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【インタビュー】映画『ドクター・スリープ』は『シャイニング』続編なのか ─ 監督とプロデューサーに訊いた

ドクター・スリープ
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スタンリー・キューブリックの『シャイニング』から、およそ40年。あの少年ダニーが、大人になって再びスクリーンに登場する。その映画『ドクター・スリープ』の予告編が解禁されるにあたり、監督のマイク・フラナガンとプロデューサーのトレヴァー・メイシーが、L.A.でミニ記者会見を行った。原作から大幅に変えられている映画版『シャイニング』をスティーヴン・キングが気に入らずバッシングしたのは、有名な話。だが、子供の頃からキングとキューブリック両方の大ファンだったというフラナガンは、今作で、その両方の世界を見事に融合させ、キングにも、キューブリックの遺族にも気に入ってもらうことに成功したという。

―─今作は、キューブリックによる『シャイニング』の続編と呼んでいいのでしょうか?

マイク:その質問は最もよく受けるものなんですが、なかなか答えるのが難しいんですよね。単純に言うなら、「イエス」です。キングが書いた原作小説は、彼自身が書いた『シャイニング』の続編ですから。しかし、この映画はまた、キューブリックが作り上げた映画のユニバースにもつながっています。それをやるにあたり、私たちはまず原作をじっくり読み、その上でスティーヴン・キングと話し合いを持ちました。『シャイニング』の原作の最後ではあるキャラクターが生きているのに、映画版では死んだなどの部分をどう扱うのか、また展望ホテルの描かれ方なども含め、私たちはキングに自分たちがやろうとしていることを誠意を持って説明しています。その話し合いがうまく行かなかったら、この映画を作ることはできないと思っていましたが、うれしいことに、その話し合いは大成功。最後には、彼から励ましのお言葉までもらえたんですよ。脚本の初稿ができた時にも、すぐ彼に送っています。それもまた、非常に気に入ってもらえました。ポストプロダクションの段階で、映画も見てもらっていますが、キングにも、キューブリックの遺族にもお褒めいただいています。

トレヴァー:両者とも、私たちにとても協力的だったんですよ。キューブリックの遺族は、彼が描いた展望ホテルの図面まで見せてくれましたしね。それにキングも、彼自身が気に入らなかった映画版の要素を取り入れることが必要なのだということを理解してくれましたし。それだけに、彼にはどうしても気に入ってほしいというプレッシャーを感じていたんですよね。

─―ダニー役にユアン・マクレガーを選んだのはなぜですか?また、彼はなぜこの役に興味を持ったのでしょうか?また、レベッカ・ファーガソンも出演しますね。

マイク:ユアンは、良い人のオーラを感じさせる人。ダニーにはそれが必要です。とくに、この映画のはじめで彼は最悪の状態にあるため、観客に嫌われることになってはいけません。ユアンも『シャイニング』の大ファンなので、このプロジェクトに興奮してくれましたよ。

トレヴァー:レベッカ・ファーガソンも、恐ろしいことをするシーンですら人間味を感じさせてくれる女優さんですしね。

―─予告編でユアンがドアから顔をのぞかせるシーンは、ジャック・ニコルソンによるあの有名なシーンへのオマージュかと思います。今日の若い観客の中には、『シャイニング』を見ていない人も多いかと思いますが、そういう人たちも楽しめるよう意識しましたか?

トレヴァー:『シャイニング』を見ていない人たちにも楽しんでもらえる映画にすることは、私たちが最初から意識してきたことです。ですが、あの映画はカルチャーに非常に大きな影響を与えたので、見ていない人でも、有名なシーンを知っていたりするんですよ。それは、初期のテスト上映で気づきました。

マイク:でも、『シャイニング』を見ていれば、より深い体験になるのはたしかです。

―─この40年の間に多くのホラー映画が作られ、今の若い人たちは、昔より簡単に怖がらなくなっているかと思います。それについては、どう思われますか?

マイク:私たちは、最初から、これをホラー映画だと思っていないんですよ。たしかに怖い要素はありますが、これはむしろ心理スリラー。緊張感あふれる心理スリラーと言ってもいいかもしれません。『シャイニング』だって、「飛び上がるほど怖かったシーンは?」と聞かれたら、答えられないんじゃないかと思いますよ。そういうのはないんですから。

―─キューブリックが『シャイニング』を撮影している時、現場では火事など奇怪なことが起こったと報道されましたが、今回は何か恐ろしいことはありましたか?

マイク:いや、そういうのはなかったですね。そもそも、この映画の撮影には『シャイニング』ほど時間がかかっていませんし。あの映画は1年半くらいかけているんですよ。私は『シャイニング』でダニーを演じたダニー・ロイドとツイッターでつながっているんですけど、彼が時々、その1年半のエピソードを教えてくれたりします。しかし、1年半って、すごいですよね。私たちが恐れていたことは、火事が起こるかよりも、ディテールを忠実に描けるかということでした。撮影現場の壁には参考写真が山のように貼り付けられていましたよ。キューブリックは映画に一貫性をもたせることに細心の注意を払っていました。その続きを作っていく上では、「なるほど、このショットは対称的にするためにやったものなんだな」などという新たな発見もありましたよ。

(文:猿渡由紀)

映画『ドクター・スリープ』は2019年冬、全国ロードショー

『ドクター・スリープ』公式サイト:http://www.doctor-sleep.jp

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THE RIVER編集部THE RIVER

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