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【インタビュー】『フレンチ・ディスパッチ』エイドリアン・ブロディ、ウェス・アンダーソン愛を語る ─ 雑誌ニューヨーカーからの影響も

フレンチ・ディスパッチ
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)『犬ヶ島』(2018)などのウェス・アンダーソン監督、4年ぶりの新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が、2022年1月28日(金)より待望の日本公開を迎える。本作の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。編集長の急死を受けて癖の強い記者たちが総結集し、これまた癖の強い記事を寄せ集めて最終号を完成させる。マガジンカルチャーをこよなく愛してきたウェス監督のジャーナリスト・ライターたちへのラブレター的1作だ。

キャストには、ウェス監督作品の常連組から初参加組まで色とりどりの面々が集結した。このたびTHE RIVERでは、2007年の『ダージリン急行』に始まり、『ファンタスティック Mr.FOX』(2009)や『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)にも出演してきたエイドリアン・ブロディにインタビューする機会に恵まれた。『フレンチ・ディスパッチ』でエイドリアンが演じるのは、1つ目のストーリー「確固たる名作」の中で登場する美術商の男、カダジオ。ベニチオ・デル・トロ演じる天才画家モーゼスとのコミカルな掛け合いを見せている。

海外メディアとの合同取材にリモートで応じてくれたエイドリアンは、自宅の庭と思われる野外から自分のスマホを通じて登場。ラフな格好が印象的だったが、作品への思いやウェス監督愛を真剣に語ってくれた。

アーティストの両親、雑誌ニューヨーカーからの影響

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

── あなたの父親は画家でしたよね。美術商を演じるにあたり、どこからインスピレーションを受けましたか?

とても面白い繋がりですよね。(親からの影響は)一理あるかもしれません。カダジオという人間は、芸術品の所有者意識を持っていて、自分が作り出したと思っている。ある意味でそれは正しくもあります。モーゼス(ベニチオ・デル・トロ)の作品を名高きコレクターたちに売り渡しているという意味では、カダジオが作り出したものですから。アーティストの価値を高めることは、彼にとっての成功にほかならないんです。僕自身アーティストとして、カダジオになれて嬉しかったです。時には、どんなに素晴らしい画家の作品でも日の目を見ないことがある。そうした人たちって、自分たちの作品を世に出すために画商を探すんです。それを画商は真にふさわしいコレクターたちの元に送り届けるわけですからね。

僕自身、ずっと画が大好きで、仕事がない時には画を描くことにたくさんの時間を費やしています。おっしゃったとおり、僕の父親は才能のある画家でした。誰かに売るということはしていませんでしたが。母親も才能のあるアーティスティックな人で、彼女が手がけた写真や本は美しかったです。そうした影響はありますね。人生そのものや芸術人生を築き上げる自由さを与えてもらいました。これにはずっと感謝しないといけません。だって簡単に諦めてしまうことも出来たわけですからね。両親は僕を導いてくれました。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

── ウェス・アンダーソン監督は常連組のキャストには出演をオファーせずに、ただ「いつ、どこで?」ということのみを伝える、とお聞きしました。あなたの場合はどうでしたか?

ウェスの作品に出る機会に恵まれた俳優の多くは、とにかく参加してみるという姿勢だったと思います。すごく楽しいんですよ。毎回違うように感じられますし、キャストのアンサンブルの一部になれる。ウェスはユニークで最高の方なんです。確かにウェスは、“ねぇねぇ、役考えたよ。いついける?”って感じです(笑)。僕は、“詳細を教えて”って聞きますけどね(笑)。でもそれって最高な電話の受け取り方ですよね。

── この映画は雑誌記者を賛美するものでもあります。ウェス監督は学生時代に雑誌ニューヨーカーを読み漁っていたそうです。あなた自身、雑誌には親しんでこられたのでしょうか?

もちろんです。まさに僕の家にもニューヨーカーは常に置いてありました。両親が愛読していたので。僕もそれを読んで育ちましたし、ロサンゼルスに引っ越した時とか帰省した時には、母親がわざわざお気に入りの記事を切り抜いて渡してくれたのを覚えています。僕のために最高の記事を集めてくれて、そのどれにも刺激をもらいました。あと、ニューヨーカーのお気に入りのコミックを切り抜いて、冷蔵庫に貼っていたことも覚えていますね。だから雑誌に愛着を持ち続ける気持ちはすごく分かります。

ウェス監督もジャーナリズムの伝統に敬意を払おうとしているのは間違いないでしょうね。フランス文化へのリスペクトもあるでしょうし、ウェス監督は海外で働く人達の生活を描くことも意識したでしょう。僕も俳優として海外で過ごすことが多かったので、共感できます。外国を味わい、生きる。そういう生活は僕の人生に大きな影響を与えてくれました。旅行したり、世界を間近で感じて繋がりを抱いたり。街を探索して会話を聞く。そういうことは観光とはまた違う感覚を与えてくれるんです。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カ
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.
フレンチ・ディスパッチ
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

ウェス監督との友情、何度も出演するのは「何より人として好きだから」

── ウェス監督は、本作がフランス映画へのラブレターだともおっしゃっていました。今は以前より映画館に行く人が少なくなってしまって、オンラインでの映画鑑賞も主流になってきています。そうした現状への批判をウェス監督は行ってもいるようにも思いますが、あなた自身はこの映画に込められたメッセージについて、どうお思いでしょうか?

僕たちの時代はコミュニーケーションや文章形式などの過渡期にあるんだと思います。SNSを通じた声もたくさん見られるようになって。ある意味でそうしたものは情報や集中力を消耗させてしまう。ただ、ウェスは自分が作っている作品の形式の為に戦おうとしているんだと思います。彼のスタイルはとりわけ珍しいですよね。そんな彼には感心させられます。彼が創り出すディテールもそう。彼の作品には答えというものが無いじゃないですか。

もちろん芸術の世界への批判もあるとは思いますよ。それでも彼は芸術への愛や、芸術の世界の偉大さ、芸術家の苦しみを表しているんです。作品自体とても楽しいですし、美しいですよね。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カ
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

── ウェス監督はどのような演出をされていましたか?

彼は本当に正確なんです。複雑なショットが多くて。カメラのアングルは1人のキャラクターにあわせて常に動き続けていて、それがまた戻ってくることもある。カメラが廊下に向けられたかと思うと、また誰かが部屋に入ってきてその様子をパンで追いかけたりもして、すごく複雑なんです。その間にもキャラクターは会話を続けていなければいけない。全てが上手くいっていないといけないですし、失敗できない。(カメラを向けられていない)他の人もしくじれないですし、彼が望むようなものが撮れるまでは何度もやるんです。彼は妥協を決してしませんよ。それでもすごく楽しいです。完成したものを見る時は最高ですね。

── ウェス監督は、キャスト全員に参考用の映画を5本用意したとお聞きしたのですが、これって本当ですか?

これは他の人にも聞かれましたが、彼はそういうことはしていません。ただ、彼はお気に入りのフランス映画を見せてくれました。雰囲気としてインスピレーションを与えてくれる作品を、夕方にロビーに皆で集まって観ました。彼は図書館のような存在で、借りたいものがあったら貸してくれました。

僕自身は、空いている時間に勉強をしました。朝早く起きて勉強してから仕事に行く、みたいな。映画を観る時間はあまり作れませんでしたが。たしかウェスは、僕が子どもの頃に観たフランス映画の『赤い風船』を持っていたっけな。ほかにも(ジャン=リュック・)ゴダールや(フランソワ・)トリュフォー、ルイ・マルといった監督たちからの影響はあると思います。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

── 常連組のあなたから見て、ウェス監督の特別なところは何だと思いますか?

まず最初に、僕は彼のことが人として大好きなんです。また出たいと思わせてくれる。一緒にいて楽しいと思えるんです。あと彼は毎回特別なものを作ってくれます。前作からどんなにスタイルが変わっても、とにかくユニークなんです。彼の作品をサポートしたいという気持ちもありますね。だから声をかけてもらったら喜んで出ますし、これまで一緒にお仕事できたことには感謝しています。彼との友情や、彼のおかげで経験できたこともあります。彼との友情は続けていきたいです。

── ベニチオ・デル・トロとの追いかけっこのシーンの撮影についてお聞かせください。

あのシーンの撮影は大変でした。とても複雑だったので。飛んできたものを魔法のようにキャッチできてしまったのが面白かったです。僕のキャラクターはベニチオに金属トレイを投げるんですけど、彼はそれをキャッチしちゃうんです。どんなに僕が彼めがけてモノを投げても、取ってしまうんですよ。それでベニチオが投げ返してきて、そうしたもの全てがカメラに収められていますよ。すごく良い感じに撮れましたし、障害物コースのようで、イスとか何でも転がっていて(笑)すごく楽しくて、騒ぎもしましたし、あの日は現場も笑いで溢れていました。

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』は、2022年1月28日(金)より全国公開。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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