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『ダークナイト』ジョーカー誕生&撮影秘話 ― ドキュメンタリー『アイ・アム・ヒースレジャー』本編映像が公開される

https://www.youtube.com/watch?v=WGB7ONwzxng 動画サムネイル

2008年公開、クリストファー・ノーラン監督作品『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーは世界中の映画ファンに衝撃を与えた。かつてジャック・ニコルソンが演じたイメージとは明らかに異なる、現代を生きる“サイコパス”としてのジョーカー像は恐ろしくも圧倒的な魅力を放ったのである。

今もなお熱狂的なファンを持つジョーカーを、俳優ヒース・レジャーはいかにして作り上げたのか……。米JoBloは、彼のドキュメンタリー映画『アイ・アム・ヒース・レジャー(原題:I Am Heath Ledger)』の本編映像を公開している(予告映像はこちらの記事をご覧いただきたい)。そこではジョーカーの誕生秘話や、ひたすら真摯に撮影に臨んでいたヒースの素顔までもが語られているのだ。

『ダークナイト』ジョーカー撮影秘話

『アイ・アム・ヒース・レジャー』は、2008年1月に死去したヒースの友人や関係者へのインタビュー、また生前のヒースが撮影していた映像などで構成されている。
ヒースのエージェントを務めていたスティーヴ・アレクサンダー氏は、『ダークナイト』の出演オファーについて初めてヒースに話した際のエピソードをこう振り返った。

「ヒースに電話して、“こんな話があります。『バットマン』の次回作を準備しているみたいで、ジョーカーがヴィランとして登場するんですが、興味はありますか?”って話をしました。そしたら間髪入れずに、“もちろんやりたいです。どうしたらいいですか? 飛行機に乗りますよ、クリス(クリストファー・ノーラン)に会いたい。彼と話せますか?”って。」

オファー当初からジョーカー役に強い興味を示していたというヒースは、無事に役を射止めたあと、役づくりのために約2ヶ月にわたって自分自身を追い込んだという。映像には、ヒース本人がジョーカー役へのアプローチについて語っている音声も収録されているのだ。

「クリスが『バットマン・ビギンズ』(2005)で作った世界を見ていたので、新しいジョーカーを演じる機会だとわかって興奮しました。何をするべきかもすぐにわかりましたよ。
部屋の中に6週間こもって、この気味の悪い男を演じる方法を作り出したんです。狂人みたいに歩き回りながら、彼の姿勢や態度、声を知ることがすごく大事でした。声がわかると、声に含まれている呼吸もわかるんですよ。」

時に“ヒースは役柄に入り込んでしまった”とすら語られるジョーカー役だが、実は撮影現場でのヒースはいつも冷静で、休憩時間に人と話してはジョークを飛ばして笑うこともあったという。元エージェントのスティーヴ氏は、ヒースの様子をこのように振り返っている。

「自分の撮影がない時でも、彼はセットにやってきてクリスのことをじっと観察していました。ヒースは監督としてのクリスにすごく興味があって、彼が何を作っているのか、何をしているのかをできるだけ知ろうとしていたんです。」

あくまでヒースは、自分ひとりではなく集団での映画製作に熱意を注いでいたのだろう。こうした姿勢は、一度は自分自身をとことん追い込んだジョーカーの役づくりにも表れている。
ハービー・デント(アーロン・エッカート)のパーティーにジョーカーが現れるシーンの撮影で、ヒースは演技コーチに率直な相談をぶつけたというのだ。コーチを務めていたジェリー・グレンネル氏はこう話す。

「ジョーカーがパーティーに現れるシーンを撮影していた時でした。(参加者役の)エキストラがすごくたくさんいて、あっちにもこっちにもカメラが置いてあったんです。ヒースはそこまで大規模だと予想していなくて、“ステージに上がるような気分ですよ。こんなに人が多いなんて思ってなかった……どうすればうまく演じられるでしょうか?”って言っていました。だから私は、“あなたはソシオパスなんですよ。みんなはあなたのオモチャなんだ、オモチャで遊ぶみたいにやりましょう”って答えたんです。」

『ダークナイト』で絶賛を受けたヒース・レジャーのジョーカーは、類まれなる才能を持つ俳優から、その演技を監督や大勢のスタッフが引き出して作り上げたものだったというわけだ。ジャレッド・レトが『スーサイド・スクワッド』で演じ、これからもあらゆる俳優が演じ継ぐであろう役柄だが、その人物造形はこれからも決して色褪せないことだろう。

映画『ダークナイト』はブルーレイ&DVDが現在発売中。
なお『アイ・アム・ヒース・レジャー』は2017年9月時点で日本公開されていないものの、海外盤ブルーレイ&DVDを日本からも購入することができるほか、米国iTunes Storeではデジタル版の配信が行われている。

Sources: https://batman-news.com/2017/09/06/heath-ledger-documentary-joker-dark-knight/
http://comicbook.com/dc/2017/09/06/heath-ledger-documentary-joker-dark-knight/
Eyecatch Image: https://www.youtube.com/watch?v=WGB7ONwzxng 動画サムネイル

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。