【インタビュー】ドラマ「ザ・コンチネンタル」若きウィンストンは「常に不安と隣り合わせ」、主演が語る孤独な戦い

『ジョン・ウィック』シリーズ初の実写スピンオフドラマ「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」がついに配信開始を迎えた。映画シリーズで登場したコンチネンタルホテル・ニューヨークの支配人ウィンストンの知られざる若き頃の日々が描かれる。
本シリーズでウィンストン役に抜擢されたのは米サンフランシスコ出身の俳優、コリン・ウッデル。「フライト・アテンダント」(2020-)や「オリジナルズ」(2013-2018)「パージ」(2018-2019)などに出演してきた。
THE RIVERではこの度、ウッデルのオフィシャルインタビューを入手。企画に参加する前まで『ジョン・ウィック』シリーズを観たことがなかったというウッデルは、映画版でイアン・マクシェーンが演じたウィンストンをどう蘇らせたのか。舞台裏のエピソードも交えながら、詳細に語ってくれている。
「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」ウィンストン役コリン・ウッデル オフィシャルインタビュー

── 「ザ・コンチネンタル」 の概要を教えてください。
映画『ジョン・ウィック』の前日譚であり、シリーズをご存じの方なら、この作品がジョン・ウィックの世界への入り口として素晴らしい作品であることが分かるでしょう。シリーズの舞台から30~40年前の話です。多くの登場人物、世界のさまざまな側面、特にコンチネンタルホテルの素晴らしい紹介にもなっています。さらに、映画を観たことがある人なら分かるような、ちょっとした面白い仕掛けも沢山あります。
とても嬉しいことに、プロデューサーたちは全て映画と同じメンバーなので、作品へのリスペクトが込められた、これまでのシリーズに忠実な統一感があります。もっと素晴らしいのが、70年代を描いているので形式的な違いがあること。世界観に新たな味わいを加えるために、小さな要素が加わっていきました。
世界観はとてもクールです。ニューヨークを舞台としているので現実のようなリアリティを感じさせる一方で、立ちはだかるユニークな犯罪の裏社会が組み込まれている。ダークな精神を感じさせると同時に、映画シリーズでもあった煌びやかさを感じさせます。

── 『ジョン・ウィック』シリーズのアクションシーンで、印象的だったことは?
アクションの優美さです。こんなアクションシーンは誰も見たことがない。特に、キアヌ(リーブス)が『ジョン・ウィック』にもたらした影響は大きいと思います。キャラクターは活気に満ちていて、彼らは真似事ではなく、本物の人間を生きている。作品が発表された時は、情報も小出しだったので皆さんの期待も高まったと思います。私が初めて観た時は、こんなアクション見たことないって驚きました。
(ジョン・ウィックの)スタントを担当したチーム、87イレブンの目を疑うような素晴らしいパフォーマンスもカッコ良かった。彼らのパフォーマンスを見ていると、もはやダンスみたいで、とても誇らしく思っています。
── ウィンストン役を引き受けた理由を教えてください。
キャラクターも当然24時間のスパンで生きています。俳優がキャラクターのマインドセットに飛び込んで旅に出たとき、それがワルで賢いな男だったなんて、すごく最高なことでしたから、何の迷いもありませんでした。しかも僕は、イアン・マクシェーンのウィンストンを見ていなかったので、ラッキーでしたね。自分なりのアプローチで上手くマッチするかどうか試してみようって感じで挑めたので。
── イアン・マクシェーンには影響を受けましたか?
映画を見ていなかったですし、彼がどう演じていたかも知らなかったので、とてもシンプルな気持ちで引き受けました。オファーを受けた後、このプロジェクトについて話し合う中で、シリーズの映画3本を一日中見ていました。本当に膨大だったけど、彼の演技やニュアンスの一つひとつが本当に勉強になりました。そして彼の演じるウィンストンをどれだけ再現できるかが論点になっていきました。実際には、「よし、自分が演じるのは30年から40年前の彼だ。ほとんど別の人物だと思っていい」といった具合で、自分なりのウィンストンを自由に演じられもしました。

── シーンのために沢山稽古されましたか?
現地に着いたときは「よし、やっとトレーニングしてアクションガイになれるんだ」って興奮しました。でもいざ台本を読み始めたら、「僕がやらなきゃいけないことなんて、そんなにないんだ」って気づきました。何かするとしても、ただ銃弾をかわして、ギリギリの状況を切り抜けるだけ。僕は何もしていないんです。でも、ウィンストンのクールなところはそこだと思います。彼は賢い。それが彼のパワーであり、誰かの尻を蹴ることではなく、相手を出し抜く。だからトレーニングでは、キャストのみんなが本当に大掛かりなことをやっていて、体が痛いとかぼやいている中で、僕も「そう、そう、首が痛くてたまらないんだ」って言うんですけど、実際には大したことはしていない。面白かったですね。
── では、彼がファイターではないとしたら、ウィンストンをどう表現しますか?
その生い立ちから、彼には間違いなく喧嘩っ早さがあります。多くの回想シーンで分かるように、ウィンストンは決して戦い方をすぐに身につけるような男ではなかった。それでも、生き残るしかなかったんです。私たちが思っているのは、ウィンストンが自分自身で状況を打開できる人物だということ。彼は常にいい戦いをします。ただ、その戦いに勝つとは限らない。それは彼という人間の本質を表しています。彼の選んだ道であり、彼のためでもあり、彼の成功につながっているのです。
── シリーズでウィンストンが登場する場所について教えてください。
ロンドンです。彼は一見成功したビジネスマンで、人生最大の取引の崖っぷちに立たされていますが、彼が育ったニューヨークで兄のフランキーと法律トラブルに巻き込まれたので、ここ15年ほどロンドンに住んでいることが分かります。だから、彼は自分自身を証明するために生きてきた。家族も友達もいない。彼はまるで一匹狼です。彼は成功を幸せの手段として見てきたんだと思います。
でも、アイビー・リーグのような教育を受けられないことは分かっている。オックスフォードに行ったわけでもない。裕福な家庭でもない。だから、成功するためには手を抜き、自分が望む場所にたどり着くために必要なことは何でもしなければならなかったのです。彼はちょっとした詐欺師とも言えますが、同時にとても現実的で、過去の過ちから、常に不安と隣り合わせで生きていくことを分かっている人物です。
── この世界でコインは何を意味するのか教えてください。
コインそのものは一種の通貨です。実際にコインで買い物をすることもできますが、それ以上にコインとコインが象徴するもの、つまり通過儀礼であることが重要なのです。コインを持っていれば、コンチネンタルに泊まることができる。しかし、このコインはそれを所有する人のステータスを表し、コインの価値を考えれば、コインプレス(鋳造機)が実際にどれほどの意味を持つかが想像つくでしょう。というのも、もしコインプレス機が悪人の手に渡ってしまったら、その人は好きなだけコインを鋳造することができ、市場に溢れかえり、突然コインの価値が失われてしまうからです。
── シリーズを通してウィンストンはどのように成長していきますか?
彼を演じるのは本当に楽しいです。物事の進展がいかに早いか、それに対処できる時間がいかに短いかがよく分かります。ロンドンで生きてきた孤独のせいで、彼は成功を収めなければならないというプレッシャーを強く感じていて、それが自分の幸せにつながると信じています。
兄と再会した彼は、自分に欠けていたものが家族と愛であることに少しずつ気づき始めます。だから、長い間ひとつのことに突き動かされてきた彼が、嘘の人生を送ってきたことに気づいたとき、それに対処するのは簡単なことではありません。でも今の時点で失うものは何もないと気づくことが出来て、自分の手で問題を解決しようとするのです。
── ウィンストンとシャロンの友情について教えてください。
最初の出会いからいきなり絆が生まれて、映画で描かれていたような関係になるわけではないんです。ウィンストンがシャロンに接近したとき、間違いなく敵意があります。シャロンが誰と手を組んでいるか、ウィンストンがシャロンに責任を負わせているかということで、怒りが渦巻いているんです。だから、二人の関係は最初少し重い。でも、ウィンストンはこの少年に共感し、このかわいそうな少年がどれだけ自分の鏡のような存在で、洗脳されていて、自分がどんな世界に巻き込まれているのかすら分かっていないと知ることができるようになる。ウィンストンはいつも、誰かがやってきて自分と家族を救ってくれたらと願っていたのだと思います。

個人的には、イアン・マクシェーンとランス・レディックが演じるウィンストンとシャロンの関係が大好きです。アヨ(アヨミデ・アデグン)とあのシーンを撮れて、僕らがこの役柄に入り込み、ストーリーを進め、化学反応を起こすことができてとてもワクワクしました。ある日、バスの中で私が彼を口説くシーンをやった時、2人の関係が徐々に発展し始めました。歯車が回り始め、2人の間に繋がりができ始めたと思います。興味深い瞬間でした。「僕がウィンストンで、君はシャロン。最高じゃん」って。
「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」はPrime Videoで独占配信中。毎週金曜日に新エピソードが配信。
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