「ベター・コール・ソウル」から「プルリブス」、真逆のヒーロー像 ─ 主演レイ・シーホーンが語る

「ブレイキング・バッド」のヴィンス・ギリガンが製作・監督・脚本を手がけ、「ベター・コール・ソウル」キム・ウェクスラー役のレイ・シーホーンが主演を務めるSFシリーズ「プルリブス」が、2025年11月7日よりApple TVで配信開始となった。怒涛のストーリー展開と、シーホーンによる圧巻の演技で、早くも“2025年ベストドラマ”との呼び声が高い一作だ。
本作は、突如“幸福”に浸食された世界で、免疫を持つ主人公キャロル(シーホーン)が人々を救おうとする物語。キャロルは恋愛ファンタジー小説のベストセラー作家で、一見成功者として幸せそうに見えるが、内面は皮肉屋で気難しく、自身の作品にも満足していない。そこそこの幸せを感じながらも、不満を抱える日々を送っていた。
そんなある日、キャロルの目の前で世界規模の異変が発生。人々は心が一つとなって至福の共存状態に陥り、「我々」と名乗り始める。キャロルもその集合意識に加わることを望まれるが、彼女は同調せず抵抗。世界を元に戻すため、行動せざるを得なくなる。
キャロルは気性の荒い性格で、作中には感情が爆発すると、人々が負の感情を受け止めず痙攣を起こす描写がある。こうしたヒステリックな面は、シーホーンが「ベター・コール・ソウル」で演じた冷静沈着なキムとは正反対だ。
そこでTHE RIVERの取材では、シーホーン本人に、キャロルとキムを演じる際のアプローチの違いについて質問。シーホーンは、まず両キャラクターの性格の違いを語ってくれた。
キムについては、「鎧をまといつつ、しっかりと感情をコントロールできていました。彼女は敏感なタイプではなくて、それがある種の超能力みたいでした。“私はここに座って、あなたが墓穴を掘るまで黙って見てる。私が話す必要はない”って感じでその力を使うんです」と述べ、その特異な冷静さを強調。
一方、キャロルは「非常に感情的な人物で、キムとは異なる方法で感情を抑えなくてはならない」として、キムのように「コントロールすることは一切できない」とコメント。「書籍の宣伝ツアーなどではプロとしての顔を保っていますが、それも彼女の妻のおかげ。仕事でも私生活でもキャロルを支える“緩衝材”のような存在なんです」と補足する。
そのうえで、キャロルを演じる際の「最大のポイントのひとつ」は、「彼女が常に“むき出し”で、自分がメチャクチャな状態にあることを周囲に悟られないように、社会で生き抜く方法を模索している」点だという。あふれ出る感情を不器用ながらも抑えようとする不安定さが、異なるアプローチのカギとなったようだ。
もっとも、両キャラクターには“ヒーロー的な一面”という共通点も存在する。シーホーンはキャロルを「不本意なヒーロー」、キムを「純粋なヒーロー」と表現し、次のように語った。
「似ている点は、どちらも心の奥底で“正しいこと”と“間違っていること”の感覚を持っていて、誰が何と言おうと決して諦めないことだと思います。二人とも絶対に諦めず、何度でも立ち上がる。キャロルの場合、ただそれを望んでいないというだけです。他の誰かがやってくれたら、と願っています。でも、もし本当に誰もやらないなら、“私が立ち上がらなきゃ”と思うんです。」
なお、本作が誕生した背景には、立て続けにアンチヒーローを描いてきたギリガンが「ヒーローを描きたい」と考えたことがある。いわく、キャロルは「完璧ではなく、ちょっと厄介者で怒りっぽいけど、応援したくなる」ようなヒーロー像。そんな人間らしい魅力をシーホーンが見事に演じ、物語への没入感を一層高めている。
「プルリブス」第1話・第2話はApple TVで配信中。毎週金曜に新エピソード更新。
▼「プルリブス」 の記事
Source:The Hollywood Reporter























