【ネタバレ】『デューン 砂の惑星PART2』エンディング解説 ─ 小説からの脚色、待望の3作目『砂漠の救世主』はどんな内容?

この記事には、『デューン 砂の惑星PART2』のネタバレが含まれています。
原作小説『デューン 砂漠の救世主』どんな物語?
小説『デューン 砂漠の救世主』は、『PART2』のラストでも描かれたポールの王座奪還から12年後のアラキスが舞台。未来を視るクイサッツ・ハデラッハとなったポールは、皇帝としてアラキスを治めていた。
母親であり教母のレディ・ジェシカは、ガーニー・ハレックとともに安寧の故郷カラダンへと帰り、代わりに妹のアリアがポールを側で支えていた。ポールが愛を誓ったフレメンのチャニは側妻(そばめ)という立場に置かれており、変わらず一緒に生活をしていたものの、その関係は正妻のイルーランをめぐってギクシャクしてもいた。
そんな中、遠い別の惑星ではポールに対する陰謀が計画されていた。謀略の主要メンバーは、ベネ・ゲセリット、宇宙協会、そして謎多き第三勢力ベネ・トライラックスといった旧勢力の人間たちだった。そこには、レディ・ジェシカの師である教母ガイウス・ヘレン・モヒアムのほか、不満を募らせていたイルーランも加わっていた。『砂漠の救世主』では、そんな謀りごとを予知しながらも、内部の裏切りなどにより窮地に立たされるポールの苦悩が描かれていく。
『デューン 砂の惑星PART2』は概ね原作の展開通りに描かれていった一方で、ヴィルヌーヴが意図的に脚色したと思われる描写もあった。ゼンデイヤが演じたチャニのエンディングにおける立ち回りだ。映画『PART2』のチャニは、ポールがイルーランを娶ると聞いてショックを隠しきれないでいたが、小説版ではより従順に描かれている。チャニに対するポールの接し方にも変更が加えられた。映画版では「これからも愛し続ける」とチャニに伝えるのみだったポールだが、小説版では、フェイドとの決闘後にストレートな愛情表現を行っているのだ。以下、小説版からの引用。
「おれの妃はあそこにいる女(編注:イルーラン)となり、きみは愛妾となる。これは政治的なことがらであって、いまは和平を第一に考え、領主会議に属する各大統領家の支持を得なくてはならないからだ。体裁は取りつくろう必要がある。ただし、あのプリンセスがおれから得られるのは、おれの名前以外にはない。おれの子供を産むこともないし、おれの手で触れられることも、おれにやさしい眼差しを向けられることもなく、欲望を抱かれることもない。一瞬たりともね。」フランク・ハーバート(酒井昭伸 訳)『デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下)』ハヤカワ文庫SF、2016、289頁
この説得に、チャニは「いまはそういうけれどね…」と不安げに答えるのみ。それから12年後、『砂漠の救世主』のチャニは、ポールの側妻として登場している。

ヴィルヌーヴがチャニをより自立的な人物として描いたことは、『砂漠の救世主』を映画化する上での鍵となってくるはずだ。米The Hollywood Reporterが指摘しているように、『砂漠の救世主』ではキャラクターたちが「座って話すだけ」の会話劇が多く、物語はアクション要素も詰め込まれた『デューン 砂の惑星』と比較するとどうしても地味に感じられてしまう。
一方、『PART2』ではポールに次ぐ第二の主人公と言っても過言ではないほどの存在感を見せたチャニが、『砂漠の救世主』映画版における動力源となってくるのではないか。『PART2』のラストで描かれた、動揺したチャニがアラキスの首都・アラキーンを発とうとする描写は、小説版には存在しないオリジナルのシーン。ヴィルヌーヴが『砂漠の救世主』をどれほど忠実に映像化するのかは定かでないが、少なくともチャニをめぐるプロットにはひとひねりありそうだ。

また、フローレンス・ピューが演じたイルーランの登場も増えていくことになるだろう。イルーランは上述の通り物語における敵の立ち位置。ポールとの子どもを望むチャニに対して密かに避妊薬を飲ませるなど、チャニとの対立関係も注目なキャラクターだ。ヴィルヌーヴも、イルーラン役のフローレンス・ピューとの再タッグを熱望しており、もう一度仕事を共にするためだけに『砂漠の救世主』を作りたいとまで明言するほどだ。

現時点で、シリーズを率いる米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーからは3作目に関する正式な発表はなされていない。一方、製作を担う米レジェンダリー・エンターテイメントのジョシュ・グロードCEOは「作らない理由はないです。クリエイティブ上の関係者全員が足並みを揃え、(ヴィルヌーヴの)ビジョンを支えなければいけません」と前向きだ。シリーズで音楽を手がけるハンス・ジマーも、『砂漠の救世主』に向けた楽曲制作に着手しているという。
ちなみに小説『デューン』シリーズでは、『砂漠の救世主』以降も『デューン砂丘の子供たち』『デューン砂漠の神皇帝』『デューン砂漠の異端者』『デューン砂丘の大聖堂』と続編が存在する。しかしヴィルヌーヴ監督は、「『砂漠の救世主』が自分にとって最後の『デューン』であるべきだ」と決めている。主要キャストのティモシー・シャラメとゼンデイヤもすでにカムバックに前向きな姿勢を見せていることもあり、トリロジーでの物語完結に期待がかかる。
映画『デューン 砂の惑星PART2』は公開中。
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