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『エルヴィス』役者が実際に歌っていたのはどのシーン?作曲家が語る伝説の再現 ─ 「毎日空手を習った」とオースティン・バトラー

エルヴィス
(C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

“キング・オブ・ロックンロール”エルヴィス・プレスリーの半生を綴った伝記映画『エルヴィス』に登場する歌唱パートでは、主演のオースティン・バトラーとエルヴィス本人の声をミックスさせる試みがなされた。その一方で、オースティン本人がパフォーマンスしているシーンも多く盛り込まれているのだが、いったいどのシーンだったか聞き分けることができただろうか?

ハリー・スタイルズやアンセル・エルゴートなど、名だたる候補者を抑えて見事『エルヴィス』の主演に抜擢されたのは、「マンハッタンに恋をして~キャリーの日記~」(2013-2014)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)などで知られるオースティン・バトラー。バズ・ラーマン監督本人から合格通知を受け取った後、バトラーは徹底的な役作りを開始した。

アーティストの伝記映画では、歌声の再現手段の一つとして音の合成が行われることも珍しくない。例えば『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)では、フレディ・マーキュリー本人とカナダ出身の歌手マーク・マーテルの歌声をミックスしたものがラミ・マレックの演技に当てられた。

Varietyでは、作曲を担当したエリオット・ウィーラーが、本作における製作の過程を明かしている。ウィーラーいわく、「1968年までのパフォーマンス」は全てオースティン本人の歌唱によるものだという。ラスベガスのインターナショナルホテルの歌唱シーンが描かれた以降のパフォーマンスでは、オースティンとエルヴィスの声が掛け合わされたそうだ。米USA Todayで、オースティンは「いつ自分の声が終わって、エルヴィスの声が始まるのか、区別がつかなかったです」と語っている。

力強くて太いエルヴィスの声を再現するのは、高いハードルだ。音楽プロデューサーのデイヴ・コブが「あれだけ有名な収録を再現しようとするだけで恐怖を感じました」と並々ならぬプレッシャーを語っていたくらいだから、オースティンの重荷はさらにとてつもなかったはず。本作は、コロナ禍によって撮影に大幅な遅れが生じたことが話題となっていたが、オースティン自身、延期される前の撮影を控えていた時の心境について、「準備できていませんでした」と振り返っている。「でも突然製作が中断になって、リハーサルの時間が6ヶ月増えました。そこから毎日、一緒に(エルヴィスと)生活することになるんだと感じました」。

また、エルヴィス再現のために行われたのは、ボイストレーニングだけではない。激しくなればなるほど歌声に影響するパフォーマンス時の身体の動きも想定した役作りがなされていたのだ。「もし彼が腕をスウィングさせていたら、それは歌に影響します」とウィーラー。「私たちは、そうしたもの全てをオースティンが体得して、テクニックに落とし込む姿を見ていました」。なおオースティンは、エルヴィスの動きをマスターするために毎日空手を習っていたという。

こうした経緯を踏まえ、「もしエルヴィスのテイクを使用することになっていたら、オースティンのパフォーマンスをカットして繋ぎあわせることになってしまっていたでしょう」と作曲担当のウィーラー。「息遣い、うめき、ボディパフォーマンスの多くはオースティンのものです」と続け、より臨場感のあるリアルな再現への試みを明かした。

ちなみに、エルヴィスへの見事な憑依ぶりを見せたオースティンは撮影後、疲労により病院へ運ばれていたという。オースティンは振り返る。「(撮影終了の)次の日の朝4時に起きたら、ひどい痛みに襲われました[中略]撮影が終わって、身体がシャットダウンしてしまったんです」。

映画『エルヴィス』は公開中。

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Source: Variety(1,2),USA Today,AP Entertainment,GQ

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。