超解説『キャプテン・マーベル』米レビューサイトへの荒らし攻防戦 ─ 出演者らも呆れのコメント

映画『キャプテン・マーベル』のレビューをめぐる場外乱闘が続いている。米大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」上に投下された「荒らし」による大量の書き込みには公式に対策が投じられ、著名人らも苦言を呈している。
この記事では、『キャプテン・マーベル』Rotten Tomatoesレビューをめぐるこれまでの経緯と現在の状況を、できる限り平易に解説する。
荒らしの発生
日本では2019年3月15日公開となるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『キャプテン・マーベル』は、MCU史上初の女性ヒーロー映画。主演のブリー・ラーソンが女性インタビュアーによる取材の機会を増やすよう求めたことなどから、一部の保守的な映画ファンが怒り、まだ米公開も迎えていなかった頃から同作への”荒らし投票”を始めたのだ。
Rotten Tomatoes上には、封切り前の作品への期待を数値化する「観たい(WANT TO SEE)」スコアが存在するが、こうした荒らし攻撃を受け、「観たい」スコアは一時28%程度まで低下。さらに攻撃的なコメントも多数残されていた。
「観たい」システムの改正
これを受けてRotten Tomatoesは、サイト全体におけるシステム変更を余儀なくされた。劇場公開前のコメント受け付けを終了したほか、期待度を示す「観たい」表示をスコア(パーセンテージ)ではなくユーザー数で表示する方針に切り替えたのだ。同サイトは「荒らし行為に近い、建設的でない情報が増えるケースを確認している」とコメント。観客の期待度は、スコアではなく「観たいと思っているユーザーの数」だけで示されることになった。
映画が米公開、スコアの行方は
一部で波乱続く中、『キャプテン・マーベル』は2019年3月8日よりついに米公開を迎えた。蓋を開けてみれば、ネット上の荒らし合戦はどこ吹く風。初週末興行収入は米国内1億5,300万ドル、世界4億5,500万ドルを記録。この額は歴代全映画の中でも『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)を凌ぐ第6位の大健闘である。
公開に伴ってRotten Tomatoesでは、観客が自由にレビューを投稿できるようにより、その総評がオーディエンス・スコアの形で数値化されるようになった。ところが、ここでも荒らしによる低評価レビュー攻撃が勃発。評論家によるスコアは80%の「認定フレッシュ」評価を受けている一方、『キャプテン・マーベル』のオーディエンス・スコアは、MCU映画史上としては圧倒的に最下位の30%台からのスタートとなった(これまでのMCU映画オーディエンス・スコアは、すべて70%以上を記録している)。
『キャプテン・マーベル』の観客レビュー数は一時58,000件にまで昇ったが、これは公開終了済みの『アベンジャーズ・インフィニティ・ウォー』(2018)の53,500件を超えてしまう数値だ。これでは、意図的な悪意を持った不正投稿が紛れていても分からない。不正に辟易する声の中には、明らかなボットによる悪質な自動投稿を見つけた報告もある。
レビュー数、約5万件減少
この動きに対し、Rotten Tomatoesは再度対策を投じた。58,000件ほどあったレビューのうち、約50,000件を削除したのだ。同サイトはこれを「バグ」対策だと説明した。米The Hollywoor Reporterを通じ、以下の声明を発表している。
「我々は先週、公開前の映画に関する機能に変更を行いました。劇場公開前の作品に対しては、コメントやレビューを受け付けないというものでした。しかし、ユーザーには公開前の映画に対して『観たい』投票を行って頂けるようになっています。その総数はサイト上に表示されます。
先週の機能アップデート以降に劇場公開された映画の中に、バグがあることが分かりました。ユーザー投稿の数(オーディエンススコアの直下に表示されるもので、映画公開後に書かれたレビューだけの数を示すもの)が、劇場公開前と公開後の両方の投稿を含んでしまっていたのです。」
運営側の懸命な努力にかかわらず、『キャプテン・マーベル』オーディエンス・スコアはその信頼性に疑いがかかる紆余曲折を経てしまった。「バグ」のために大多数が削除され、約8,000件から再スタートとなった同作レビューは、本記事執筆時点(2019年3月11日12時)には投稿数が51,200件以上に。スコアは30%台から58%にまで持ち直しているが、その評価は依然MCU映画史上最低だ。この評価が適正かどうかさえ、今となっては分からなくなってしまった。
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