『デューン 砂の惑星 PART2』余命わずかの男性のためにプライベート上映を実施していた ─ SNSで繋がった奇跡、数日後に息を引き取る

2024年1月、カナダ・ケベックの病院で終末期ケアを受けていた男性が息を引き取った。余命わずかだった男性の最期の願いは、公開が数ヶ月後に迫った『デューン 砂の惑星 PART2』を鑑賞すること。これを叶えるべく1人のケアワーカーがある行動を起こしたところ、その想いはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の元に届いたのだった。
「“私には何ができるだろうか”。そう考えていたら、夫が“君なら何でもできるじゃないか”と思い出させてくれました」。カナダの現地メディアGlobal Newsとの取材でこう語るのは、終末期ケアワーカーのジョゼ・ギャニオン。ある日、余命わずかの中年男性患者から、自分はシネフィルで、逝く前に観たい映画があると伝えられたという。この願いをなんとか叶えられないものかと、ギャニオンは自分のSNSで男性の願いを投稿した。
ギャニオンの投稿を見てすぐさま動いた人物がいた。『さよなら、退屈なレオニー』(2018)などで知られているカナダ出身の映画監督、セバスチャン・ピロットだ。同じくケベック出身のピロットはヴィルヌーヴ監督側にコンタクトを取り、SNSでの投稿から12時間以内にはギャニオンの元に連絡が届いていたという。
監督側は、男性にロサンゼルスへ来てもらう、もしくはケベック州の首都モントリオールで開催されるプレミアイベントに招待するという二案を提示。しかし、余命わずかの男性にとって長距離移動は難しかった。ギャニオンが「彼を動かすことはできません」と伝えたところ、ヴィルヌーヴ監督のマネージャーが映画のデータが入った監督のラップトップを持参し、はるばる病院へ駆けつけてくれたのだという。
マネージャー到着までの間の心境について、「とにかく時間との勝負でした。日を追うごとに、彼が生き続けられるか分からなくなっていきました。もってあと数日という感じでした」とギャニオンは振り返る。無事マネージャーが間に合うと、関係者全員は秘密保持契約に署名。男性は映画を一緒に鑑賞したい人を1名選ぶように伝えられると、介護士のひとりを選んだという。
リーク等を防ぐため、鑑賞前には携帯電話を預け、男性と介護士2人きりの空間で上映会はスタート。「これはすごいことでした。映画のリリース前で、“アメリカ合衆国の大統領でさえ観ることができないんです”と言われましたから」とギャニオンは語っている。
鑑賞後、男性は映画に感動していたという。「彼はさっそく映画と『デューン』ユニバースの虜になっていて、続きを観たいとワクワクしていました」。2時間46分の長尺である本作、男性には「全編を観る体力はなかった」とギャニオンは記憶を辿るが、「観始めた瞬間から気に入っていました」と伝えている。
極秘で実施された上映会から数日後の1月下旬、人生最後の願いを叶えた男性は息を引き取った。ギャニオンはヴィルヌーヴ監督と彼のチームから「この映画は彼のためのもの。私たちが映画を作るのは、彼のような人間のためなんです」とのメッセージを受け取ったそうだ。
ちなみに2019年には、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』公開を前にして死期が迫っていた『スター・ウォーズ』ファンの男性患者のため、米ディズニーが特別上映会を実施。SNSに投稿された男性の最期の願いを見たルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルが、ディズニーにつなげていた。
『デューン 砂の惑星 PART2』は2024年3月15日(金)公開。
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Source:Global News