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ディズニー、21世紀フォックスの買収額を約2兆円増額 ― 7兆8,500億円でコムキャストに対抗、米司法省も近く承認との報道

ディズニー

米ウォルト・ディズニー・カンパニーは、21世紀フォックス社の事業買収について、同社と新たな条件で合意したことを明らかにした。2018年6月20日(米国時間)、両社が発表している。
ディズニー側の提示した新たな買収額は713億ドル(約7兆8,500億円※1ドル約110円換算)で、これは2017年12月に両社が合意した524億ドルをはるかに上回るものだ。

ディズニーと21世紀フォックスは、2017年12月の正式発表後、映画事業(20世紀フォックス)やテレビ事業(FOX ネットワークス)など複数事業の買収を進めてきた。しかし2018年6月14日、米国の大手通信会社であるコムキャストが、650億ドル(約7兆1,590億円※レート換算同上)での事業買収をフォックス側に再提案。コムキャストは全額を現金で用意するとの条件を提示していた。

今回ディズニーが新たな条件で21世紀フォックスとの再合意に至ったのは、こうしたコムキャストの再参入を受けてのものだ。ディズニーが提案した713億ドルという金額は、コムキャストの提示額を10%上回る数字である。またコムキャストが全額現金での買収を提案したことから、ディズニー側は現金と株式取引を半々にして用意する(前回の条件では株式取引のみだった)。こうした内容について、21世紀フォックス側は「以前の内容やコムキャストの提案よりも優れている」との意思を示している。

同社が新たな条件を発表した6月20日(米国時間)、21世紀フォックスは役員会でコムキャストによる提案を検討するとみられていた。ただしディズニーとフォックスは、その当日になって新たな条件での合意を発表したわけである。一部報道では、21世紀フォックスのルパート・マードック会長がコムキャストの提案を受けてディズニーへの事業売却を翻意すると伝えられていたが、蓋を開けてみれば、ディズニーによる事業買収がそう簡単には揺らがないことが示されたともいえるだろう。
ウォルト・ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOは声明の中で、2017年12月から進められてきた事業統合の準備について、21世紀フォックス側への熱意と信頼を改めて強調。同じくルパート会長も、ディズニーへの事業売却が「世界最高の、最も革新的な企業を生み出すことになると今も信じている」と記したのである。

21世紀フォックスをめぐるディズニーとコムキャストの争いについて、多くの専門家は、ディズニーがコムキャストに対抗することは間違いないという見方だった。それもそのはず、ディズニーの大きな狙いは2019年に米国で開始される自社ストリーミング・サービスの体制強化や、「スター・ウォーズ」やマーベル・キャラクターの権利なのである。将来的な利益を鑑みれば、コムキャストの再参入を受けてディズニーがすんなりと諦めるわけがなかったのだ。
Deadline誌は“524億ドルから713億ドルへ”という大幅な増額は専門家にも予想外だったと指摘しているが、これは「絶対に退かない」というコムキャストへの意思表示ともいえるだろう。とはいえ、今後コムキャストがさらなる好条件を整え、ディズニー側への“再挑戦”を申し込む可能性もある。

なお米Bloomberg誌は、ディズニーによる今回の事業買収が、米司法省から反トラストの承認を2週間ほどで受ける見込みだと報じている。コムキャストの動向も含めてまだ確実なことは何も言えない状況だが、それでも超巨大企業同士の事業統合は、またしても大きな前進を見せたといっていいのかもしれない。

Sources: Deadline, Variety, Bloomberg(1, 2

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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