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DC幹部、『ジョーカー』の狙いを理解していなかった ─ トッド・フィリップス監督、企画実現までの裏側明かす

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

2019年、コミック映画に衝撃をもたらしたDCコミックス原作映画『ジョーカー』。ホアキン・フェニックスによる渾身の演技と、脚本・監督を務めたトッド・フィリップスの明晰なビジョンは、世界中で社会現象的なムーブメントを巻き起こし、R指定映画史上初の世界興収10億ドル突破という結果に至った。ところが、DC映画の幹部は『ジョーカー』の狙いを理解していなかったという。マイケル・ムーアのポッドキャストにて監督自身が明かした。

もとよりフィリップス監督は、『ジョーカー』の実現がたやすいものではなかったことを折に触れて語ってきた。監督が『ジョーカー』のアイデアを着想したのは2016年ごろだったが、当時は『バットマン vs スーパーマン』の公開直後で、『ワンダーウーマン』『ジャスティス・リーグ』(ともに2017)も控えていた。監督は脚本を執筆し始めるも、ワーナーやDCの意向を受けて、内容の変更にも取り組まざるを得なかったという。

ところがワーナーは、『ワンダーウーマン』以外の作品が興行的にいまひとつ振るわなかったことから、DC映画の首脳陣を入れ替える決断に踏み切る。新たに就任したウォルター・ハマダ氏は『ジョーカー』に理解を示さなかったというが、幸いにも首脳陣が入れ替わったこと自体によって、企画の実現が助けられた部分もあったようだ。

「ワーナーの体制が変わった時、DCサイドの体制も変わりました。DCの担当者としてやってきたのがウォルター・ハマダで、New Line Cinemaで小規模なホラーレーベルをやっていた方です。だから、彼には企画を止める力がなかったんですが――彼が止めるつもりだったと言うわけではありませんが、彼は(『ジョーカー』を)理解していませんでしたよ。計画段階ではクレイジーな内容だったので。」

『死霊館』シリーズや『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)を手がけたハマダ氏は、『アクアマン』(2018)からDC映画に参加。しかし、コミック映画の枠組みでマーティン・スコセッシ風、70年代風のシリアスなドラマを描きたいというフィリップス監督の意向は、ハマダ氏にはスムーズに理解できなかったそう。監督いわく、『ワンダーウーマン』や『アクアマン』の製作を経たハマダ氏は「いい感じでやってるのに、どうしてやり方を変えるのか」というスタンスだったそう。

「彼の見方もすごく理解できますよ。だけどその時には、(企画が)却下されないようにと僕を支えてくれる人たちもたくさんいたんです。なぜなら(スタジオは)簡単に“ノー”と言えてしまいますから。僕たちはいつでもアクセルを踏めるようにしていて、まさに“きしむ車輪は油を差される”(※)という状態でした。長いあいだ作業をしていたんです。」

(※)「きしむ車輪は油を差される」とは英語のことわざで、主張すれば気づいてもらえる、といった意味。

結果的に『ジョーカー』は、スタジオ製作のコミック映画としては極めて低予算で製作されることになった。とはいえ、フィリップス監督は「最終的に6,000万ドルで作ったんですから、低予算ではないですよね」と語っている。「ワーナーやDCからすればインディペンデント映画みたいなものなんでしょうけど」。

ちなみに、スタジオにとって些細な企画として始動したために、フィリップス監督は「失敗できないな、とは思わなかった」そう。「この作品で“失敗する”とはどういうことなのかと思いました。誰も観たいと思わなくて大コケする事態なのか、それともつまらない映画になってしまう事態なのかって。まあ、やらせてもらえるんだからやってやろうと」。

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Sources: RUMBLE with MICHAEL MOORE, Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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