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『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』原作者とファンを尊重して大ヒット、ジェイソン・ブラムが明かす「低予算ホラー」の極意【来日インタビュー】

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』ジェイソン・ブラム 来日インタビュー撮影写真
©︎ THE RIVER

同名の大人気ホラーゲームシリーズを映画化した『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』が、いよいよ2024年2月9日より日本上陸を果たす。全世界累計興収は約2.9億ドル、これは製作ブラムハウスとしては最高額となる大ヒットだ。

ブラムハウスの創設CEOとして“恐怖の工場長”とも呼ばれるプロデューサーのジェイソン・ブラムに話を聞くと、大ヒットの要因には「ひたすら原作者と原作ゲームファンに忠実である」という誠実な姿勢があったことが見えてきた。来日したブラムに、THE RIVERが一対一で取材した。

本作『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、2014年から続く人気ホラーゲームを題材にしたもの。廃墟となったピザレストランの夜間警備に当たることになった男性が、なぜか動き出す恐ろしい巨大マスコットたちに襲われるという内容だ。

製作には、原作ゲームを生み出したスコット・カーソンも深く携わった。ブラムは8年間かけて信頼を築き、長い時間を費やしてからこの映画を作っている。

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』ジェイソン・ブラム 来日インタビュー撮影写真
©︎ THE RIVER

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』ジェイソン・ブラム 来日インタビュー

──ジェイソンさん!意外なことに初来日なんですね。日本にはアツいホラー映画ファンがたくさんいるんですよ。

そうなんですよ!実は東京オリンピックの時に来る予定だったんです。家族と一緒に2週間滞在することになっていたんですけど、コロナになっちゃって、来られなかった。大型旅行になる予定だったんだけどね……。とにかく、ずっと来たかった日本にようやく来られて、とっても嬉しいです。

──Xを見ましたが、昨日の夜はお寿司を食べたみたいですね。

もう2回食べました。昨日の夜と、今日のお昼にも。好きなネタはウニです。最っ高。日本のウニは絶品ですね。

──アメリカでもウニは食べられますか?

食べられるけど、はるばる輸入されるので、やっぱり味は落ちますね。サンタバーバラでもウニは採れるんですが、別物です。もっと大きくて、日本のほど美味しくない。日本のウニは別格。ロサンゼルスで食べるのとは、まるで別物ですよ。ハッハッハ(笑)。

──さて、日本のホラー映画は観ますか?

僕はアカデミー会員だから、本当はこんなことを言っちゃいけないんだけど、日本にいるんだからルールを破ろう。本年度のマイベストは『ゴジラ -1.0』です。素晴らしい。最高です。

──おぉ!どんなところが気に入りましたか?

自惚れているように聞こえるかもしれませんが、自分のやるべきことを思い出させてくれたというか。つまり、低予算映画ということです。それでいて『ゴジラ -1.0』は極めてエモーショナルでした。

母親と子どもの物語に、とても共感できた。あの女性は子どもを引き取って、男の家に転がり込んでくる。しかし、ガールフレンドというわけではないんですね。実際、彼らはお互い誰とも繋がっていないわけです。本当に強烈で、素晴らしく、そして奇妙な設定ですね。ゴジラを背景にしながら、感動的な物語をやってのける。これを観て、ブラムハウスの映画を思い出しましたよ。大好きです。

視覚効果も素晴らしいですよ。そして、ハリウッドのスタンダードからすれば、それほど高い製作費でもなかった。そこが素晴らしい。実は、今回の来日が決まったから、先週になって初めて第スクリーンで観たんです。素晴らしい映画でした。

女優の方がすごく良い。それに、主演俳優もすごく良い。二人とも、傑出している。設定が非常に珍しく、とても奇妙で、そこが気に入っています。

──低予算映画という話が出ましたが、低予算ホラー映画を作り続けるモチベーションは何ですか?

僕は低予算ホラー映画作りが大好きです。その理由は2つあります。

まず、ホラーとは、破壊的で、奇妙で、クレイジーな物語を取り扱える、唯一のジャンルだと思うからです。私たちの映画を見てください。インディー映画、サンダンス系の映画、独立系の映画……、ホラージャンルは、こうした映画が何百万もの観客に観てもらえるようになる配給システムなのです。だからホラーは素晴らしい。まるで、たくさんの劇場にインディー映画を届けられる、トロイの木馬のようなものです。

そして僕は、低予算映画を好みます。なぜなら、クリエイティビティにおいて“カネ”とは“敵”だからです。これは僕個人の意見ですが、大予算を持って映画作りを始めると、毎回というわけではないのですが、たいていの場合、映画は酷いものになってしまうんです。

なぜか?理由はいくつかありますが、大きなところでは2つ。例えば100万ドルや200万ドルを費やす場合、製作に携わる全員を満足させなくてはいけなくなる。ところが、全員を満足させるために映画を作り始めると、実際には誰も満足させられない、ということになります。あるいは、全員を“ちょっとだけ”満足させられるだけで、“大満足”までは至らない。

2つ目の理由ですが……、ハリウッド映画ってどれも大体似たり寄ったりだと感じますよね?その理由は、例えば150万ドルの予算でゴーサインが出た時。そもそも、このゴーサインの裏では、過去5年間で大金を稼いだ映画を3つくらい挙げて、比較して、製作するかどうかを決めているんです。僕も高額な映画を製作する時は、同じことをするんですけどね。

でも、低予算映画の時には、逆のことをやるんです。「良い企画か?」「怖いか?」「オリジナルなものに感じられるか?」「これまで観たことがないものになるか?」という視点で考える。僕たちの映画すべてが、こうした条件を合格して作られているというわけではないのですが、少なくとも「これまでに登場した映画のように感じられないかどうか」は、かなり意識しています。ちなみに、そういう点でも『ゴジラ -1.0』はとてもオリジナルでしたよね。

今回の『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は良い例ですよ。僕が最初に話したこととつながります。ハリウッドでは、スタジオが企画を立てたら、「いつものスタジオのやり方」をやる。ゲームであれば製作者のところに、小説であれば原作者のところに行き、大金を支払い、話を持ちかけ、あとはスタジオのやり方で映画化する。

僕たちの『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は真逆です。ゲームの原作者であるスコット・カーソンにパートナーになってもらって、彼が映画の創造的な原動力になった。だから、この映画は「全員」のために作っていません。原作ゲーム『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』のファンのために作っています。

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.

もちろん、原作ゲームのファンではない方も楽しめますが、そもそもそういう層のことを意識していません。ゲームをプレイした人々、この神話を理解していただける人々のために作りました。常にゲームのファンの視点でこの映画を考えています。それ以外の視点には立っていません。結果として、それが良い映画作りに繋がったと思います。

──最近のホラー映画では、『M3GAN/ミーガン』(2023)のようにSNSでバズったことがきっかけの一つとなってヒットにつながるケースが多い気がします。企画や案出しの段階で、SNSウケを意識することはあるのでしょうか?

『M3GAN/ミーガン』
『M3GAN/ミーガン』 © 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

SNSで何が流行るかを、仕掛けることは不可能だと思います。今の子どもたちは賢い。だから、SNSで何か狙って流行らせようとしたものは、絶対に流行らない。『M3GAN』もそういう観点で作ったのではなく、人形に意志が宿ってクレイジーになったら面白いだろうということで作りました。だから、あんなにバズるとは思いもよらず。もちろん、流行った時は嬉しかったですが、SNSでウケそうだからこういうものを作ろう、という考え方はしません。

ただし、SNSでウケたということがわかったら、ひたすらプッシュしますよ。でも、あれは自然にウケたんです。誰かがミームにしてくれて、そこから広がってね。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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