幻のデヴィッド・フィンチャー版『スパイダーマン』、オリジンを省略してグウェン・ステイシーとの出会いで始まる物語だった?

『ファイト・クラブ』(1999)や『ゾディアック』(2007)『Mank/マンク』(2020)のデヴィッド・フィンチャーは、映画版『スパイダーマン』を手がける機会に2度接した過去がある。一度目はサム・ライミ版『スパイダーマン』3部作の前、二度目は『アメイジング・スパイダーマン』2部作の前だ。
もともとジェームズ・キャメロンが長らく温めていた『スパイダーマン』の映画化企画は、キャメロンの離脱後、フィンチャーのほか、トニー・スコットやクリス・コロンバス、アン・リー、マイケル・ベイなど複数の監督に打診されていた。英The Guardianでは、当時フィンチャーが提案したアイデアが、“ピーター・パーカーが放射能を浴びたクモに噛まれる”というオリジンを削除したものだったことが明かされている。
「(スタジオには)まるで興味を持たれなかったですよ(笑)。わかりますけどね。彼らは“どうしてオリジン・ストーリーを削除したいんですか?”という感じで、僕としては“バカバカしいからですよ”と。あのオリジン・ストーリーは多くの人にとって大切なものですが、僕としては“赤と青のクモでしょ?”と思っていた。自分の人生でやれることはたくさんあるけれど、これはそうじゃないと思ったんです。」
2011年にも、フィンチャーは米GIZMODOのインタビューで「(スパイダーマンの)起源の物語にはまるで興味がありませんでした。僕が真剣に向き合えるものではなかった」と語っている。この時、フィンチャーは自身の考えていたオープニングのアイデアも明かしていた。
「僕の作るつもりだったタイトル・シークエンスは10分くらいで、基本的にはミュージックビデオやオペラでした。ワンショットでピーター・パーカーの物語を語りきってしまうんです。放射能を浴びたクモに噛まれ、ベンおじさんが死に、メリー・ジェーンを失う。そして、ピーターとグウェン・ステイシーが出会うところから映画を始めるんです。(サム・ライミ版とは)まるで別物、ティーンエイジャーの話ではありませんでした。どちらかといえば、奇人であることに慣れた男の物語でしたね。」
奇しくも、フィンチャーのアイデアはのちに実現している。強いこだわりだった“オリジン・ストーリー削除”も、マーベル・シネマティック・ユニバース版『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)で採用された。きっとフィンチャーのストーリーテラーとしての目線は、ある意味で正しかったのだろう。いささか時代に先行しすぎていた、というだけで。
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Source: The Guardian, GIZMODO