中谷 直登ヴィン・ディーゼルが語る『ワイスピ』ポール・ウォーカーとの、あの日の出来事 ─ 『ジェットブレイク』公開への想い【インタビュー映像】
──世界は変動の最中にあって、私達も変化しているところです。あなたの中で、変わらずに守り続けたいことはなんですか？
変えたくないことは……、前向きな人生観です。それから、これは前にも話したことだけど、アーティストとして、子どものような探究心をなくしてはいけない。年を重ねれば重ねるほど、童心はなくさないようにしたいなと思いますよ。
──本作『ジェットブレイク』はシリーズ史上最もエモーショナルで、葛藤が描かれます。キャラクターの掘り下げについて？
まるで人生そのものです。彼はとても葛藤しています。それは物語の一部であって、おそらく父性の一部なのでしょう。実際の人生でも、親になると、自然と、自分の両親のあり方が反映されるもので。より良い親になろうと尽くすんですよね。話はそれますが、このシリーズでは兄弟の関係性を描いてきました。血で繋がっていなくとも、絆があれば兄弟なんです。過去に戻って、自分の父の死の原因になったと思っている相手と和解をするんです。その相手というのが、自分と血が繋がっていると。ヘヴィな話になりそうですね。
──ジョン・シナとの共演はいかがでしたか？彼をシリーズに迎え入れられて、どうですか？
（一息置いて）ただただ、ラッキーでしたね。ジョン・シナと共演できて、本当にラッキーでした。御存知の通り、僕は多文化的な映画スターなもので、どんなキャストでも兄弟になりうるってことです。なので世界中から探しましたよ。
覚えているのは、ジョン・シナが……、彼がずっとこのシリーズに参加したがっているということは他のプロデューサーから聞いていたんですけど、「お会いしてみますか」ということでお招きしたんです。 撮影一ヶ月前だったので、僕のマインドもドム状態になっていました。あらゆることをブロックして、ドムという人物のことだけを想っていたんです。すると彼がやってきて、あの日の僕のInstagramを見れば書いてあることですが、「ありがとう、パブロ」という思いでした。その理由は、僕のキャスティングへの不安な思いを、パブロ（ポール・ウォーカー）が和らげてくれて、ジェイコブ役にジョン・シナをもたらしてくれたように感じたからです。
──フィクションと現実の境界線は、時として曖昧です。長年ドミニク・トレットを演じられてきて、ご自身の人生に影響はありましたか？また、その逆もありましたか？
想像以上にありますよ！説明しきれないくらいに！気付いている以上に！
このシリーズが始まったころ、僕は自分の家族が持てるかどうか、あまり自信がありませんでした。僕は仕事一筋で……。この業界で厳しい仕事にまい進していると、自分には家族ができないんだろうなという感覚がありました。ドム・トレットも似たようなものです。ドム・トレットは、おわかりいただけると思いますが、あまり将来に希望を持っていないし、社会のこともあまり信用していない。おそらく、自分の子どもを持つほど世界を信用していなかったと思うし、自分自身のことも信じていなかったでしょう。
皮肉なのですが、シリーズ5作目『MEGA MAX』（2011）で、ドムがブライアンと「お前はいい父親になれる」と話すシーンがあります。その時ドムは、「自分はいい父親にはなれない」と考えていたんです。それはセリフでは言われていませんが、ドムは暗にそう伝えていたんです。それが今作に繋がるんです。今作で、ドムが命をかけて父親になろうとする姿を見ることができます。
インタビューが終了すると、感謝の思いを心の底から絞り切って抽出するように、小さな声で「Thank you…」と微笑んだヴィン。20周年を迎えた『ワイルド・スピード』の集大成的な最新作を、コロナ禍の厳しい状況が続く世界に向けて、ついに劇場公開できることへの喜びで全身が包まれているのだろう。
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