『エイリアン2』『アビス』『トゥルーライズ』初4K UHD化記念、ジェームズ・キャメロン屈指の名作を現代最高のフォーマットで鑑賞せよ

映画ファンが映画について語る時、ジェームズ・キャメロンという稀代のフィルムメーカーについて避けて通ることはできないだろう。全世界興行収入上位4位のうち、1位『アバター』(2009)3位『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)4位『タイタニック』(1997)の3作品はキャメロン作品。映画史上、最も商業的に成功したフィルムメーカーなのである。
そんな世界最高の映画監督の作品の数々が、新たに4K UHDとしてリリース。『アバター』や『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』『タイタニック』が登場したのはもちろん、映画ファンとして見逃せないのが、なんと『トゥルーライズ』(1994)『アビス』(1989)『エイリアン2』(1986)も初めて4K UHD化されるという大ニュースだ。
『エイリアン2』は、シリーズ最新作「Alien: Romulus(原題)」を控える絶好のタイミングでのリリース。『トゥルーライズ』『アビス』はキャメロン作品の様々な面につながる傑作ながら、長らくブルーレイは発売していなかった。多くのファンが夢見た今回の一斉リリースから、THE RIVERでは『トゥルーライズ』『アビス』『エイリアン2』についてそれぞれ解説していこう。
『トゥルーライズ』

『エイリアン2』や「ターミネーター」(1984)、『アバター』のことが多く語られるキャメロンだからこそ、1994年のアクション・コメディ『トゥルーライズ』はなかなか異色の作品だ。主演は、「ターミネーター」『プレデター』(1987)や「トータル・リコール」(1990)ですっかりアクション・スターになっていたアーノルド・シュワルツネェッガーである。
主人公のハリー・タスカーは、表の顔は妻・娘と共に暮らすコンピューター会社のセールスマン。しかし本当の姿は、大統領直属の秘密組織「オメガ・セクター」の凄腕スパイだった?愉快なコメディと、緊迫したアクションのシームレスな切り替えは、公開からちょうど30周年となる今見ても、全く色褪せない(4K UHDで鑑賞すれば、文字通り本当に色褪せていない)。

映画の前半は、妻の浮気を疑う夫が、スパイとしてのスキルや組織力を職権濫用して調査していくコメディとして楽しめる。シュワルツネッガーといえば本作の他にも「ツインズ」(1988)や「ラスト・アクション・ヒーロー」(1993)「ジュニア」(1994)「ジングル・オール・ザ・ウェイ」(1996)でお笑いセンスの高さを披露しているが、本作でもそうした魅力は炸裂。笑顔から“ツッコミ顔”への瞬時の切り替えが伝統的な笑いを誘う。
随所にコメディ要素散りばめられたライトな作風だが、アクションシーンはさすがキャメロンと唸らせる大規模でハードなものばかり。「ミッション:インポッシブル」シリーズを思わせるようなスリリングなシーンも多い。

ひとつは序盤に登場するトイレでの格闘シーンで、これは「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」(2018)で、トム・クルーズとヘンリー・カヴィルが繰り広げる激しいトイレ格闘シーンにも大きな影響を与えたはずだ(トイレの内部構造もそっくりである)。
また、終盤のセブンマイルブリッジ上で繰り広げられる緊迫のぶら下がりアクションも、2000年代以降の「ミッション:インポッシブル」映画、あるいは「ワイルド・スピード」で同じことをやっても通用しそうな程の迫力だ。
この映画の冒頭シーンでシュワルツネッガーは潜水服を着て氷張の湖から登場する。潜水服を脱ぐとその下にタキシードを着ており、そのままパーティー会場に潜入するという流れだが、これは「007/ゴールドフィンガー」(1964)冒頭へのオマージュだ。それもそのはず、本作はフランス映画「La Totale!」(1991)を鑑賞して惚れ込んだ彼がキャメロンにリメイクを持ち込んだ企画なのだが、制作にあたっては「『007』を超えよう」との意気込みで作られたものなのだ。
今回の4K UHD版には、ジェームズ・キャメロンとシュワルツェネッガー、妻ヘレン役のジェイミー・リー・カーティスや、プロデューサーのジョン・ランドーらが本作をたっぷり語る新規インタビューが収録。有名な下着ダンスシーンでカーティスが転んだ時、一瞬椅子から立ちあがろうとするハリーはシュワルツェネッガーが慌てた素の反応であったことや、垂直離着陸機ハリアーが登場する前代未聞の終盤シーンでは「トップガン」(1986)を参考にしていたこと、危険極まりない撮影の舞台裏など、興味深いエピソードがいくつも語られるこの映像の中で、特に印象的なのが、キャメロンが撮影について「幸せだった」という表現を繰り返していることだ。「人生の中の祝福された瞬間だった」「今も思い出しては笑みがこぼれる」と、ノスタルジックに話している。

2023年にはドラマ版も登場しているが、キャメロンとシュワルツェネッガー、カーティスが集ったスパイ物語は、後にも先にもこの傑作のみ。キャメロン史上最も幸福感に満ちた一作を、最高のフォーマットでコレクションに加えてほしい。
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『トゥルーライズ』 デジタル配信中(購入/レンタル) 4K UHD発売中 © 2024 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン |
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『アビス』

ジェームズ・キャメロンという偉大なフィルムメーカーの変遷を辿る時、『アビス』は最も興味深い場所にある作品だ。海中の幻想的な異世界を描く作品として『タイタニック』『アバター』に繋がったと評されることも多いが、『エイリアン2』の延長線上にあるような要素も多い。
たとえば、社会と断絶された異空間という設定。『エイリアン2』は主に宇宙戦艦内が、『アビス』は未知の海溝が舞台。謎の存在に遭遇したと主張する凛々しく勇敢な女性と、それを信じようとしない男性たち。性質は真逆だがファーストコンタクトものであり、閉所恐怖症的なパニックが描かれる点も共通している。

『タイタニック』に連なる点は、船が轟々と水に呑まれて水没していく恐怖演出があり、「アバター」シリーズとは、幻想的に輝く異世界描写などが通じている。さらに、「水の精」が人間の顔を模るシーンは当時まだ黎明期であったCGが駆使され、この成功が「ターミネーター2」(1991)の液体金属型ターミネーター、T-1000につながっている。また、核戦争への緊張感というテーマも類似。つまりこの映画は、キャメロンのキャリアにおける交差点の中央に立つような作品だ。これを見ずしてキャメロン作品は語れない。
原子力潜水艦の不可解な沈没事故を受けて、付近で別作業にあたっていた移動型石油採掘プラットフォーム「ディープコア」が救助と調査に駆り出される。メンバーは、リーダーのパッドを筆頭に、別居中で微妙な関係の妻リンジー、高圧的なコフィ大佐、ネズミが友達のヒッピーなど、個性的な面々だ。彼らはさまざまなトラブルに見舞われ、漆黒の深海で孤立無援状態に。そんな中、彼らの元に光り輝く未知の深海生命体が接触してくる……。

キャメロンといえばプロ級のダイバーでもあるが、『アビス』はまさに海底探検のロマンを捉えた作品。同時に、スキューバダイビング経験者はよく知っているであろう、水中での抗いようのないパニック感覚もかなり生々しく描かれている。4K UHDの鮮明な映像でなら、観ているだけで臨場感が味わえる。
探査船の描写にはキャメロンのメカ趣味が現れており、潜水服はほとんど宇宙服のようなデザインであるなど、SF要素も滲み出ている。人間愛や世界平和を唱えるメッセージ性も思いのほか直接的に描かれており、キャメロン作品の中で最も社会派な立ち位置の映画であるとも言える。

改めて鑑賞すると面白いのは、序盤でワン・ナイト(キンバリー・スコット)が潜水艦を操縦しながら、リンダ・ロンシュタットのヒット曲「ウィリング」をプレイするシーン。ジェームズ・ガンの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)に先駆けること25年、ヒットナンバーと異世界探検というミスマッチな図式をキャメロンは既に楽しんでいたのだ。
満を持しての初ブルーレイ&4K UHD化となる本商品には、新規収録となる映像特典「水の中へ:ジェームズ・キャメロン監督と『アビス』」と「偉大なる開拓者たち」を収録。キャメロンや製作陣が本作の撮影をたっぷり振り返る、貴重なドキュメンタリーだ。
これらの映像を見れば、視聴者は『アビス』に対する深い洞察を得ることができる。キャメロンが本作で影響を受けたと語るのは、「未知との遭遇」(1977)や「2001年宇宙の旅」(1968)「地球の静止する日」(1951)といったファーストコンタクトもので、やはりSF映画のアプローチが取られたとの確信を深めることができる。
海洋映画としての面では、当時としては前代未聞、無謀とも言える撮影が行われていた様子も確認することができ、本作で培われた水中撮影の技術が『タイタニック』に、さらに『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』へと発展したことが、しっかりと語られている。また、「水の精」に用いられたILM(インダストリアル・ライト&マジック)によるCG技術は当時極めて革新的なもので、この時開発された技術が、あの画像編集ソフトのPhotoshop誕生に繋がったとの証言も語られている。
「特殊効果も視覚効果も、今の映画と比べて遜色ない」と語るキャメロン。仮に現在のCG技術をもって撮り直したとしても「あれ以上いい映像は撮れない」と言うほど、『アビス』は35年前の映画とは全く思えないほどの新鮮さをみずみずしく保ち続ける奇跡の映画だ。これまで観たくても観られなかった高画質で、深い深い海底への探検に繰り出して欲しい。きっと驚くような発見がたくさんできるはずだ。
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『アビス』 デジタル配信中(購入/レンタル) 4K UHD発売中 © 2024 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン |
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『エイリアン2』

今最も期待している新作映画は?と尋ねられて、「Alien: Romulus(原題)」を挙げたあなたは、ぜひ『エイリアン2』4K UHDで作品世界に没入しながら公開をお待ちいただきたい。
新作「Alien: Romulus」は、リドリー・スコットの『エイリアン』(1979)と、ジェームズ・キャメロン『エイリアン2』(1986)の中間の出来事を描く内容だという。つまり『エイリアン』が父で『エイリアン2』が母だとすれば、その子であるというようなものだ。新作を待つ間、母なる『エイリアン2』を、最高のフォーマットで堪能しておきたい。これは『エイリアン』ファンの里帰りである。

「エイリアン」シリーズといえば、仄暗い密室の宇宙船内での閉所恐怖症的な恐ろしさと、グロテスクながら惚れ惚れするようなエイリアンの造形といったビジュアルが最大の魅力のひとつ。自然、画面は暗くなりがちで、黒光りするエイリアンたちも暗部に紛れているが、4K UHDで見直すとどうか。恐怖を感じながらも勇敢に立ち向かう主人公リプリーの細かな表情と、彼女たちの頬を伝う汗や、H・R・ギーガーのデザインに基づく美術セットの細かな模様、ぬらぬらとしたエイリアンの表皮を濡らす粘液の光まで、手に取るようによく見える。「何度も観た」という熱心なファンでも、4K UHDではまた新鮮な鑑賞体験ができるはずだ。
特に、自宅の視聴環境を整えているユーザーにとっては、クライマックスのエイリアン・クイーンとの対決シーンは改めて必見。このシーンの持つ力強さや不気味さ、そして芸術的な悍ましさが、まるで現代の新作映画のように見えてくる。4K UHDならではの贅沢な特権だ。

ボーナス・コンテンツの一部は、既発売のブルーレイもしくはDVDに収録されていたものと同じ内容も収録されているが、メイキング映像はなんと合計約4時間あり、さらに追加シーンや写真・アート資料も存分に見ることができる。
今回の見どころとなるのは、新収録となるジェームズ・キャメロンのインタビュー映像「『エイリアン2』のインスピレーションとデザイン」の追加だ。監督の口から貴重な裏話をたっぷり30分も聴くことができる。
この新規インタビューでキャメロンは、『エイリアン2』の監督に就任した経緯を改めて語っている。当時のキャメロンはまだ「ターミネーター」(1984)の撮影も始める前、新人同然だったキャメロンはいかにしてリドリー・スコットの大ヒット作の後継者となったのか?キャメロンはスコットによる1作目をどう評価していたのか?お宝エピソードの数々を、キャメロンが自ら描画したコンセプト・アートを手にしながら次々と披露する。

『エイリアン2』は何度観ても新たな発見が得られる傑作であることは言うまでもないが、豊富なボーナス・コンテンツと共に楽しめるこの4K UHDは、現時点において本作を最も優れた形で堪能できるフォーマットだ。最新作の到来に伴って、世界的な『エイリアン』ブームが再来することは間違いない。本作を入手しておけば、その世界のさらに一歩深奥に踏み込むことができるだろう。人間にしてはやるね!
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『エイリアン2』 デジタル配信中(購入/レンタル) 4K UHD発売中 © 2024 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン |
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より美しく、より鮮やかに、新たな興奮と感動を。映画界のレジェンド、ジェームズ・キャメロンが贈る究極の映像美を、4K UHDやコレクターズ・エディションでご堪能あれ。初の4K UHDとなる『トゥルーライズ』4K UHD、『アビス』4K UHD、『エイリアン2』4K UHDは2024年4月10日(水)より発売。
ほか、キャメロンのこだわりが凝縮された『アバター 4K UHDコレクターズ・エディション(数量限定)』、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター 4K UHD コレクターズ・エディション(数量限定)』。そして初の4K UHDで登場するのは、タイタニック号の設計図やローズからキャルへ宛てた手紙などを同梱したファン必携の究極の豪華セット『タイタニック 4K UHD 25周年アニバーサリー・エディション(数量限定)』。単品の『タイタニック 4K UHD』も大好評発売中だ。
Supported by ウォルト・ディズニー・ジャパン