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キューブリック遺作『アイズ・ワイド・シャット』、主演にビル・マーレイやウディ・アレンらコメディ俳優検討されていた

ビル・マーレイ トム・ハンクス ウディ・アレン
A Photo by U.S. Department of State https://www.flickr.com/photos/statephotos/15789715150/ |A Photo by Georges Biard https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Bill_Murray_Deauville_2011.jpg | A Photo by David Shankbone https://www.flickr.com/photos/shankbone/3478578444 |Remixed by THE RIVER

巨匠スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』(2001)では、既に『ミッション:インポッシブル』(1996)で一躍アクション俳優として名を馳せていたトム・クルーズが主演を務めた。官能的かつミステリアス、ダークな色調の本作は、当時のトムにとって異色のフィルモグラフィーとなった1作だ。ところが、1970年代より構想が練られていた本企画の主演俳優には当初、ウディ・アレンやビル・マーレイ、トム・ハンクスなど、コメディ出身またはコメディ作品経験者である俳優が検討されていたのだという。

『アイズ・ワイド・シャット』は、アルトゥル・シュニッツラーによる『夢小説』(1926, 岩波文庫ほか)を原作に、当時私生活上でも夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンが、妄想に狂う夫と不貞願望を見る妻を演じたエロティック・ミステリー。米ヒューストン大学教授デヴィッド・ミキチ氏による伝記『Stanley Kubrick: An American Filmmaker』によれば、キューブリック監督には「主演の起用に夢見ていた俳優たち」がいたという。

「1970年代に、キューブリックは『夢小説』の主演に、コメディアンの持つ立ち直る力を備えた俳優の起用を夢想していた。彼はスティーブ・マーティンやウディ・アレンを想像していたのだ」。

スタンダップ・コメディアンとしてのキャリアを持つウディ・アレンや米人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身のスティーブ・マーティンは、1970年代までに輝かしい功績を挙げていた為、キューブリックの候補に入るのは不思議ではない。しかし、他作品の製作に多忙を極めていたキューブリックは本企画を持ち越し、遂には80年代の製作開始も叶わなかったのだ。

企画こそ進まなかったものの、本書によれば、80年代に発見されたキューブリックのメモには『アイズ・ワイド・シャット』の新たな候補俳優が記されていたという。そこには、ダスティン・ホフマンやビル・マーレイ、トム・ハンクスらの名前が含まれていたそう。他にもウォーレン・ベイティ、アラン・アルダ、アルバート・ブルックス、サム・シェパードら錚々たる往年の俳優が名を連ねていたと記されている。これらの顔ぶれは、出演当時30代後半だったトムに対して、一回りふた回り上の世代の俳優たちだということが分かる。

仮にこれらコメディ界に属する俳優たちが、トムに代わって本作で主演を務めていた場合、そのダークでミステリアスな作風はもしかすると大きく変わっていたのかもしれない。ちなみに、著者のミキチ氏は、トムを起用したことによる本作の変化に関する興味深い解釈を本書にて綴っている。

「意義深いことに、遂にキューブリックが自身の『夢小説』を固めた時、彼はコメディの背景を持たない、真面目で非常に計画的なトム・クルーズを起用したのだ。“コメディ”は主人公の自己防衛の為の武器となっていただろうが、キューブリックは彼(主人公)を無防備な男にしたのである。」

Source: Independent

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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