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デヴィッド・フィンチャー、マーベル映画に疑問&スター・ウォーズを断った理由 ― テレビドラマの可能性とは

デヴィッド・フィンチャー
Photo by Raffi Asdourian ( https://www.flickr.com/photos/zaffi/13522588123/ ) / Remixed by THE RIVER

映画『セブン』(1995)や『ファイト・クラブ』(1999)、『ソーシャル・ネットワーク』(2010)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)などを手がけたデヴィッド・フィンチャーは、その特筆すべき作家性で映画ファンからの熱狂的な人気を集める映画監督だ。
彼は近年、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013-)や最新作『マインドハンター』(2017)など、テレビドラマの分野で優れた作品を世に送り出している。

スクリーンで作品を発表してきたフィンチャーは、なぜ今テレビドラマに軸足を移しているのだろうか? 彼の言葉からは、現在のスタジオ製作による大作映画が抱える課題が浮かびあがってきた。標的となったのは、映画界で無視できない存在感を放っているマーベル・コミックだったのである。

名匠フィンチャーが考える「テレビドラマの可能性」

英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、フィンチャーは現在の映画が抱える問題を、ヒーロー映画を例にあげながら指摘している。

「映画では登場人物のために割ける時間がないんです。今は、ですね。『大統領の陰謀』(1976)を観ると、すべてが登場人物にかかってるわけですから。今の映画は滅亡から世界を救うことが重要なんです。それほどたくさんシーンもない。私が作れる映画でさえそうです。なぜだか考えてみてください。多くの場合、それは時間がないからですよ。」

最新作『マインドハンター』のためイベントに登壇したフィンチャーは、「1970年代の映画会社は観客を楽しませる方法を知らなかった」と話す。裏を返せば、現在の映画スタジオはその方法を熟知してしまったということだろう。
一般に比較的短めの映画が好まれ、映画製作の方法がメソッド化されてしまった状況下で、フィンチャーは映画ではなくテレビドラマが持つポジティブな可能性について以下のように述べた。

「(ドラマの世界には)才能ある人々がすごくたくさんいます。食べていくだけでは満足できない、マーベルで働くのでは満足できない人たちがね。彼らのための場所を作れればと思いますよ。思慮深く、大人向きで、面白くて、複雑で、挑戦的なストーリーを作ったり、(メソッドから)はみ出す方法を見つけたりできる場所を。
三幕構成(編注:一般的な映画脚本の構成)に縛られない方法もありうるし、22分の放送枠やクリフハンガー(編注:次回が気になる終わり方)とは違うものもありえます。楽しい時間になると思いますね。」

自身の手がけた『マインドハンター』の製作で、彼はいわゆる方法論や時間に縛られない方法を強く心がけたという。フィンチャーは「魅力的でダイナミックなパワーがあれば、ふたりの人物がコーヒーをすする場面が(脚本の)5ページあっても気にしなかった」と振り返るのだ。

『スター・ウォーズ』を断った理由、スタジオとの付き合い方

しかし一方で、デヴィッド・フィンチャーという映画監督は長年にわたって映画スタジオと深い関係にあるクリエイターだ。再び英フィナンシャル・タイムズ紙にて、彼はスタジオの製作方法にも一定の理解を示している。

「スタジオにいる多くの人たちは、まだ素晴らしい戦い方をしていますよ。幹部には私の友人もいますしね。ただ、スタジオで映画を作りたければ彼らのやり方に合わせることです。ロマンティック・コメディだったり、オスカーを狙って頭を悩ませたり、スーツを着たヒーローの大作映画だったり、そこそこ予算のある続編だったり。」

何を隠そうフィンチャー自身も、そうしたオファーを数々提示された経験の持ち主なのだ。たとえば『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)をめぐって、フィンチャーがルーカスフィルムとの交渉に参加していたことは知られたエピソードである。
最終的にJ.J.エイブラムスがメガホンを取ったこの映画について、彼は交渉を回想して「ディズニーやルーカスフィルムの求めるものがわからなかった」と語ったことがある。また英エンパイア誌のポッドキャストでは、別の切り口から(冗談めかしつつ)オファーを断った理由を明かしていた。

「(『フォースの覚醒』は)素晴らしい仕事だと思いましたよ。[中略]でも私には、過去ふたつ(の3部作)の成功を追いかけることが想像できなかったんです。それにハリソン・フォードやキャリー・フィッシャーをこき使うのに耐えなきゃいけませんし、(興行収入)10~15億ドルという期待にも応えなきゃいけない。プレッシャーになりますよね。[中略]本当にやりたいものかどうかを確かめなければなりませんでした。人生の2年間を、1日の14時間を、1週間の7日間を費やすわけですから。」

一連の発言からたやすく想像できるように、フィンチャーは自身の作家性をそのまま活かせる、観客や視聴者に自分自身の方法で高い満足度を与える作品を生み出すことにのみ現在は興味を示しているのだろう。映画からテレビドラマへ軸足を移し、メソッド化された方法に疑問を投げかけ、大作映画をやすやすと引き受けない姿勢には一貫した信念が感じられるのだ。

しかし、フィンチャーには今後“とある企画”が待機している。自身が「そこそこ予算のある続編」と形容したものにあてはまるだろう、ブラッド・ピット主演『ワールド・ウォーZ』(2013)の続編だ。その気になる進捗について、彼はこのように語っている

「映画を作る理由が生まれるよう、材料が揃うことを望んでいます。言い訳のない映画になるように。」

すなわち監督への就任こそアナウンスされているものの、現時点ではまだ納得して先へ進める状況ではないということだろう。気長にプロジェクトの前進を待つことにしよう……。

デヴィッド・フィンチャー最新作、ドラマ『マインドハンター』はNetflixにて配信中

Sources: https://www.empireonline.com/people/david-fincher/empire-podcast-david-fincher-interview-special/
https://theplaylist.net/david-fincher-problem-movies-20171018/
https://www.youtube.com/watch?v=Ilcw8Dp1Bh8
http://www.totalfilm.com/news/david-fincher-discusses-meeting-disney-about-star-wars-episode-vii
http://collider.com/david-fincher-marvel-studio-movies/
http://collider.com/david-fincher-star-wars-sequels/
Eyecatch Image: Photo by Raffi Asdourian ( https://www.flickr.com/photos/zaffi/13522588123/ ) / Remixed by THE RIVER

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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