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【ネタバレ】『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ポストクレジットシーン解説

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
Letitia Wright as Shuri in Marvel Studios' BLACK PANTHER: WAKANDA FOREVER. Photo by Annette Brown. © 2022 MARVEL.

この記事には、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のネタバレが含まれています。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
©Marvel Studios 2022

シュリ、ハイチの海岸にて

ワカンダを攻撃するタロカンを迎撃し、ネイモアを追い詰めたシュリは、タロカンの降伏を条件に、今後はワカンダがタロカンを守ることを約束する。ネイモアは降伏を呑み、両国の和解は実現した。母親・ラモンダに代わり、シュリは国王の座を継ぐかと思われたが、戴冠式に現れたのは“代理人”であるエムバク。彼が王座への挑戦を宣言する頃、シュリは、ナキアが教師をしているハイチの地を訪れていた。

本編のラストシーンで、シュリはハイチの海岸に座り、ティ・チャラの葬儀で着用していた礼装を燃やしている。それは映画の序盤、ラモンダが試みたことであり、そのとき彼女はシュリに向かって「ティ・チャラについて言うべきことがある」と口にしていた。もっとも、そのやり取りはネイモアの出現によって妨害され、その真実は明かされないままだったのだが。シュリは燃える礼装を見つめながら、兄との思い出を回想し、静かに涙を流す。

本作のポストクレジットシーンはひとつだけで、メインキャスト・スタッフを紹介するクレジットののち、ミッドクレジットシーンという形で挿入される。場面は本編のラストに続き、シュリがティ・チャラを思い出しているハイチの海岸。そこに現れたのは、ナキアと6歳の少年・トゥーサン。ナキアはトゥーサンに、シュリが叔母であること、すなわち彼がティ・チャラの息子であることを告げる。

もっとも「トゥーサン」とはハイチでの名前で、彼は自らを「僕はティ・チャラ王子、ティ・チャラ王の息子」と呼ぶ。秘密裏にナキアとの子どもをもうけていたティ・チャラは、妻と息子が王家のプレッシャーに悩まされることなく普通の生活を送れるよう、生前にさまざまな準備をととのえていたのだ。そして、ラモンダもこの事実を知っていた。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
© 2022 MARVEL.

本編のラストから、このポストクレジットシーンまでの流れは、今後の展開についてさまざまな可能性を示唆するものだ。シュリがその後もハイチでナキアとともに暮らすのか、ワカンダの王座をエムバクが継ぐことになるのかは謎のまま。いずれトゥーサン/ティ・チャラ2世が自らのルーツであるワカンダに戻り、ブラックパンサーとなる未来もありうるだろうが、それはずいぶん先の話になるはずだ。それに、亡き父親ティ・チャラはそれを喜ぶだろうか?

いずれにせよ、この結末はワカンダ王家の血筋が(いかなる形であれ)今後も続いていくことを意味しているし、そのかたわらで、ワカンダ国王は血筋によらないことを意味してもいる。シュリはいまや父・母・兄を失ったが、彼女にもまだ家族がいるのだし、ナキアを含めた新しい家族の形もある。ティ・チャラがこの世界に遺したものは、今後もワカンダのあらゆる人々が継いでゆくことになるのだろう。

なお、このポストクレジットシーンには、コミックや現実の歴史との関係性を見て取ることもできる。もう少しだけ、この結末を深く掘り下げてみることにしよう。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。