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米ディズニーランドのマーベル映画アトラクション、「マーベル」の名前使えず?ユニバーサルが権利保有のため

マーベルのロゴ

米国のディズニーランドで計画が次々進められている、マーベル・シネマティック・ユニバース作品のアトラクション化計画にひとつの問題が生じている。なんと、「マーベル」という名前をアトラクションやプロモーションに一切使用できない可能性が非常に高いというのだ。

2018年3月、ディズニーは、米国カリフォルニア州のディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー、フランスのディズニーランド・パリ、中国の香港ディズニーランドディズニー・パークスにマーベル映画をテーマとした新エリアの建設を発表。なかでもカリフォルニアでは、2017年5月から『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のアトラクション「ミッション:ブレイクアウト!」の稼働が始まっていた。
なお、この発表には名前を連ねていないものの、米国フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは、2021年に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェットコースターが完成する予定だ。

しかし、パリや香港は別として、米国内のディズニーランドでは「マーベル」という名前を使用できない可能性があるという。その背景には、あのユニバーサル社を巻き込んでの、名前をめぐる権利問題があった。米The Los Angeles Times誌が詳細に伝えている。

フロリダにアベンジャーズのアトラクションを作れない理由

2020年、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーには、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのみならず、アイアンマン、ハルク、スパイダーマンという人気ヒーローが結集するマーベル映画のエリアが登場する。しかし、これを「マーベル・ランド」や「マーベル・エリア」と呼べないのは一体どうしてなのか?

その唯一にして最大の理由が、2009年にディズニーがマーベル・エンターテインメントを買収する15年前、1994年に交わされた「とある契約」だ。現在のNBCユニバーサル社の前身にあたるMCA社は、マーベルとの間でライセンス契約を結び、その結果として、ミシシッピ川の東側にあるテーマパークでは一部のヒーローを使用することができず、米国全体のテーマパークで「マーベル」という名前を使うことができなくなったのである。

さらに具体的に紐解いていくことにしよう。

1994年、ユニバーサル・スタジオのテーマパークを経営するMCA社は、マーベルのキャラクターを自社のテーマパークで使用する権利を取得。この契約では、MCA社がミシシッピ川の東西にマーベルのアトラクションを建設する場合、同社は全米でのマーベル・キャラクターの権利を管理できるというものだった。
しかし結果として、MCA社はミシシッピ川の両側ではなく、その東側、ユニバーサル・オーランド・リゾートにのみマーベルのアトラクションを建設(1999年)。これによって、ミシシッピ川の西側では他のテーマパークもマーベル・キャラクターを自由に扱えることになった。東側にある他のテーマパークでは、ユニバーサル・オーランド・リゾートに登場しないキャラクターだけを扱うことができる。2021年、“東側”のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのアトラクションが作られるのは、彼らがユニバーサルに登場していないからだ。

しかも、さらに事態をややこしくしているのはヒーローの「チーム」である。たとえばファンタスティック・フォーやアベンジャーズのメンバーがユニバーサル・オーランド・リゾートに登場している場合、関連のキャラクターがミシシッピ川の東側にあるテーマパークに登場することはできない。ユニバーサルにスパイダーマンやハルクのアトラクションが存在する以上、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにはスパイダーマンのヴィランすら登場できないのだ(ちなみに2012年、同リゾートをアベンジャーズのラッピングが施されたモノレールが走った際は、プロモーションの一種であるとして契約には抵触しなかった)。

そして前述の通り、ミシシッピ川の東西を問わず、米国内のテーマパークでは「マーベル」という名前をアトラクションおよびプロモーションで使用することができない。厳密には「許可しない可能性がある」という文言のため、今後も絶対にありえないとは言い切れないのだが……。いずれにせよ、かつてマーベルがMCA社と結んだ契約によって、現在はその親会社であるディズニーに制限が生じてしまうという“ねじれ”が生じているのである。

改めてまとめるならば、2020年、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーにアイアンマンやハルク、スパイダーマンが登場できるのは、ミシシッピ川の西側であるがゆえに、かつてマーベルとMCA社が結んだ契約に含まれる「キャラクターの使用制限」を受けないためだ。ただし、それでも新しく建設されるマーベル映画のエリアに「マーベル」という名前を使うことはできない。

LATimes誌の取材に応じた専門家は、マーベル映画のエリアに「マーベル」という名前を使えない問題について、「一般の来客層はそこまで考えないのではないか」と述べている。確かに「マーベル・エリア」という言葉を使うよりも、「アベンジャーズ・エリア」と呼ぶ方がキャッチーだろうか?

Source: LATimes

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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