【レビュー】『カフェ・ソサエティ』夢と現実が入り混じる“ウディ・アレン ワールド”へようこそ!

2013年、ケイト・ブランシェットがアカデミー賞主演女優賞を受賞した映画『ブルージャスミン』。2014年はコリン・ファースとエマ・ストーンが主演を務めた『マジック・イン・ムーンライト』。2015年は皮肉たっぷりに哲学を描いた『教授のおかしな妄想殺人』。80歳を超えた今も、これらの作品を年に1度のペースで世に送り続けている映画監督といえば? ご存知、ウディ・アレンだ。
そんなウディ・アレンがまた新たな作品を生み出した! 2017年5月5日公開の『カフェ・ソサエティ』だ。待ちきれない!という方もたくさんいらっしゃるのではないだろうか。
映画『カフェ・ソサエティ』とは
『ローマでアモーレ』、『それでも恋するバルセロナ』、『ミッドナイト・イン・パリ』など近年はヨーロッパを舞台に映画を作ることが多かったウディ・アレン。実は、1977年公開『アニー・ホール』がアカデミー賞4部門を制した時には授賞式を欠席するなど、ハリウッドに背を向けた人物でもあるのだ。
しかし今回の『カフェ・ソサエティ』の舞台はアメリカ、ハリウッドとニューヨーク。時代設定は“ハリウッド黄金時代”と呼ばれた1930年代だ。
そもそも「カフェ・ソサエティ」とは、華やかな都のカフェやクラブに集う有名人や芸術家たちのこと。あたたかい光につつまれた景色、サンドベージュの上品な服を身にまとった人々が集うハリウッド。豪華でロマンチック、見ているだけで高揚感につつまれるような都市ニューヨーク。そんな1930年代の世界をぞんぶんに堪能することができる。
またシャネルがこの作品のために衣装を制作しているとあって、『カフェ・ソサエティ』はファッションも注目したいポイントだ。
ウディ・アレンの恋愛観
「世の中はラブソングのようなものであると分かった」、劇中にそんなセリフがある。失恋を歌った曲、恋することの喜びを歌った曲。世の中にはたくさんのラブソングであふれている。
これまでウディ・アレンは恋する男と女をたくさん描いてきた。1996年公開の『世界中がアイ・ラヴ・ユー』では、恋に失望したり失恋しながらも、また再び恋愛の素晴らしさに気づいていく人々を。2008年公開の『それでも恋するバルセロナ』では、名称のつけられない奇妙な三角関係を。
ウディ・アレンが描くのは決して純愛物語ではない。「男と女が集まれば、いろんな感情が生まれるのは当たり前」。そんなウディ・アレンは今回『カフェ・ソサエティ』で、主人公ボビーを2人の美女と恋に落ちさせる。
あの時、あの人を選んでおけば。あの人の思いに応えていたら。そんな“恋愛の選択”を思い返し、ふと考えこんでしまうことは誰にだってあるはずだ。『ラ・ラ・ランド』のミアとセブだって、最後には自分の選択について色々思いをめぐらせただろう。ただどんな選択をしたにせよ、誰と恋に落ち、誰と愛に破れても人はまた恋をするのだ。
世の中のラブソング以上にこの世界には恋があふれている。今隣にいる人の他に、心の奥底に忘れられない人がいたとしても、それは間違いとは言えないかもしれない。ウディ・アレンの恋愛観は、この『カフェ・ソサエティ』でもじゅうぶんに現れている。
- <
- 1
- 2