【ネタバレ解説】『ファンタビ』ジェイコブが杖を持っても魔法使える説、J.K.ローリングが15年以上前にヒントを出していた

この記事には、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』のネタバレが含まれています。

「杖とはただの乗り物でしかない」
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』では、グリンデルバルドが国際魔法使い連盟の指導者を決める選挙に出馬する意向にあることを察したダンブルドア先生が、これを阻止しようとデコボコチームを結成。魔法動物学者のニュートを筆頭に、それぞれ目的もバッググラウンドも異なる魔法使い、魔女、そしてマグルが集められた。
公開前に話題を作っていたのが、マグルのジェイコブだ。予告編では、魔法の杖を渡されるだけでなく、ジェイコブの握った杖から魔法が放たれる描写も登場した。ここで浮かび上がった疑問こそ、「マグルとて杖から魔力を出すことはできるのか?」というもの。これまで、ハーマイオニー・グレンジャーのようなマグル生まれの魔法使いや、魔法使いの家庭出身ながら魔力を生み出せないスクイブといった人々は存在したが、魔法を使える人間は登場していない。
それでは、疑問の答えは何だったのか。劇中、ドイツで開かれたプレパーティーの会場では、予告編にあったようにジェイコブが杖から魔法を繰り出す。魔法は制御が効かないまま効果を発揮していったが、なんとか上手くいったのはその場に同行していたデコボコチームのユーラリーのアシストあってこそだった。
この描写から、マグルは自らの力で魔力を発することができないということが推測されるが、言葉の説明がなされることはなかった。もっとも、魔法ワールドの原作者で知られるJ.K.ローリングは、この疑問に1つの解釈をすでに与えている。2006年8月、米ニューヨークで開催されたチャリティイベントでの朗読に出演したローリングは、オーディエンスの子どもたちの前でこう語っていたのだ。
「私はよくこう聞かれるんです。もし私の世界で、マグルが魔法の杖を手にとったら何が起こるのかと。その答えはおそらく、思いがけないものであるはずです。かなり危険にもなりえます。なぜなら私の世界で杖とはただの乗り物でしかなく、その人の内面にあるものの容器でしかないからです。」
つまり車で例えると、ジェイコブのようなマグルが杖を持つということは無免許のままハンドルを握っているようなもので、さらに杖を振ることとは技術の無い初心者が蛇行運転をするのと同じことになる。ローリングの説明は『ダンブルドアの秘密』で証明されたようなもの。このセオリーで考えると、マグルが杖を持っても良いことはなさそうだ。実際のところ、ジェイコブが杖を上に突き上げると、周りの食器類が嵐に巻き込まれるようにして散乱し、現場は混乱を招いていた。
しかし、肝心のマグルが魔力を生み出せるのか?という疑問についてはまだ解決できていない。これは、ローリングが2008年に出版した書籍『吟遊詩人ビードルの物語』内で記されている次の注釈が説明してくれるだろう。
「古くは、1692年に行われた魔法省神秘部の広範な調査によれば、魔法使いや魔女は生まれつきのものであり、創り上げられるものではない。時に、明らかに非魔法族の血でも(もっともその後のいくつかの調査の結果、家系図のどこかに魔女や魔法使いが存在したことをうかがわせるものがあったが)、魔法の能力を持つ「変わり種」が出現するが、マグルは魔法が使えない。せいぜい──または最悪の場合──マグルが魔法を経験するのは、魔法の力を伝える道具であるはずの本物魔法の杖にまだ魔法力が残っていて、それが変な調子に暴発し、予測不能、調節不能の効果をもたらす時のみである──。」『吟遊詩人ビードルの物語』P83,松岡佑子訳
ここから導き出せる答えは、魔力はジェイコブから放たれたのではなく、杖に蓄積されていた魔力が暴発したということになる。ここで新たに、杖はどのようにして魔力を蓄積したのか?という疑問が生じてきたり、そもそも劇中では杖に芯が入っていないことが明かされていたりもしたが、こうした何もかもを含め全てはジェイコブに杖を授けたダンブルドアのみぞ知ること。ユーラリーの助けにより魔力が発生していたようだが、実際にはダンブルドアが魔力を吹き込んだという可能性もある。
ところでTHE RIVERは以前、ジェイコブ役のダン・フォグラーに「彼の得意な魔法は何か?」と公開前のインタビューで尋ねたところ、「愛とパンを焼くこと」という回答が返ってきた。ダンが魔法の名前を答えなかったことに当初は疑問を抱いたが、今思い返せば上述の事実を知った上での回答だったのかもしれない。
Source: Benefit reading transcripted by Accio Quote