ヴィン・ディーゼルが語る『ワイスピ』ポール・ウォーカーとの、あの日の出来事 ─ 『ジェットブレイク』公開への想い【インタビュー映像】

『ワイルド・スピード』という超巨大トレーラーを手綱で引っ張る人物がいるとしたら、それはヴィン・ディーゼルだ。シリーズ第1作『ワイルド・スピード』(2001)から実に20年間、主人公のドミニク・トレット役を演じ続け、『ワイスピ』は今や世界最大の映画フランチャイズのひとつに。ヴィンはこのシリーズでプロデューサーも務めており、この怪物シリーズを大成功させた正真正銘の張本人なのだ。
そんなヴィンにとっては、コロナ禍で長らく公開延期となっていた『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』がついに公開を迎えることができて、喜びもひとしおだ。世界公開にあわせて開催されたグローバル・ジャンケットでは、誰よりも感激した様子で『ジェットブレイク』への思いをアツく語ってくれた。
ドムといえば、常にクールで、淡々としている印象。しかし、演じたヴィン・ディーゼルは、こんなにも情熱的で、エモーショナルな人物だったのだ。ひとつひとつの質問を、真正面からハートで受け止め、感慨深そうにため息を漏らし、天を仰ぎながら目を潤ませ、一語一語をまるで石碑に刻むかのように紡ぎ出すヴィンの、あまりにも誠実で実直なインタビューの実際の様子は、THE RIVERの公式YouTubeチャンネルにてご確認いただきたい。
ここからは、動画でもご紹介したヴィンの全世界プレス会見の全文を、日本語記事にしてデリバリーしよう。
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』ヴィン・ディーゼル 記者会見
──前作までを凌ぐような作品を、また作ってくださいましたね。信じられないくらいよかったです!
ありがとうございます!ありがとうございます!それは嬉しい。
──信じられないくらいでしたし、エモーショナルで、素晴らしい映画だったと思います。
ありがとう!励みになります。みなさんの意見を聞けて、本当に感謝しているんですよ。今作は昨年に公開されるはずだったもので、世間と同様に延期されたものですから。だから、その言葉を聞けただけで、やった甲斐がありました。
──この記者会見には、世界中からの記者が大興奮して集まっています。
それは最高だ……。最高すぎる……!楽しみです!
──『ワイルド・スピード』は史上最も人気なシリーズのひとつです。あなたや、観客を惹き付け続けるものはなんだと思いますか?
次はどうなるの?という期待だと思います。こんなシリーズは……(ため息)、観客が自分の映画を観てくれるというのは、すごく特別でユニークなこと。劇場を出た後に、チケット売り場に行って次回作のチケットを買うんです。まだ作られてもいない次回作のね(笑)。それこそが、ファンが映画に夢中になってくれていることの証。それに向き合っているからこそ、僕たちも、キャラクターも成長するんです。
今作は第9章、第1作目から20周年の節目です。ドムは父親になっていて、これから父親らしくなっていく。それこそが特別なことだと思います。もちろん、最大の理由は、『ワイスピ』は常に世界中で楽しまれていて、トレットの裏庭でのバーベキューに自分も加われるような気持ちにさせてくれるところですね。
──この20年を振り返って、特に印象的だったことは?また、最大の挫折は?
(ため息、しばらく考えて)忘れられないのは、メキシコの空港でのことですね。まだ映画が公開される前で、たしか2001年の4月でした。ポールと僕は地べたに座って、隣にバッグを置いていて、帰国便に乗るところでした。MTVの春休み企画で訪れていました。そこで彼が僕にもたれながら、「見てよ」と言うんです。「何を?」と言うと、「見てよ、みんなが通り過ぎるたび、僕たちのバッグを蹴りそうになってる。でも誰も僕たちなんか気にしてない」って。「どうしたんだよ?」と聞くと、「この映画が公開されたら、僕たちも無名じゃなくなるんだ」と。
あの出来事が、それから僕たちが辿ることになる旅路を表していたように思うんです。そういう思い出です。皮肉なんですが、思い出について聞かれると、僕の答えは劇中のものじゃない。劇中の出来事は、舞台裏の出来事の集約ですからね。
最大の挫折は、間違いなく……、兄弟を失ったこと。撮影の真っ最中のことでした。兄弟が、人生から、この惑星から引き剥がされたように感じました。
うまく表現できるのかはわかりませんが、あれは確かに僕の人生最大の悲劇で、人生観が変わるような出来事でした。
──『ワイルド・スピード』のファミリーは撮影現場でどのように一緒に過ごしているんですか?なにか、お決まりのことはありますか?
僕が現場にいるときは、みんなすごくシリアス。僕がすごくシリアスですからね。つまり、僕が現場にいるときは……、これはフィルムメーカーとして信じているんですが、すべての瞬間が奇跡を起こすチャンスだと思うんです。僕はそういうことを考えているし、(そういうチャンスを)求めている。その日にどんな奇跡が起こるかわからないから、全てのことに気付けるようにありたいんです。映画を作るときは、できる限りの準備をするものだと思いますが、それと同じく、全ての奇跡に気付けるように準備をしておいて、魔法を起こせるようにしたい。
でも、オフの時の僕らは、週末になるとみんなで集まっています。そうして絆を深めるんですね。例えば、ジョン・シナは怒れるジェイコブ役を演じていますが、僕たちはバチバチにやりあうために、週末はそのカウンター的なことをやるんです。ファミリーと一緒に、僕の息子と彼がフットボールをやったり、僕の娘とピアノでモーツァルトを弾いたり。そういうことが映画作りのためになるんです。やるべきことを気持ちよくできるように、周りの人を受け入れられるようになるからです。だからこそ、キャラクターやその関係性に現実味が生まれるんです。

──そのファミリーの鍵となるのは、本作でカムバックを果たしたジャスティン・リン監督です。リン監督が『ワイスピ』に独自に取り入れたものは何ですか?
ジャスティン・リンが『ジェットブレイク』を監督するということを、本人よりも先に僕は知っていました。『ICE BREAK』の撮影より前にその話をしていたので、僕は頭がおかしいのかと思われましたよ。他の監督のことも大好きで、ジェームズ・ワンもF・ゲイリー・グレイもみな素晴らしい仕事をしてくれました。でも、フィナーレを作り上げるという役目が5〜7年前に僕にのしかかってからは、『ワイスピ10』がジリジリと近づいてきている感覚があって。
ジャスティンがもたらしてくれたものは、アーティストとして個人的に手短に言うと、製作全体におけるコミットメントがズバぬけている。ストーリーテリングの面で言うと、この神話のことを深く理解している。10年以上やっているからこそだと思います。だからこそ、彼が『ワイスピ10』の2部作を監督することが重要だったんです。そして、魔法的な本作『ジェットブレイク』は、そこに繋がるプリクエルなんです。

──本作を絶対に見逃してはならない理由は?
(ため息)『ワイスピ』が伝統になっていること、『ワイスピ』はファミリーについての映画であること、『ワイスピ』のように友人と一緒に観たい映画はそれまでなかったこと、あなたもファンとして、観客として、20年間の旅をしてきたこと、シリーズ9作目にしてようやくドムのオリジンが描かれること、第1作で、なぜブライアンが車を恐れているのかをガレージで話すシーンで、父を失ったからだと知ること、ブラザーフッドそのものであるようなキャラクターの壊れた兄弟関係が今作で描かれること、それから、壮大なアクションシーンがあること……、そういったことはもちろんのことですが、見逃せない理由は、ファンのために作ったからです。
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