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米英の大手映画館が無期限再休業、4.5万人に影響 ─ 劇場側がニューヨーク州を批判

regal cinemas
Photo by Jérôme https://commons.wikimedia.org/wiki/File:42nd_Street_New_York_201.jpg Remixed by THE RIVER

アメリカ・イギリスの大手映画館チェーン・Cineworld/Regal Cinemasが、2020年10月8日(米国時間)から再休業に突入する。米Varietyなどが報じた。

新型コロナウイルスの影響によって一時休業を強いられたのちも、主にアメリカでは映画館に観客が戻らない状況が続いていた。主な市場であるニューヨーク、ロサンゼルスでは映画館の営業再開が認められず、映画スタジオも大作の公開を見送っていたのだ。発表によると、同社はアメリカ国内にあるRegal Cinemasの536館、イギリスにあるCineworld/Picturehouseの127館を一斉に休業。4万5,000人の従業員に影響が生じるという。

再休業の発表にあたり、Cineworldは「新作の公開がなければ、アメリカとイギリスの観客に対して、映画館への再訪を検討してもらえるだけの強い商業性を持つ作品群を提供することはできない」との声明を発表。来場者と従業員の健康、そしてコスト削減を重視したことを明らかにした。ムーキー・グレイディンジャーCEOは、今回の決定が簡単なものではなかったと記し、映画館の営業維持と安全確保には全力を尽くしたことを強調。新たな指針のもとで働いた従業員に対する謝意を示している。

一方、米Deadlineの取材にて、グレイディンジャー氏はニューヨーク州の対応を厳しく批判。「世界中の、そしてアメリカの映画館は、(アンドリュー・)クオモ知事の柔軟性のなさのために休業している」「彼はレストランやボウリング場、カジノなどの再開を認めながら、映画館は認めない」と述べた。ニューヨークはアメリカの映画業界において最大の市場であり、この場所で映画を公開できないことは興行に甚大なダメージをもたらすのだ。スタジオが大作映画の公開を見送る理由も、ニューヨークが再び動き出していないことにあるといわれる。

コロナ禍を受け、映画館業界は感染防止に取り組み、設備投資などを行ってきた。しかしグレイディンジャー氏は、営業を再開できない理論的根拠を州から得られていないという。「“映画館は不要不急だ”と言われています。なぜ他の屋内施設は必要不可欠で、映画館はそうでないのかが理解できませんし、それ以外にニューヨークから説明は一切ありません」

グレイディンジャー氏によると、アメリカ・イギリスでの全館休業に踏み切った理由は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期だったとのこと。しかしながら、「すべてをボンド映画のせいにするのは不正確で、そこが限界だったということ」だとも説明している。公開延期が決まるまでは向こう6週間の営業継続を決めていたが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期が決定したことで方向性を変えざるを得なくなったというのだ。

2020年内には、ディズニー&ピクサーが『ソウルフル・ワールド』を、ワーナー・ブラザースが『ワンダーウーマン 1984』を、ソニー・ピクチャーズが『モンスターハンター』を米国公開予定。ただしグレイディンジャー氏によると、営業を再開するには、映画1作の公開にとどまらず、再開しても経営的に問題ないと判断できるだけのラインナップが必要だという。スタジオ側が事前に公開スケジュールを示し、それが守られることが、少なくともCineworld/Regal Cinemasの再開条件というわけだ。

現在、アメリカやイギリスの映画館はすべて、Cineworld/Regal Cinemasと同じく危機的状況に置かれている。イギリスの映画館チェーン・Odeonは約30館を営業規模を縮小し、10月9日(現地時間)以降は週末のみの営業になることを発表。一方、アメリカで第3位の映画館チェーン・Cinemarkは営業を継続する方針を示した。各社ごとに対応は異なるとみられるが、今後どのような状況になっても不思議はない。映画の公開スケジュールとあわせて状況を注視しよう。

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Source: Variety, Deadline(1, 2) , Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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