ハンス・ジマー、日本独占インタビュー ─ 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』音楽に託した魂

代表作は数知れず。アカデミー賞に輝いた『ライオン・キング』(1994)はもちろん、誰もが胸踊らせる『パイレーツ・オブ・カビリアン』の雄大な楽曲。バットマンの『ダークナイト』3部作や、あまりにも有名な『インセプション』(2010)のホーン、『インターステラー』(2014)の壮大なる神秘、『マン・オブ・スティール』(2013)『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)の重厚感あふれる神々しい楽曲、『ブレードランナー 2049』(2017)に『ワンダーウーマン 1984』(2020)……。
ときに美しく、ときに重量級に。ときにオーガニックに、ときにエレクトリックに。ドイツが誇る巨匠ハンス・ジマーは、最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンド最後の戦いをドラマチックに演出している。
この巨匠との一対一の単独インタビューが、日本ではTHE RIVERだけで実現。“巨匠”とされるイメージとは裏腹に、素顔のハンス・ジマーはとても気さくだ。日本の読者に向けて、ここでしか聞けない特別な話をたくさん披露してくれた。ハンス・ジマーとの単独対話という、世界的にも貴重な機会をご堪能あれ。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ハンス・ジマー 単独インタビュー
──こんにちは!
こんにちは。お元気ですか?
──はい、元気です。ありがとうございます。今日はTokyo, Japanからお繋ぎしています。
Tokyoと言ったら、Japanは言わなくて良いですよ(笑)。東京は何度か訪れたことがあるのですが、驚くほど素晴らしい場所ですね。これまで行った中でも、特にエキサイティングな街です。
──ちなみに、日本でコンサートをされたことはありましたか?
いいえ、でも……、準備中です。
──えぇっ!本当ですか?
本当に準備中です。なかなか簡単にはいきませんが。特に昨今のウイルスの状況で、企画も少し後戻りすることになってしまいました。でも、どうにか(日本でコンサートをやる)機会をいただけて、より良いコンサートを作るために動いているところです。実現したら、派手にやるつもりですので、絶対に見逃せないと思いますよ(笑)。
──凄い。待ちきれないです。必ず行かせてください。あなたの音楽の大ファンなんです。あなたのサウンドトラックを普段からよく聴かさせていただいていて、特に『ダークナイト』と『インターステラー』がお気に入りです。ですから、今日はこうしてお話させていただくことができて、本当に光栄です。お忙しい中、お時間を割いていただいてありがとうございます。
こちらこそありがとうございます。その2作(『ダークナイト』『インターステラー』)は、確かに個人的にもとても重要な作品です。私には“お気に入り”というのはないんですけどね。お気に入りを作るわけにはいきません。ただ、その2作は私にとっても特別です。
──今作はジェームズ・ボンド映画です。『007』のテーマ曲といえば、映画音楽史上最もアイコニックな音楽ですね。
その通りです。
──そして、ついに『ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開となります(編注:このインタビューは日本公開前夜に行われた)。ずっと待っていた作品ですが、あなた方にとってはとても長い道のりだったのだろうと想像します。今の率直なお気持ちは?
よし、私の今の気持ちを正確にお話ししましょう。まずはヘトヘトに疲れました。この2週間が本当に忙しかったものでね。それで、今は信じられないほど良い気持ちです。満員になったアルバート・ホール(編注:本作のプレミアが開催されたロンドンの劇場)で、人々がまた繋がっていく様子を見ることができました。たとえば『インセプション』の頃、映画館業界にストリーミング業界が入ってくるだなんて、誰も考えていませんでした。しかし、(実際の劇場での様子を見て)人間性が再び繋がったのです。
これはただの映画ではありません。映画以上の何かです。私たちの夢に、人々を再びお招きしているのです。大きなスクリーンで鑑賞し、素晴らしい音を聴くことができるのです。
それから、私が非常に大切だと思っていることが他にもあります。ダニエル(・クレイグ)がボンドを演じる、最後の作品だということです。これがどういうことを意味するのか、私には少しわかります。先程『ダークナイト』が話題にありましたが、私はバットマン映画を3作やりました。みなさんにとっては“3作の映画”ですが、私にとっては“人生の12年間”なのです。ダニエルにとっては、“人生の15年”。ひとりの人間の人生としてはかなり大きいですよね。ですから私たちは、演技や作品、シリーズだけでなく、ダニエルの仕事に敬意を払うことを意識しました。