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【ネタバレ考察】『ドリームランド』水の描写に意図 ─ 湖、シャワー、海の役割とは

ドリームランド
(C)2018 DREAMLAND NM,LLC

この記事には、映画『ドリームランド』のネタバレが含まれています。

ドリームランド
(C)2018 DREAMLAND NM,LLC

『ドリームランド』では、テキサスの砂漠の田舎を舞台に、美しき指名手配犯アリソンと、17歳の少年ユージンの禁断の恋と逃避行が描かれた。この作品では、物語に登場する「水」の役割に注目すると興味深い。

まず始めにユージンとアリソンが夜の湖に浸かると、そこでユージンは初めて父への思いを吐露する。2人が旅に出た後は、モーテルのシャワーで2人が互いの思いを確かめ合い、水(湯)に濡れながら、精神的にも肉体的にも結ばれる。それに「ドリームランド」として夢想される映像は、メキシコの海だ。アリソンも「海で罪を洗い流したい」と言う。この映画の「水」には、何か重要な意味が込められているのではないか。

この考察についてTHE RIVERは、マイルズ・ジョリス=ペイラフィット監督本人に直接尋ねてみた。やはり水の描写には意図があったようで、監督はこう解説する。

「この映画では、全体的にほこりっぽい、ある程度水不足な質感にしたかったんです。また、情熱的なほどに何かを求めるものを、エモーショナルに映像表現したかった。ほこりっぽい世界にいると、水の映像がオアシスのように感じられます。

まず始めに夜の湖で泳ぐ姿を描いていますが、ここでは暗く、水はハッキリ見えません。これが最初の水の描写です。

次にシャワーのシーン。ここで彼(ユージン)は水の中に入っていく決断をゆっくりと下します。

このシーンは両方とも、まずアリソンが先に水の中に入って、ユージンもそれに続いて決断をするようになっています。劇中の出来事に振り回されるのではなく、人が決断を下していく様子を見ることができるのです。

恐怖も不安もありながら、キャラクターと共に進んでいく。彼はまだ17歳だし、マーゴット・ロビー(の演じる役)の前に立てば、怖気づくでしょう。どうすればいいかわからない。その一歩を踏み出して切り抜けていく彼の姿を描きたかったんです。

それで、最後にはアリソンにこの記憶を思い出してほしかった。実際の雨ではないけど、あの洗い流してくれる雨(=シャワー)を、彼女はよく覚えていたのです。」

『ドリームランド』のラストでは、追いかけてきたユージンの義父ジョージが、逃げるアリソンの背中めがけ射撃。アリソンを失ったユージンは、怒りからジョージの右脚に撃ち返すが、義父は仲間の応戦を止めさせ、ユージンの逃亡を許す。

ユージンと一緒に入ったあの湖、あのシャワー、そして一緒に訪れるはずだった、メキシコの美しい海。これらを思い出させるように、そしてアリソンの罪を洗い流して、包むように、彼女の亡骸が横たわる乾いた道を、1年ぶりの雨が濡らすのだった。涙のように。

監督との単独インタビュー全文はこちら

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THE RIVER編集部THE RIVER

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