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ゲイリー・オールドマン主演「シド・アンド・ナンシー」あの究極のラブストーリーを、もう1度!

『俺達は死の取り決めがあったから、一緒に死ぬ約束をしてたんだ。 こっちも約束を守らなきゃいけない。 

今からいけば、まだ彼女に追いつけるかも知れない。 

お願いだ。死んだらあいつの隣に埋めてくれ。 

レザー・ジャケットとレザー・ジーンズとバイク・ブーツを死装束にして、さいなら。』  

https://ja.wikipedia.org/wiki/シド・ヴィシャス

これはイギリスのパンクバンド、セックス・ピストルズのベーシストであるシド・ヴィシャス最期の言葉だ。彼は1979年、ドラッグの過剰摂取により死亡した。満21歳という若さだった。革ジャンのポケットに入っていたメモに、この言葉は記されていたという。

この“彼女”とは、シド・ヴィシャスの生前の恋人であり、彼の死の4ヶ月前に謎の死をとげたナンシー・スパンゲンのことである。圧倒的なカリスマ性を誇り、多くのパンク・キッズたちを熱狂させ、そして21でこの世を去ったシド・ヴィシャス。そんな彼と恋人のナンシー・スパンゲンの愛を描いた映画が1986年に初公開された『シド・アンド・ナンシー』だ。 

【注意】

この記事には、『シド・アンド・ナンシー』に関するネタバレ内容が含まれています。

『シド・アンド・ナンシー』あらすじ

物語はシドの恋人、ナンシーの遺体がホテルで見つかったところから始まる。恋人の遺体の横でがっくりと肩を落としているシド。凶器のナイフがシドの持ち物であったことから、彼はナンシー殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。2人にいったい何があったのか?シドとナンシーの短く破滅的な愛を描いた物語だ。

伝説のパンクロッカー、シド・ヴィシャスの半生に体当たりで挑んだのは、イギリスの名優ゲイリー・オールドマン。実はこの映画が彼の初主演作なのである!デビューしたてのころからすでに堂々たるオーラが画面からにじみ出ている。 

ゲイリー・オールドマン、圧巻の演技力!

(C) 1986 Zenith Productions Ltd
(C) 1986 Zenith Productions Ltd

レオン』のスタンフィールド捜査官役や『フィフス・エレメント』のゾーグ、『ハンニバル』のメイスン。悪役もそうでない役の時も、エキセントリックなキャラクターを演じることの多いゲイリー・オールドマン。初主演作であるこの映画でも、シド・ヴィシャスが乗り移ったかのような演技を披露している。

観客にブチ切れたりライブで過激なパフォーマンスを見せたかと思えば、時折みせる笑顔やライブ外での素顔は少年のようにあどけなく、純粋だ。ツンツン立てた髪の毛に、身につけているのはレザージャケット、ゴツゴツしたブーツ。攻撃的な言動を繰り返していても本当は「普通の21歳の青年なのでは?」と思わせる。どこか“品”がにじみ出ているのだ。ふと見せる子犬のような眼差しや柔らかい表情。実際シド・ヴィシャスも、根は心優しい礼儀正しい青年だったという。繊細な面をもったパンクロッカーそんな彼を演じ切れるのは、ゲイリー・オールドマンだからこそだろう。 

 “真”のラブストーリー

(C) 1986 Zenith Productions Ltd
(C) 1986 Zenith Productions Ltd

 

「この世界は私とあなただけ」。『シド・アンド・ナンシー』はそんな言葉がぴったりのラブストーリーだ。セックス・ピストルズのベーシストであり、プライベートでも数々のぶっ飛んだ伝説を残しているシド・ヴィシャス。映画でも描かれているように、ナンシーがそんなシドを麻薬の世界にひきこみ、彼を薬物中毒者へとしてしまったようだ。ドラッグに溺れ、破滅への一途をたどっていく2人。なぜシドとナンシーは何十年たった今でも“パンク界のロミオとジュリエット”と称され、そして私たちはどうしようもなく彼らに魅せられてしまうのだろう? 

セックス・ピストルズの他のメンバーからは「2人の関係を美化しすぎている」との批評もあった『シド・アンド・ナンシー』。それでもこの映画は、“究極の愛”を描いた正真正銘のラブストーリーだ。

映画『ブルーバレンタイン』で見られるように、恋にはどんな形であれ終わりがある。どれだけ愛しあったカップルも気持ちがすれ違い、別れてしまうかもしれない。出会いは最悪、でもいつの間にか恋に落ちて…そんなハッピーエンドで終わるラブストーリーも、物語のその後は2人の恋心も移ろいがあるだろう。人の心も、愛情も、時と共に少しずつ変わっていくものだ。例え恋人たちの関係が、終わることが無くともだ。

しかしこのシドとナンシーの愛はどうだろう。悲劇的な結末ではあるものの、本人たちは“悲劇”と考えているのだろうか。21歳と20歳でこの世を去ってしまった2人、彼らの愛は最高地点に達したまま、変わることなくそこで止まっているのではないかと思わせられる。シドが身につけていた南京錠のアクセサリーのごとく、熱を帯びた愛の最高地点で鍵をかけて、封じ込めてしまった2人。それが死をもってだなんて、なんと皮肉でロマンチックなことだろう。 

本当の愛とは、何であるのか

(C) 1986 Zenith Productions Ltd
(C) 1986 Zenith Productions Ltd

って何だろう。」誰でも1度はこの概念について、考えたことがあるはずだ。筆者も友人たちと話すことがある。「愛ってなんだろう」と。20歳そこそこの若者の頭なりに一生懸命考えてみるが、ちゃんとした答えにはたどりつけない。『シド・アンド・ナンシー』を観ると、「本物の愛とは何なのか」とまた改めて考えさせられる。

シドとナンシーのような生き方は今の世界、いや普通の人は誰も経験しない人生のはずだ。もちろんドラッグだって立派な犯罪だし、仕事より何より恋人を優先させることは生活している以上はできるものじゃない。ましてやこの2人ぐらい、人のことを愛することはできるのだろうか。「この人と一緒なら死んだってかまわない」「この人になら殺されてもかまわない」そんな危険なことを思えるぐらいの愛を、実感することはできるのだろうか。 

“恋は盲目”なんていう言葉がある。恋をすればその人の悪いところも見えなくなってしまい、理性や常識も失ってしまうこと。シドとナンシーは盲目どころではない。他の人も見えていない…いや、もうお互いしかいない世界に入ってしまっている。周りから理解されなくとも、この世界には私たち2人がいる。お互いがいれば、もうそれだけで全て。誰にも邪魔されず、自分たちだけの世界があれば良い。きっとこれも“真実の愛”の1つの姿なのではないのかと考えさせられるのだ。 

物語のラストシーン。「ガキとは踊らねえよ」と言いながらなんだかんだ、子供たちと一緒にダンスをするシド。片手には大好物のシド。その顔はジャンキーでも“セックス・ピストルズ”のシドでもなく、1人の繊細な青年だ。そこにやってくるのは、車にのった花嫁姿の恋人のナンシー。シドは幸せそうな笑顔を浮かべて、ナンシーが待つ車に乗り込むいくら破滅的でも、悲劇的でも、人をこれだけ愛することに魂を削っても、それは崇高で美しいことではないのか。観終わったあとにはふとこんなことを思ってしまう、だからシド・ヴィシャスは永遠のカリスマであり、そして2人のラブストーリーは何年たっても語り継がれているのではないだろうか。 

珠玉のラブストーリー『シド・アンド・ナンシー』。30年前に公開されたこの映画を、現在デジタルスクリーンで再び上映中。もうすでに観たことがあるという人も、ぜひもう1度、シドとナンシーの愛の軌跡をご覧になってみてはいかがだろうか。きっとあなたも「本当の愛とは何か」そんなことを考えさせられ、心を大きく揺さぶられるはずだ。 

映画『シド・アンド・ナンシー』はオンライン上の映画館「デジタルスクリーン」にて上映中

【デジタルスクリーン】ウェブサイトはこちら

【シド・アンド・ナンシー】上映ページはこちら

※デジタルスクリーンは現在パソコンでのみ視聴可能です

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Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)

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