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スティーヴン・キング『心霊電流』映画化企画が頓挫、『ドクター・スリープ』監督と再タッグならず

スティーヴン・キング『心霊電流』(上・下)(文藝春秋刊)

『ドクター・スリープ』(2019)のマイク・フラナガン監督による、巨匠スティーヴン・キング著『心霊電流』(文藝春秋)の映画化企画が頓挫していたことがわかった。ポッドキャスト「The Company of the Mad: The Stand Podcast」にて、フラナガン自身が明かした。

そもそも『心霊電流』の映画化については、フラナガンよりも先に、同じくキング原作のドラマ「ザ・スタンド(原題:The Stand)」を手がけたジョシュ・ブーンが着手していたという。フラナガンが原作小説の限定版をインターネットで入手しようとしたところ、なんと出品者がブーンであることが分かり、そこで『心霊電流』についてのやり取りをする中で発覚したと語られている。

今回のポッドキャストにはブーンも参加しており、ブーンとフラナガンは、ともに『心霊電流』の映画化を断念したことを認めた。フラナガンは「ジョシュが先に作業していて、結局は僕も諦めました。同じ苦しみを味わったんです」とコメント。ブーンによると、『心霊電流』を忠実に映画化するには製作費がかかりすぎるため、キャスティング作業や絵コンテの制作も進んでいたが実現しなかったという。フラナガンも「同じところで同じ壁にぶつかりました」と語った。

『心霊電流』は、米ニューイングランド地方の小さな町に暮らす少年ジェイミー・モートンと、町にやってきた牧師チャールズ・ジェイコブスを主人公とする物語。ジェイミーとチャールズは仲良くなるが、ある日、チャールズは愛する家族を失ったことで信仰に挫折し失踪。それから時は流れ、ヘロイン中毒のミュージシャンとなったジェイミーと、電気による信仰治療を操る男となったチャールズが再会するのだ。

ブーンは「この物語の素晴らしさは舞台となっている時間の長さ」だといい、したがってジェイミー役、チャールズ役の俳優には大きな挑戦になると強調。一時はチャールズ役にサミュエル・L・ジャクソンが興味を示していたが、出演条件で合意できなかったため就任には至らなかったという。フラナガンは「いつか脚本や絵コンテ、つらい思い出を持ち寄りましょうね」と提案している。

フラナガンが『心霊電流』に着手していることは2020年5月に報じられ、同年7月には脚本初稿の完成が判明していた。過去にフラナガンは『ジェラルドのゲーム』(2017)『ドクター・スリープ』でキング作品を映画化しているため、『心霊電流』の製作が実現していれば3度目のタッグとなっていたのである。キングもフラナガンによる脚本を気に入っていたといわれるだけに、実現しないことが惜しまれる。なおフラナガンは以前、キングとのコラボレーションについては「できるかぎり長くやりたい」と語っていた。遠からず、別の作品での再タッグが期待される。

ジョシュ・ブーンの「ザ・スタンド」はこちら

Source: The Company of the Mad: The Stand Podcast, Cinema Blend

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。