【ネタバレ無し】映画『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』感想・レビュー!『ヴィラン不在』という掴みどころの無さ

4月29日、映画『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』が本国アメリカに先駆けて日本公開された。
観終えたばかりで未だ興奮状態が続いているが、本作のレビューを書きたいと思う。なお、ネタバレ内容は書かないので、鑑賞前の方でも参考いただければと思う。

『対決モノ』の描かれ方の変化

本作『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』は、キャプテン・アメリカとアイアンマンの対立を描く内容となっている。アベンジャーズは、これまで何度も人類の危機を救ってきたが、その度に発生する付帯的損害は計り知れない。また、そもそもこのような人類的危機は、アベンジャーズ登場によって頻発するようになったとの声もある。さらにアベンジャーズの”自警団”としての身勝手な活動はアメリカ国内に留まらず、国境を越えヨーロッパ、アジア、アフリカの安全も脅かしている。
事態を重く見た政府はアベンジャーズのあらゆる活動を管理下に置くべく『ソコヴィア協定』を発足。これに賛成するトニー・スタークと、反対するスティーブ・ロジャーズのすれ違いがエスカレートしていき、ついにアベンジャーズを二分する『望まぬ決闘』が巻き起こる。

このようにストーリーはわかりやすい。そもそも同名の原作コミックが存在するので、『シビルウォーはこういうストーリーで、こういう理由でキャプテン・アメリカとアイアンマンが戦うんだよ』というあらすじは調べれば誰にでもわかる。対決モノの在り方として、このオープン性が良いと思った。

これまで、大作映画の対決モノシリーズはいくつか存在していた。そのたびに、対決の焦点の当て方が異なるのが面白い。たとえば、『フレディvsジェイソン』『エイリアンvsプレデター』などは、「どちらが勝つのか」という、プロレス的なエンターテイメント性を有していて、その勝敗は正直どちらでも良いような部分があった。(『エイリアンvsプレデター』の日本の宣伝用キャッチフレーズは、「どちらが勝っても人類に未来はない」。)
それが『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』になると、「なぜ、戦うのか」というミステリーとなる。
そして今回の『シビルウォー』は、そのどちらでもない。「なぜ戦うのか」の理由ははじめから公開されているし、「どちらが勝つのか」と言われれば、どちらにも勝ってほしくないし、どちらにも負けてほしくない。シビルウォーの原作コミックは10年前に発刊されていたものだから、「こんなストーリーは新しい!斬新!」とは言わないが、それでもこの『掴みどころの無さ』はブロックバスター映画としては新しいと感じた。そしてこの『掴みどころの無さ』は、後述するが今作に歯切れの悪さを残している。

シリアスながらも軽快

バットマンvsスーパーマン』とは、公開時期が近い事、マーベルとDCというライバル会社同士である事、そしてスーパーヒーローの対決モノ同士という事で、どうしても比べざるを得ない。更に、『ヒーロー活動の責任の所在』というメインテーマまで共通している。

『バットマンvsスーパーマン』では、レックス・ルーサーがスーパーマンとバットマンの存在をそれぞれ「昼と夜(Day vs Night)」と比喩していた。そのセリフをそのまま当てはめるなら、『シビルウォー』は昼であり、『バットマンvsスーパーマン』は夜だった。
先述したように、「なぜ戦うのか」という謎だけを渡された状態で幕を開ける『バットマンvsスーパーマン』は、まるで何処へ連れて行かれるのかわからないミステリーツアーのようで、しかもその道中はひたすら暗く、重苦しい行程であった。対して『シビルウォー』は対決の理由は明かされているので、観客はただ両手拳に手汗を握りしめて、安心して席につくことができるのだ。

そして、『バットマンvsスーパーマン』の対決がすべて夜のシーンであったのに対し、シビルウォーはアクションシーンに限らず、ほとんどすべて昼間の描写だった。これは、シリアスなストーリーを無駄に重苦しく見せないための計算だったのではないかと思う。

さらに、アントマンことポール・ラッドに、おなじみのスパイダーマンといったコメディ枠のキャラクター達が、物語に軽快さを添えてくれる。作品全体のトーンとして、ダークでミステリアスな題材ながらもカラリとしていて、『バットマンvsスーパーマン』のように気疲れしてしまう事が一切なかった。

スパイダーマンという共通知

今作の見どころとしては、なんといってもスパイダーマンの参戦だろう。スパイダーマンのマーベル・シネマティック・ユニバースへの合流は多くのアメコミファン、映画ファンが待ち望んでいた展開であっただけに、正式参戦のニュースや、スパイディが映った予告編が公開される度にファンは沸いた。
同時に懸念されていたのが、それなりにバックストーリーを抱えるスパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースにどう絡むのかという事だ。特に今作『シビルウォー』はキャップとアイアンマンを中心にアベンジャーズがエラい事になっているので、正直「ベンおじさん!」「大いなる力には…」をやっているどころではない。筆者も観ながら「本当にスパイダーマンが入ってくる余地はあるのか?」と少々心配になったが、監督のルッソ兄弟は『親愛なる隣人』を実にスムーズに部屋に招き入れてくれた。
そして前評判通り、トム・ホーランドが演じるスパイダーマンは最高だった。

筆者はここで改めて『スパイダーマン』という存在の共通概念としての偉大さを感じた。なんてったって、スパイダーマンだ。細かい説明はもう要らない。愛すべき科学オタクで、遺伝子操作されたクモに噛まれてスーパーパワーを得ると、自分の傲慢でベンおじさんを死なせてしまう。「大いなる力には大いなる責任が伴う」だ。このフレーズはもはやポップカルチャーのファンにとって「フォースと共にあれ」にも並ぶ一般定型文なのである。
そんなスパイダーマンがアベンジャーズに参加する。その『絵力』ならぬ『事実力』にシビれた。奇跡だ。トニーが「スパイダーマン」と呼ぶ、その響きだけで頭がクラクラする。そしてこの喜びは特別マニアックなものでもない。「わかる人にはわかる」ではない。多くの人にとってスパイダーマンは共通知なのだ。

何度でも言いたいが、とにかく『シビルウォー』でのスパイダーマンは最高だった。これまでで最もスパイダーマンらしいスパイダーマンだった。おまけに出番も多い。言うことなしだ。(劇中スパイディがとある有名映画をネタにしたパロディをやる。あれ、最高だ。)

悪役不在の『掴みどころの無さ』

筆者は、本サイト『THE RIVER.cinema』を運営する上で、「ポップカルチャーを中心とした映画の情報サイト」を基本テーマとして掲げているが、その記事はやたらマーベル寄りになっている事は、本サイトによく遊びに来てくださる方は察していると思う。筆者はマーベルのファンであり、本作『シビルウォー』は心待ちにしていた。思い入れの強い大好きなヒーロー達がたくさん登場する派手なアクションやストーリーは最高だったが、それでも100点満点かと言われると決してそうではない。何故なら、この作品に『掴みどころの無さ』を感じたからだ。

それは、この作品に『パブリック・エネミー』が存在しない事に由来する。筆者がわざわざ説明するまでもなく、キャプテン・アメリカもアイアンマンもどちらともそれぞれの信念に従って行動しており、どちらも正義である。だからこその対立がドラマチックなのだが、一方で観客は感情の置き場に迷ってしまう。そして、(特別なキャップ・ファンやアイアンマン・ファンを除いて)おそらく結局最後まで、観客はどちらにも完全に感情移入ができずに終わってしまう。

クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャーズ / キャプテン・アメリカ役)は以下のように語っている:

「一作目はわかりやすくナチスが悪かった。これには皆同意できるね。『キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー』では、S.H.I.E.L.D.が実はヒドラによって支配されていた。これも意見が分かれない。『アベンジャーズ』は、悪いエイリアンと戦うぞという話。
今までは常にコインのどちらの面が出るか、彼にはわかりきっていたわけさ。でも今作は、僕らの日常でもよくある、正しい答えなど出せない揉め事のような複雑さがあると思う。」

「相手はヴィランでなはなく、ヒーローの友であり家族なんだ。」

本作パンフレットより

本作では倒すべきヴィランが全くいない訳ではないが、それはテーマの本筋にない。これが『シビルウォー』がこれまでのスーパーヒーロー映画と大きく事なるポイントだ。クリス・エヴァンスが使った「正しい答えなど出せない揉め事」は的を得ている。
「この状況から、この強敵をどうやって倒すんだ?」という向くべき方向もわからず、出口のない迷路に迷い込んでしまう。
なんやかんやで『バットマンvsスーパーマン』はドゥームズデイという『敵』の登場によって「まとまり」「爽快感」を作り出していたが、『シビルウォー』にはそれがない。ストーリーはわかりやすく、映像も明るい、アクションも文句なしに超サイコーだった。が、観終えた後の充実感は『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』に及ばない。

アベンジャーズ同士が対決する映像はインパクト絶大だが、「美人は三日で飽きる」ように、後半ではそのインパクトにも順応してしまい、心の落ち付け所が欲しくなってしまった。スーパーヒーロー映画にヴィランは必要である。『シビルウォー』ではそんな事に気付かされた。

と、気になるポイントももちろんあるが、それでも『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』は観るべき映画だと思う。ただし本作は、観客がマーベル・シネマティック・ユニバースの過去作を体験している事を大前提で一切の説明なく展開していくので注意してほしい。
少なくとも『キャプテン・アメリカ / ザ・ファースト・アベンジャーズ』『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー』『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』そして『アントマン』は必ず観ておく事をオススメしたい。

あと何回か、映画館で観たいと思う。

※別のレビューはコチラ:

【大満足】『シビルウォー』のキャプテン・アメリカは頑固一徹キャラな原作と違って超いい奴【ネタバレ無しレビュー】

悲しい戦いを描く『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』レビュー2

Eyecatch Image:http://www.comicbookmovie.com/captain_america/captain_america_civil_war/second-whih-newsfront-viral-with-a141002

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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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Comments

  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年4月29日 at 4:29 PM

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  • @u_take23 2016年4月29日 at 4:41 PM

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  • 映画News (@Cinema_News24) 2016年4月29日 at 6:12 PM

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  • 映画が好きです♪ (@eiga6suki) 2016年4月29日 at 7:30 PM

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  • トウタ㌠ (@k10_uni) 2016年4月29日 at 10:28 PM

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    Reply
  • @dairedheart 2016年4月30日 at 9:55 AM

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  • @guitarmori 2016年4月30日 at 11:08 AM

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  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年4月30日 at 8:18 PM

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  • @rakuraku1ban 2016年5月1日 at 5:01 AM

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  • 匿名 2016年5月5日 at 4:31 PM

    『ファースト・アベンジャーズ』『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー』『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』そして『アントマン』は必ず観ておく事をオススメしたい。

    『アベンジャーズ』『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』しか見なかったけど、面白かった

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