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【インタビュー】『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』史上最強の怪獣バトルができるまで ─ マイケル・ドハティ監督のアタマの中

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

日本の怪獣王が、ハリウッドにて再び蘇った。『GODZILLA ゴジラ』(2014)の続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、ゴジラのみならず、モスラ、ラドン、キングギドラという東宝怪獣映画の至宝が大挙して観客の前に押し寄せてくる。日本のゴジラ映画ファンですら、長らく拝めなかった光景だ。

最新のテクノロジーと驚異的なイマジネーションをもって、怪獣同士の激突をかつてないクオリティで映像化したのは、幼い頃からゴジラの大ファンだったというマイケル・ドハティ監督。アニメーター、イラストレーターとしてキャリアをスタートさせ、『X-MEN2』(2003)などの脚本や低予算のホラー映画を経て堂々の抜擢となった。THE RIVERでは、ドハティ監督に“史上最強の怪獣バトル”をいかにして具現化したのか、その舞台裏とアタマの中をじっくりと聞いてきた。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

すべては脚本から始まる

こんなゴジラ映画が観たかった。だけど、こんなゴジラ映画が作れるなんて想像だにしなかった。想像を超える怪獣バトル、あるいは怪獣たちの表現は、そもそもどのようにして生まれたのだろうか。率直に尋ねると、ドハティ監督からは「すべては脚本から始まります」との答えが返ってきた。

「どんな戦闘も脚本ありき。今まで観たことのないアクションとはどのようなものか、観たことのあるアクションはどうすればもっと良くなるのか、そんな風に想像するところから始まりました。それに、できるかぎり斬新な環境下で怪獣たちを戦わせたかったんです。ストーリーボード(絵コンテ)やプレビズ(ビデオコンテ)のアーティスト、VFXのチーム、スタントマンと一緒にディスカッションしながら作っていきました。」

戦闘シーンを考える上で監督が特に大切にしたのは、「巨大なモンスターが戦っているのではなく、古の神々が戦っているように見せること」だった。かねてより監督は、本作に登場する怪獣たちを「古代の神々」と形容していたのだ。「世界は怪獣たちの所有物で、どちらかといえば我々の方が外来種」「ある古代文明において、怪獣たちは崇拝される存在だった」のだと。

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もちろん、そうして発想されたイメージを具現化するのは並大抵の作業ではない。ドハティ監督のもとに集った大勢のスタッフとともに、長い時間をかけて怪獣のバトルシーンは形づくられていったのだ。

「まずはストーリーボードです。とてもシンプルな、手描きの絵コンテが設計図になります。それをコンセプトアーティストが肉付けしていく。色彩や質感、雰囲気を描き込んでいきます。カギとなるシーンでは、コンセプトをしっかり打ち出しつつ、同時にプレビズも作り始めていきました。アニメーターがストーリーボードのアニメーション版を作って、そこにはカメラの動きやカメラアングル、サウンドも入ります。実際の映像の、非常にラフなものを作るわけです。

それから、撮影監督(ローレンス・シャー)やVFXスーパーバイザー(ギョーム・ロシェロン)と一緒に、実際の撮影をどうするかという計画を立てます。セットで一緒に撮るのは人間の俳優ですからね。そして撮影が終わったら、プレビズの映像と一緒に、全てをVFXスタジオに渡します。そこで実写映像とCGのアニメーション、さらには埃や煙、風といった細かいディテールも丸ごと合成してもらうんです。」

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

実に一年以上かかったという長い作業の中で、特に重要な役割を担っていたのはコンセプトアーティストだ。神々の戦闘シーンで監督が目指したのは、「絵画に生命が宿ったような」映像。そこでアーティストたちは、レンブラント・ファン・レインの作品をはじめ、歴史的な名画や水彩画を多数研究し、その雰囲気や光の描き方をアートに取り入れたという。またVFXスタジオは、そこに描かれたものを現実世界で実現するという重大な責務を負っていた。

次ページでは、ドハティ監督のインスピレーションの源や、参考となった作品の数々などをご紹介していく。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。