ダニエル・クレイグ&マッツ・ミケルセン、『007 カジノ・ロワイヤル』初対面から名シーンまで振り返る

『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)は、映画『007』シリーズの第21作にして、ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドに就任した記念すべき作品だ。シリーズのファンからも根強く愛される本作を皮切りに、ダニエルはボンド役を計5作にわたって演じており、2021年公開『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をもって卒業する。
この作品で悪役のル・シッフルを演じたのが、『ドクター・ストレンジ』(2016)や「ハンニバル」(2013-2015)などで熱狂的なファンを持つマッツ・ミケルセン。このたび米Varietyでは、二人が画面越しに再会し、『カジノ・ロワイヤル』の製作当時を語り合っている。
ダニエル&マッツ、撮影と信頼を語る
「タキシードを着せてもらって、オーディションで君と一緒に拷問シーンをやる予定だったんだけど」とマッツが振り返るのは、ル・シッフル役に決まった日の出来事だ。「僕はひたすら待っていて、君はボンドガールのオーディションをやっていて。とんでもない一日だった」。まだ知り合い同士ではなかったダニエルとマッツは、たまたまお互いに煙草を吸っていたところで初顔合わせになったという。
マッツ:「あの時は“煙草を吸うんですね”なんて声をかけていいかどうかも分からないまま、いきなり一緒に煙草を吸っていて。そこにマーティン・キャンベル(監督)が来てくれたんだけど、彼は疲れ切ってて、“どうも、マッツ。君の時間がないんだけど、ようこそ”とだけ言って、どこかに行ってしまった。戸惑っていたら、彼が戻ってきて“(ル・シッフル役は)君に決まりだから”と。そしたら君が煙草を吸いながら、“誰と寝たの? 僕はこの役のために6回寝たんだけど”って(笑)。それが初対面ですよ。」
このエピソードを覚えていなかったダニエルは「気が利いてるじゃない」と一言。「信じられない。そんなに僕が気の利いたことを言ったなんて」。

『カジノ・ロワイヤル』で頻繁に語られるのは、ル・シッフルからボンドへの拷問シーンである。全裸のボンドが座面を切り抜いた椅子に座らされ、結び目のあるロープでル・シッフルに下半身を打たれる場面だ。ダニエルが「脚本では(ロープではなく)馬のムチだった」と言えば、マッツは「それはもっと痛そう」と一言。ダニエルは「どっちも痛いのよ」と即座に返し、撮影の思い出を話している。
ダニエル:「マーティン・キャンベルと僕たちで、長く話し合ったのを覚えてますよ。僕らは荒々しい映画の出身だから、あのシーンには没頭しちゃって、良いアイデアをいっぱい出した。マーティンはずっと聞いてくれてたけど、あるところで“君たち待ってくれよ、ボンド映画だよ”と。あのシーンはギリギリで、本当に使えるのかどうか分からなかったですね。ボンド映画としてギリギリだった。」
マッツは「あの日は僕にとっては最高の一日だった」と回想しつつも、ダニエルには「君は大変だったでしょ、8時間も泣きわめいて」。これに対して、ダニエルは「最高でしたよ」と語りつつ、初めてジェームズ・ボンドを演じるプレッシャーに襲われていたことを認めている。
ダニエル:「(『カジノ・ロワイヤル』は)毎日すべてが心配でした。すべてが大切だと思っていたから、何事にも気が立っていて。あの撮影が良かったのは覚えてますよ。ギリギリのシーンだったし、あなたはやり切ってくれた。楽しかったですよ、シンプルに演じるシーンだったから。」
一方、本作にはボンドとル・シッフルがポーカーで対決する見せ場もあるが、こちらはダニエルいわく「(撮影は)本当に退屈でした。カメラアングルのことばかりで、ディナーのパーティーを撮っているみたい」。かたや、ポーカーにハマったマッツは撮影の合間も共演者とポーカーに打ち込んでいたそう。現場ではダニエル以外の全員がポーカーで遊んでいたというが、ダニエルは「気が回らなかった」と認めている。すべてはプレッシャーゆえだろうか、「リラックスしようって誘ってもらったけど、できなかった。何度か酔っ払った覚えはあるけど、それも撮影現場ではなかったし」。

当時、ジェームズ・ボンド役の重圧に苦しみ抜いていたダニエルだが、マッツの目にもその過酷さは明らかだったようだ。撮影現場で顔を合わせる前にダニエルとボンドの記事を見ていたというマッツは、ボンド映画を「英国映画の至宝」と形容。「とんでもないプレッシャーを味わっていることは分かっていた」と言い、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を控えた今、ダニエルにこんなメッセージを贈っている。
「(『カジノ・ロワイヤル』の後も)ダニーのボンド映画はすべて楽しんでいます。作品の発展も本当にすばらしいし、僕らが始めたものがきちんと終わろうとしている。初めて一緒にシーンを撮った時から、君が史上最高のジェームズ・ボンドであることを疑ったことは一度もありませんよ。君はたくさん疑っただろうし、本当に大変な道のりだったのは知っているけれど、君が(ボンド役を)自分のものにすること、やり切ることは僕には分かっていた。」
映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2021年公開予定。
Source: Variety