マーベル混乱、ケヴィン・ファイギが軌道修正中 ─ X-MENに10年計画あり

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を手がけるマーベル・スタジオが、近年の苦境を受けて戦略の見直しを進めている。スタジオのトップであるケヴィン・ファイギ社長は、人気キャラクター「X-MEN」の導入に向けた長期計画があることも明かしているという。
米Wall Street Journalは、関係者らへの取材を通じたマーベル・スタジオ作品パフォーマンスの特集レポートを掲載。紐解くと、親会社ディズニーによるディズニープラスでのコンテンツ拡充戦略が仇となったように見える。
ディズニープラスでは2021年以降、物語を補強したり、独自の世界観を展開したりするドラマシリーズがいくつも展開された。これらはユニバースをより豊にしたが、一方で品質の低下や供給過多による「マーベル疲れ」を招いた。「戦略はただ拡大、拡大、拡大になった」と、マーベルに勤務した人物の発言が紹介されている。
ファイギ社長はここ数年の作品量の急増について、「より多くの物語を届けたい」という熱意や、「優れた企業市民」でありたいという思いから推進してきた。しかしWSJは、この戦略が結果的には誤った判断だったと伝えている。マーベルの「新しいドラマシリーズや映画を全て観るのは、娯楽というよりも宿題のように感じられ始めた」と、ファイギは周囲に漏らしているという。
特に2020年代初頭、スタジオ内ではファイギからのフィードバックを得るのに十分な時間が取れなかったと当時のスタッフは証言。その結果、ファイギの意見が反映された頃には既に不要となっていた作業に何週間も費やし、修正に割く時間も残されていなかった。困り果てたスタッフが廊下でファイギを追いかけて返答を求めるということもあったと報告されている。
この数年の経験を踏まえ、マーベル・スタジオのファイギは現在、ストリーミング重視だった方針からの転換を図っている。かつてのように、映画を軸としたストーリーテリングに原点回帰する動きだ。
そこで再び白羽の矢が立ったのがロバート・ダウニー・Jr.。スタジオは社運を賭けた『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の顔役にダウニー・Jr.を再起用し、2024年のサンディエゴ・コミコンで大々的にアナウンスした。「特に緊急事態には、ファイギは信頼できる人々を呼び戻すことを好む」と、ファイギと仕事を共にした人々は証言しているという。
今後の注目はX-MENの存在だ。マーベルで最も人気の高いチームのひとつであり、ファイギはすでに10年計画を描いていると同僚に話しているという。具体的な内容は明かされていないが、次の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』には旧20世紀フォックス時代の『X-MEN』シリーズ出演者がカムバック出演する。
2025年は2月に『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が公開。ファン評価は上々だったが、累計興収は約4.1億ドルに留まった。これは昨年のヒット作『デッドプール&ウルヴァリン』13億ドルに対して3分の1程度だ。
現在は最新作『サンダーボルツ*』が公開中。高い評判を獲得する同作は米国内初週末は7,600万ドルで事前予測通りの堅実な滑り出し。7月には『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』を控え、今年は3作の劇場映画が公開されることになる。
しばらくの間は、2025年の公開本数がピークとなるだろう。親会社ディズニーCEOのボブ・アイガーは、映画作品もドラマシリーズもそれぞれ年2本程度に減らすとの方針を打ち出している。
今後には、2026年5月1日に『アベンジャーズ/ドゥームズデイ(原題)』が、2027年5月7日に『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ(原題)』がそれぞれ米公開予定。待機中の企画はいくつかあるが、現時点で他の公開予定は明言されていない。一度は発表された『ブレイド』についても品質見直しのため製作は休止状態。慎重を期すようになったスタジオの姿勢がうかがえる。
▼ MCUの記事
Source:Wall Street Journal