『ダンケルク』監督がハリー・スタイルズの出演を強調しない理由 ― 本人は俳優業引退を示唆?

クリストファー・ノーラン監督作品『ダンケルク』の出演者が発表された際、多くの映画ファンが、そして音楽ファンが驚いた。トム・ハーディ、ケネス・ブラナー、マーク・ライランスといった俳優陣の中に、人気グループ「ワン・ダイレクション」のメンバーであるハリー・スタイルズの名前があったからだ。このキャスティングには賛否両論、さまざまな意見がウェブ上にも渦巻いた。

むろん監督は、オーディションで選んだハリーの実力に惜しみない賞賛を送っている。『ダークナイト』(2008)でヒース・レジャーを起用した際のエピソードを引用するあたり、絶対の自信すらうかがわせるのだ。

しかし、それでも『ダンケルク』のプロモーションにハリーの姿はほとんど登場しない。よほど意識して探さないかぎり、予告編ではその顔を判別することすら難しいだろう。では、なぜ本作は絶大な人気を誇るハリー・スタイルズの出演をここまでアピールしないのか? その答えは、ノーラン監督をはじめとする作り手たちの思惑にあった。

群像劇としての『ダンケルク』

米エンターテインメント・ウィークリー誌の取材で、ノーラン監督はハリーの出演を強調しない理由を率直に語っている。そこには、あくまで『ダンケルク』をあるべき形でプロモーションしたい、あるべき形で観客に届けたいという思いがあったのだ。

「はっきりとした理由があって、この映画はハリーを過剰に売り込もうとはしていません。(この作品は)アンサンブル映画なんですよ。彼がたくさん出ていないことで、多くのファンをガッカリさせたくないんです。」

本作『ダンケルク』は、第二次世界大戦中の1940年に起こった「ダンケルクの戦い」を陸・海・空の3視点から描いた作品だ。フランスの港町・ダンケルクに追い込まれた連合軍の兵士40万人を撤退させるため行われた、史上最大の救出作戦こそがストーリーのキモなのである。
ハリーが演じるアレックスは、そんな物語の“陸”視点に登場する英国兵士のひとりだ。しかし“陸”の主人公はフィオン・ホワイトヘッド扮するトミーであり、アレックスは彼と一緒に行動する人物、すなわち大勢の中のひとりである。もっといえば、複数の視点からひとつの状況に迫っていく『ダンケルク』ではトミーすらも大勢の中のひとりにすぎない。スターであるハリーの出演を必要以上にアピールしないことは、こうした群像的としての性質をプロモーションで損ないたくないという意志の表れだろう。

©2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

©2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

けれども本編に登場するハリー=アレックスは、物語のキーポイントでその存在感を発揮する非常に重要な役柄だ。俳優初挑戦でその演技をこなしてみせたハリーについて、ノーラン監督はこのように強調した。

「ハリーの演技はとても捉えづらいと思います。それはすごくリアルだからですね。誇張されていないし、露骨でもない。状況のリアリティをうまく掴んでいるんです。繊細な演技をしているからこそ、あわや見落とされてしまう危険もありますよ。すばらしい役柄だし、彼は最高の仕事をしてくれたと思いますね。」

監督と同じく、共演者である名優マーク・ライランスやケネス・ブラナーもハリーの演技を絶賛している。その理由は、“ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズ”とはまるで違う表情を観ればすぐにわかることだろう。しかしそんなハリー本人は、俳優業を『ダンケルク』だけにとどめることも示唆しているのだ……。

「『ダンケルク』の一部になれて本当に幸せですよ。この役はまたやりたいけど、最初で最後かもしれないですよね……またやりたいです。とても楽しかったんですよ。(俳優業は)ピークに達するのが早すぎましたね! これから向かうところがありません。」

映画『ダンケルク』は2017年9月9日より全国の映画館にて公開中。“最初で最後かもしれない”ハリー・スタイルズの俳優業をぜひ大画面で見届けよう。

Sources: http://ew.com/movies/2017/07/13/dunkirk-harry-styles-trailers/
http://news.sky.com/story/harry-styles-tells-reporters-at-dunkirk-premiere-he-might-retire-from-acting-10947526
https://uk.movies.yahoo.com/harry-styles-ready-retire-acting-183738088.html
Eyecatch Image: Photo by Eva Rinaldi ( https://www.flickr.com/photos/evarinaldiphotography/15694942760/ ) / Remixed by THE RIVER

About the author

1989年生まれ。THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはわかりづらいまま、少しだけわかりやすくしてお届けできればと思っております。

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