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トム・ホランド主演『チェリー』とマーベル映画の奇妙な関係とは ─ 『アベンジャーズ』ルッソ監督が仕掛けるマルチジャンルの秘密

チェリー(原題)
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『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)のアンソニー&ジョー・ルッソ監督が、最新作となる実話犯罪映画『チェリー(原題:Cherry)』にマーベル映画が与えた影響について語った。主演を務めるのは、スパイダーマン役でおなじみのトム・ホランド。ピーター・パーカーとはうってかわって、薬物依存で銀行強盗に手を染める元帰還兵という難しい役どころに挑む。

トム演じる主人公は、イラク戦争でPTSDを患い、帰国後に処方されたオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の依存症を患って犯罪を繰り返していく。2020年12月5日(現地時間)、オンライン開催となったブラジルのコンベンションイベント「Comic Con Experience」に登場したルッソ兄弟は、主人公の物語を唯一無二のスタイルとトーンで描きたかったと語っている。

「およそ15年間のライフサイクルを、章ごとに分け、それぞれ違う映画のように撮っています。けれど、すべてはある意味で繋がっている。偏りのある作品で、ある章では日常と非日常が混在し、ある章では不条理的になり、また別の章では残酷な写実主義になり、ホラーになり、ブラックユーモアが入るという感じ。登場人物と観客、両方の体験を幅広くカバーする狙いです。それぞれの章は、衣裳や演技、カメラのレンズ、撮影スタイルやカメラワーク、音楽に至るまで、独自の選択を取っている。目障りなものではなく、章ごとに予想外の場所へと導くものにしたいですね。ひとつの作品としてまとまると、驚くべき、ユニークな映画体験になるはずですよ。」

その一方で、本作の軸は“ラブストーリー”。トム演じる主人公と、恋人から妻になる女性エミリー(演:シアラ・ブラヴォ)の関係こそが肝なのだ。アンソニー監督は「青春映画であり、恋愛映画であり、戦争映画であり、強盗映画であり、薬物依存を描く映画ですから、複雑な人生の体験がごちゃ混ぜになっています」と述べながら、「作品の核はラブストーリー。事態が複雑に、絶望的になるほど、作品と登場人物から二人の繋がりが浮かび上がってきます」と力説。ジョーはトムとシアラの演技を絶賛し、トムには「並外れた演技でした。自分自身を完全に消し去っているんです」とまで述べている。

チェリー(原題)
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チェリー(原題)
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ところでルッソ兄弟は、なぜ『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の直後に本作を選んだのか。実は、著者の実話に基づく原作小説(文藝春秋)を執筆したニコ・ウォーカーとルッソ兄弟はともに米オハイオ州の出身。オピオイド依存が広がるオハイオ州にて、ルッソ兄弟は近い知人を依存症によって失い、また別の知人は現在も治療に苦しんでいるそう。「だから、僕たちにとってはすごくパーソナルな映画なんです」。

もちろん、ルッソ兄弟は「自分たちが面白がれる企画を選んでいる」とも述べ、『チェリー』がマーベル映画と奇妙な関係にあることも認めている。「子どものころ、コミックを集めてポップカルチャー・エンターテインメントにのめりこんだのと同じくらい、小規模でチャレンジングな物語にも惹かれていました」と語るジョーは、「マーベルのような大作で得た評価と利益があったから、自分のブランドで難しい主題を描くことができた」と言っているのである。

チェリー(原題)
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チェリー(原題)
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映画『チェリー(原題:Cherry)』は2021年3月12日(金)よりApple TV+にて世界独占配信。米国では2月26日より劇場公開される。

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Source: Collider

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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