『ダークナイト』スケアクロウ役キリアン・マーフィー、「バットマン役を逃して良かった」と回顧 ─ そもそもノーランの計画通りだった

クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』3部作で、ヴィランのスケアクロウ/ジョナサン・クレイン役を演じたキリアン・マーフィー。第1作『バットマン ビギンズ』(2005)の製作以前、実はバットマン/ブルース・ウェイン役のオーディションを受けていたマーフィーが、「バットマン役を逃して良かった」と回顧している。
英GQのインタビューで、「バットマン役を逃して良かったと思うことはありますか?」との質問に、マーフィーは「イエス」と回答。「あの役を見事に解釈した、クリスチャン・ベールの演技を手に入れられたのは最善だったと思います。自分がバットマンにふさわしい体格とは思わなかったし、僕にとってバットマンは常にクリスチャン・ベールだった」と語った。
また米Entertainment Weeklyでは、ノーランの口から驚くべきエピソードが明かされている。最初にマーフィーと話し合った時点で、「最終的にバットマンを演じることにはならないだろうとお互いわかっていた」というのだ。「それでも映画には出てほしかったからスクリーンテストをやった」のだと。当時のマーフィーは知名度が高くなかったため、監督はスクリーンテストを通じて、ワーナー・ブラザースの幹部にマーフィーの演技を見せようと試みたのである。
それ以前のバットマン映画で悪役を演じていたのは、『バットマン』(1989)ジョーカー役のジャック・ニコルソン、『バットマン フォーエヴァー』(1995)リドラー役のジム・キャリー、『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(1997)Mr.フリーズ役のアーノルド・シュワルツェネッガーと大物スターばかり。すなわち、ノーランはスタジオ幹部を説得するための材料が必要だったのだ。
「“キリアンにスケアクロウをやってもらうのはどうですか?”と言ったら、反対意見はありませんでした」とはノーランの談。その後は『インセプション』(2010)『ダンケルク』(2017)にてノーランとタッグを組み、最新作『オッペンハイマー(原題)』では待望の主演を果たしている。
ちなみに米Vanity Fairによると、『オッペンハイマー』と同じく原子爆弾の開発・製造計画「マンハッタン計画」を描いたドラマ「Manhattan(原題)」(2014-2015)でも、マーフィーはロバート・オッペンハイマー役の候補に名前が挙がっていたそう。最終的にはダニエル・ロンドンがこの役を掴んだが、もし当時マーフィーが演じていたら『オッペンハイマー』での主演はなかったかもしれない。演じるにせよ演じないにせよ、キャスティングは俳優のキャリアに大きな影響を与えるものである。
映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』は2023年7月21日より米国公開中。日本公開は未定。
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Source: GQ, Entertainment Weekly, Vanity Fair
Text: Hollywood, 稲垣貴俊