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【ネタバレ】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 芹沢博士の◯◯の意味、ラストシーン解説 ─ マイケル・ドハティ監督インタビュー

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
© 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

二人の芹沢博士

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、東宝製作『ゴジラ』シリーズに大きな敬意の払われた作品だ。怪獣が激突する展開や演出には、『三大怪獣 地上最大の決戦』(1964)や『怪獣大戦争』(1965)、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)などの影響が色濃く感じられる。その一方で本作は、1954年製作のオリジナル版『ゴジラ』にも直結する部分も持っている。渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士について言えば、もはや“初代『ゴジラ』の精神的続編”と呼んですら差し支えないだろう。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

エマ・ラッセル博士と元傭兵の環境テロリスト、アラン・ジョナらの目論みによって、地球は眠りから目醒めた怪獣が跋扈する星となった。人類は怪獣の動きを止めるべく、ゴジラとキングギドラが苛烈な戦いを繰り広げる海中にオキシジェン・デストロイヤーを投下。しかしこの新兵器の攻撃はゴジラを再び長い眠りにつかせ、“地球の自然に反する宇宙生物”であるキングギドラを王座へと導いてしまった。人類は、無数の怪獣たちと唯一まともに渡り合える存在を失ってしまったのだ。

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そこで、秘密組織モナークと芹沢博士はゴジラを復活させる方法を考案する。それは、かつてゴジラを生み出した核兵器によって、眠っているゴジラを再び覚醒させるというもの。しかしそのためには、ゴジラの眠る海底遺跡まで核兵器を搭載した潜水艦で移動し、自力で兵器を起動することで自分の命を捧げなくてはならなかった。この無謀な作戦に、芹沢は「私が行く」と宣言する…。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

1954年版『ゴジラ』の芹沢大助博士は、破壊のかぎりを尽くしたゴジラを殺すべく、海中でオキシジェン・デストロイヤーを起動させると自ら命を絶つ。それから65年後の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にて、芹沢猪四郎博士はゴジラを蘇らせるために最期を迎えるのだ。一人はゴジラを殺すため、もう一人はゴジラを蘇らせるために単独で海中へ潜るのである。この対比は、ドハティ監督いわく「もちろん非常に意図的なもの」だという。

「本作の、新たな芹沢博士は、かつての芹沢の失敗を正すために行動しているのだと考えたかった。今回の芹沢博士も、オリジナルの芹沢博士と同じような道のりを歩んでいます。しかし1954年版の芹沢はゴジラを殺した。我々自身の神を殺したわけです。本作の芹沢は前回とは違って、自分の神を救おうとしています。

ですから今回は、芹沢という人物を、初めてゴジラの身体に触れる人間として描きました。これは大きな意味のあることで、芹沢は愛情をもってゴジラに触れることになる。ゴジラにほとんど謝罪をするような行為でもあるわけです。」

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

ドハティ監督の思いの強さは、登場する新兵器に、わざわざ「オキシジェン・デストロイヤー」の名前を与えたことでも明らかだろう。オキシジェン・デストロイヤーによってゴジラが生命活動を停止するという、オリジナル版『ゴジラ』の再現を経ておくことが、芹沢博士の最後の行為を描くうえでは絶対に必要だったのだ。

人類と怪獣の共生

核兵器が爆発する間際、海底遺跡の中で、ゴジラと芹沢博士は視線を交わす。そして蘇ったゴジラは、艦上のマーク・ラッセル博士らモナークのメンバーともわずかなコミュニケーションを経て、それから怪獣同士の決戦へ突き進んでいくのだ。『ゴジラ』シリーズにおいて、ゴジラと人類がこれほど明確な共闘関係を結んだこと(そう解釈できる描写がなされたこと)は非常に稀である。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』における人類とゴジラの関係について、ドハティ監督は「“共生”というテーマはそもそも『ゴジラ』シリーズが描いてきたもの。本作でもそれを踏襲しました」と語っている。

「(『ゴジラ』シリーズの“共生”は)人類と怪獣の共生だけでなく、人類と母なる自然との共生の比喩になっています。ゴジラや怪獣たちと人類がふたたび関係を築くということは、かつて母なる自然との間に存在した絆を結び直すことなんです。それは、ある種族がこの世界で生き延びるための唯一の方法ですよね。

自然と関係を結び直すということは、お互いに共生することを学ぶことにも通じています。何よりも大切なのは、他者を受け入れ、共生することを学ぶこと。その中には自分とは異なるものや、恐ろしいと感じるものも含まれているでしょう。たとえばそれが怪獣だったり、自然だったり、自分とは違う人間だったりするわけです。」

ちなみにドハティ監督は、「全てのモンスター映画はそんなテーマをはらんでいると思います」とも述べている。『ゴジラ』シリーズだけでなく、『キングコング』や『フランケンシュタイン』、『ノートルダムのせむし男』など、ありとあらゆる作品には「他者を表面だけで判断せず、きちんと全体を見つめ、自分と異なる部分を受け入れるべきだというテーマがある」のだと。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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