL.

もっとも、コミックにおいてブラックパンサー/ティ・チャラとネイモアが、またワカンダとアトランティスがしばしば衝突してきたことは事実。監督・脚本のライアン・クーグラーは、前作『ブラックパンサー』(2018)に就任した当時、ティ・チャラとネイモアをめぐるストーリーを読み返し、実際にネイモアこそが「夢の敵役」だと考えたという。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長によると、前作のポストクレジットシーンでネイモアの登場を示唆するアイデアもあったそうだ。いわく「ワカンダの宮殿をカメラが通っていくと、濡れた足跡が王座に続いているのが見えるんです」。

では、クーグラー監督にとっては「夢の敵役」だが、演じたウエルタにとっては「ヒーロー」というキャラクターはいかにして生まれたのか。全貌は本編を観てのお楽しみだが、ウエルタはわずかにヒントを口にしている。前作のラストでティ・チャラはワカンダを開国する意志を語ったが、ウエルタによると「それこそがタロカンを危機にさらしたのです。彼らは自分たちを守るために行動せざるを得なくなる」というのだ。前作のエリック・キルモンガーをしのぐ複雑な“敵役”の登場に期待しよう。

映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日より全国公開

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Source: Empire Magazine 2022 November

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。