ベン・アフレック版『デアデビル』は時代に恵まれなかったのか ─ Netflixドラマ版俳優「上手く出来ていたと思わない」

映画『デアデビル』は不遇の作品だったのではないだろうか。
この作品が公開された2003年といえば、アメコミ映画の文脈においては2000年の『X-MEN』、2002年の『スパイダーマン』がいずれも評判を呼び、アメコミ映画の新時代ブーム開幕を予感させていた。アクション映画の文脈においては、VFX技術の発達と共に1999年の『マトリックス』が「スタイリッシュ・アクション」ブームに火を付け、2002年の『リベリオン』などの派手なガンアクションが主流に。このトレンドは、ゲーム「デビルメイクライ」(2001)など各所にも影響を感じさせていた。
こうした「スタイリッシュ・アクション」ブームのさなかに、にわかに盛り上がり始めたアメコミ原作映画の流れを受けて登場したのが『デアデビル』だった。夜間にのみ活動する盲目のスーパーヒーローは、流行にあったダークでスタイリッシュな世界観にもマッチ。当時すでに『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)や『アルマゲドン』(1998)、『パール・ハーバー』(2001)でよく知られていたベン・アフレックが主人公のデアデビル/マット・マードック役で主演。コリン・ファレルや『グリーンマイル』(1999)のマイケル・クラーク・ダンカンら豪華出演陣も脇を固めた。最新のマーベル・シネマティック・ユニバース映画同様、スタン・リーもカメオ出演を果たしていた。ゴシック・ロック・バンドのEvanescenceはこの映画の主題歌「Bring Me To Life」でメジャーデビュー。収録アルバムは全世界1,400万枚を売上、グラミー賞最優秀新人賞と最優秀ハードロック・パフォーマンス賞も受賞した。
しかし映画の結果は惨敗。興行収入は「大コケ」とされ、ベン・アフレックはラジー賞最低主演男優賞に選ばれてしまうほどだった。
映画『デアデビル』、君は先駆けていた
好条件は揃っていた。それでも映画『デアデビル』は時期早々だった。アメコミ映画と「ダークでシリアスなトーン」の相性が確かめられるのには、2008年のクリストファー・ノーラン作品『ダークナイト』まで待たなければならなかった。そして”恐れを知らぬ男”デアデビル映像版は、2015年のNetflix版ドラマの登場まで闇に紛れて息を潜めることになる。2005年には、スピンオフ映画『エレクトラ』も公開。シネマティック・ユニバースの先駆けとも言える展開を見せたが、あまり観客の理解は得られていなかった。
ドラマ版「デアデビル」は、今でこそエンターテインメント業界を席巻するNetflixのサービス開始時の目玉タイトルだった。「デアデビル」のロゴマーク、そして主人公チャーリー・コックスの紅く光るサングラスは、Netflixのロゴと共に新鮮に映えて見えたものだった。
「オリジナルの『デアデビル』(映画)は、とくべつ上手く出来ていたように思えなくて。ドラマをやって分かったんですが、デアデビルのキャラクターのトーンってちょっとダークで、もっと不穏な感じなんですよね。僕の考えでは、ベスト・デアデビル・コミックはもっとこう、大人の観客に向けられているもので、ドラマ版はその不穏でダークなトーンをとらえていると思うんです、多分ね。でも、ベン・アフレックのマット・マードックは良かった。」
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