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マーベル映画が賞レースで評価されないのは何故、クリス・エヴァンスが業界の先入観を示唆 ─ 「マーベルの名を外せば評価されるだろう」

クリス・エヴァンス Chris Evans
David Gabber /Landmark Media 写真:ゼータ イメージ

『ブラックパンサー』(2018)や『ジョーカー』(2019)など、ヒーロー映画/コミック映画がぞくぞくと賞レースでの成果を挙げている今、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は、今後さらなる評価の向上が期待される。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でキャプテン・アメリカ役を卒業したクリス・エヴァンスも、新たな見地からの評価を望んでいる一人のようだ。

Deadlineの取材に登場したエヴァンスは、インタビュアーから“なぜヒーロー映画は作品賞候補になりづらいのか”との疑問が提示されるや、これに深く頷いた。エヴァンスが主演を務めた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)を例に挙げて、インタビュアーが「あらゆる意味でただのスーパーヒーロー映画じゃない」「この手の映画には重要な本質がある」と力説すれば、「その通り」と答えたのである。

ありとあらゆる思想と考察が、(ヒーロー映画の)物語には詰まっています。もしもマーベルという名前を外して、コミックのキャラクターであるとわからないようにしたならば、きっとそういう評価を受けることになるでしょう。すべての作品が大成功だと言うつもりはありませんが、とても素晴らしい映画があるということは分かってもらえると思います。」

ヒーロー映画と評価をめぐる議論といえば、巨匠マーティン・スコセッシが「映画(cinema)ではなくテーマパーク」「人間が他者の感情や心に訴えかけようとする映画ではない」と発言し、出演者やディズニー幹部、業界関係者を巻き込んだ騒動になったことが記憶に新しい。今回、エヴァンスが「もしもマーベルという名前を外して、コミックのキャラクターだとわからないようにしたならば…」と語ったのは、ヒーロー映画への先入観がいまだ払拭されていないという当事者の実感を示しているかのようだ。

一方、今後のMCUは『ブラック・ウィドウ』を皮切りに、『アベンジャーズ/エンドゲーム』までとは異なるストーリーテリングに舵を切る。起用されているフィルムメーカーも、ケイト・ショートランド、クロエ・ジャオ、デスティン・ダニエル・クレットン、タイカ・ワイティティ、ジョン・ワッツ、サム・ライミ、ライアン・クーグラーという顔ぶれだ。過去作からの続投となる監督もいるが、人選の趣向が少なからず変化していることもわかるだろう。興行面で十分すぎる実績を収め、これからのマーベル映画はどこに向かうのか。映画界全体とブランド、作品の関係がどう変わるのかを追いかけることも、いまやMCU作品を観ることの面白味といえる。

Sources: Deadline, Cinema Blend

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。