中国版『ファイト・クラブ』エンディング修正、デヴィッド・フィンチャー監督が批判「理解できない」

中国配信版として公開されるにあたり、結末部分が修正されたとして話題を呼んでいた映画『ファイト・クラブ』。このたび、メガホンを取ったデヴィッド・フィンチャー監督が英Empireを通して、本件に関するコメントを出した。「この物語が好きじゃないなら、なんでライセンスを取得しようとしたのか」と戸惑いの声を上げている。
2022年1月下旬、中国の大手ストリーミング・サービスのTencent Videoが『ファイト・クラブ』の配信をスタートするにあたり、高層ビルが爆破されるというエンディングをカットし、代わりに以下のようなテロップを表示して内容を修正したことが話題を呼んだ。
「タイラーからの手がかりにより、警察はすぐさま計画全体を把握し、全ての犯罪者を逮捕。爆弾による爆破を阻止することに成功した。公判後、タイラーは精神病院に送られ、治療を受けた。2012年、彼は退院した。」
この大幅な変更について、フィンチャー監督は「私にとっておかしくてならないのは、中国でこのエンディングを書いた人は小説を読んだのだろうなということです。だってチャック・パラニュークの小説にぴったり即していますから」と語っている。確かに中国版の修正後の内容は、タイラーの計画が果たされず、逮捕されたジャックが精神病院に収容されるという原作小説のエンディングと酷似する。これには原作者のチャック・パラニュークも自身のTwitterで「それじゃあ中国では皆、ハッピーエンディングになるわけだ!」と痛烈に批判していた。
フィンチャー監督は配給権が中国に渡るまでの内情を把握していたのか、「これが私たちの知っていること」として、「中国で上映するためにニュー・リージェンシーから映画のライセンスを取得した企業は、次のような契約を要求していたんです」と述べている。「“検閲の目的のために、(本編が部分的に)カットされるかもしれない”というように。誰も、“もしエンディングが気に入らなかったら、変更しても良いでしょうか?”という言い方はしませんでした」。こうした上で、「だから今、“トリミング”という行為への議論がなされているんです」と疑問を呈する。
さらに、「もしこの物語が好きじゃないなら、なんでライセンスを取得しようとしたのか」と、戸惑いを隠せない様子の監督。「私には、“我々のサービスにとってこのタイトル(作品)があると都合が良い。ただ、違う映画としてあって欲しい”というような考えが理解できない」と中国版エンディングの修正を行ったTencent Video側を批判した。「この映画は20年前のものですよ。(ライセンスを取得するほどまでに)可愛がられるような評判がこれまでにあった作品ではないのに」。
エンディングの変更を受けて、中国国内外からは過剰な検閲行為だとして非難の声がSNS上で殺到。2月上旬には、エンディングがオリジナル版に再度修正されたことが分かっている。
Source: Empire,Chuck Palahniuk Twitter
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