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ドラマ版「カウボーイビバップ」スパイク&宿敵ビシャス、ジュリアに焦点 ─ 原作通りではなく「より広い物語として描きたい」

カウボーイビバップ
© Destination Films 写真:ゼータ イメージ

Netflix製作、ハリウッドによるドラマ版「カウボーイビバップ」は原作アニメをそのまま実写化するのではなく、主人公スパイク・スピーゲル、宿敵ビシャス、そしてキーパーソンのジュリアらに主な焦点を当てることになるようだ。脚本家のジャヴァイア・グリロ=マルクスアチ氏が米io9にて語った。

「ファンのみなさんには、ドラマを見て、(実写化の)失敗だ、再現を怠っているとは思ってもらいたくないのです」。こう語るマルクスアチ氏は、同じくNetflixオリジナルシリーズ「ダーククリスタル: エイジ・オブ・レジスタンス」(2019)で脚本・製作総指揮を務めた才能。ともに本作に挑む日系アメリカ人の脚本家、カール・タロウ・グリーンフェルドとは「『カウボーイビバップ』の世界で遊ぶのではなく、むしろ『カウボーイビバップ』に遊ばれるのだ」というルールを決めたという。

「『カウボーイビバップ』を見て、“ここを出発点に、あっちを変え、こっちも変え、名前も変えちゃおう。そしたら自由になる”なんてことは言えないわけですよ。『カウボーイビバップ』をやるとはそういうこと。『スター・ウォーズ』をやるようなものです。」

1998~1999年に放送された原作アニメ「カウボーイビバップ」は、2071年の太陽系を舞台に、宇宙船ビバップ号で旅する賞金稼ぎ(カウボーイ)たちを描いた全26話構成のシリーズ。かたや、今回のドラマ版は全10話構成だ。そもそも前提となる条件が大きく違ううえ、マルクスアチ氏は原作アニメについて「素晴らしい悪党たち、鮮やかなストーリー、見事な敵役や賞金首、そういうものでいっぱい」だと述べた。だからこそ、ドラマ化には新たなアプローチが必要だということだ。

(アニメの)物語にひとつずつ取り組むのではなく、スパイク・スピーゲルとチーム、スパイクとジュリア、スパイクとビシャス、彼らの物語をより広く描きたい。けれども同時に、“最高の悪役たちが何人もいるし、どうやったら今回の物語に登場させられるかな”とも話しています。『カウボーイビバップ』の大きな物語を、ふたつ描いている感じです。」

ビバップ号のクルーで賞金稼ぎのスパイクを演じるのは、『スター・トレック』シリーズや『search/サーチ』(2018)のジョン・チョー。スパイクの元相棒で宿敵のビシャス役は「ザ・ボーイズ」(2019-)のアレックス・ハッセル、スパイクとビシャスの過去に因縁を持つジュリア役は「ギフテッド」(2017-2019)のエレナ・サチンが演じる。アニメを手がけたサンライズ社が企画に参加し、渡辺信一郎監督を監修に迎えているだけに、アニメをしのぐ“深化”に期待したいところだ。

マルクスアチ氏いわく、実写化のポイントは、原作の精神に敬意を払いつつ、Netflixドラマというメディアの違いを踏まえ、現代の観客に通用するバランス感覚を維持すること。ドラマ版はアニメからヒントを得て、実写作品、実際の人間で成立するデザインでセットや衣裳が作られているという。たとえばビバップ号の一員であるフェイの服装は少々落ち着いたデザインになったとか。また現在の感覚に照らし、登場人物の喫煙なども少々トーンダウンして描かれることになる。

「カウボーイビバップ」というアニメについて、マルクスアチ氏は「ジャズやアメリカのポップカルチャー、リアリティショーなど、戦後日本で重要だったものの影響が大きい。アメリカのポップカルチャーと日本文化が、未来の宇宙で結びつくとどうなるかということなのです」と分析している。「今回はそれを英語に翻訳するだけでなく、オリジナルとは別のフォーマットに落とし込もうとしています」。マルクスアチ氏は編集段階の第1話を見ており、すでにドラマ版の仕上がりにも自信を示している。

ドラマ版「カウボーイビバップ」の撮影は2019年10月時点で開始されていたが、スパイク役のジョン・チョーが負傷したことから中断され、その後、新型コロナウイルスの影響によって再開の見通しは立っていない。もっとも、脚本家チームはすでにシーズン2の準備に入っていることが判明済みだ。現在、マルクスアチ氏は原作アニメのファンにもこのように呼びかけている。

「最高の番組とはどういうものか、誰もが違う考えを持っているものです。そして多くの『カウボーイビバップ』ファンは、アニメこそが最高だと考えていらっしゃるでしょう。だから私たちは、この作品への見方が変わることを願っています。オリジナルを見事に翻訳し、見事に新しいものにしていると思うので。[中略]私たち自身がファンで、この作品にはファンとして参加しているのです。私たちはジャンル作品が、SFが好きだし、『カウボーイビバップ』が大好きなんですよ。」

製作総指揮を務めるのは、『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)の脚本家ジョシュ・アッペルバウム&アンドレ・ネメック、『ヴェノム』(2018)を執筆したジェフ・ピンクナー&スコット・ローゼンバウム。第1話の脚本は『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)のクリス・ヨストが執筆した。

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Source: io9

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。