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駄作ではない!?『失敗作』扱いされる2011年映画『グリーン・ランタン』を全力で再評価する

DCコミックスの人気シリーズを実写化した2011年公開の『グリーン・ランタン』に対して皆さんはどのようなイメージを持っていますか?
本作の主演を務めたライアン・レイノルズ自身も『デッドプール』作中で自虐する通り、一般的な評価としては「失敗作」が妥当でしょう。目玉の大作映画として数億ドル規模の予算をかけて製作されたにも関わらず、興行的には大失敗し、大赤字になってしまいました。批評家からの意見も厳しいものが多く、「アメコミ実写化作品の失敗例」といえば『グリーン・ランタン』の名前が挙がるほど、そのマイナスイメージは固定化されてしまっています。

しかし私は『グリーン・ランタン』が失敗作だとは思えません。たしかに近年のウェルメイドなアメコミ映画と比較すると物足りなく感じる部分もあるのですが、総合的に見れば、アメコミ的・映画的な楽しさに溢れた愛すべき作品なのです。個人の感想は自由だから「失敗作」と評する人を批判はしないし、決して私の意見の押し付けにはしません。あくまで「こんなにいいところがあるのに!」という態度で話を進めます。しかし、この記事をきっかけに『グリーン・ランタン』を再評価する人がひとりでも増えてくれればと思っています。HuluやNetflixでも『グリーン・ランタン』の配信が始まるので、この記事と合わせてお楽しみいただければ幸いです。

「失敗作」の先行イメージ

『グリーン・ランタン』が不当な低評価の嵐にさらされているいちばんの理由、それは「失敗作」の先行イメージにあると思います。たとえば「名作」と評されている作品を見たとき、直感としてあまり面白いとは思えなくても、良かったポイントを探してなんとなくいい映画をみた気になってしまうように、往々にして人は他人の感想に影響を受けます。ネガティブイメージの場合も同様です。否定的な声が多くなる分だけ、ニュートラルな感想を抱くことは難しくなります。みんなから叩かれているからという理由だけで、無意識に粗探しをしてしまった経験がある人も少なくないのではないでしょうか。非常に勿体無いことです。その映画を好きになれる可能性を自分から捨ててしまっているのですから。
『グリーン・ランタン』はド派手にコケてしまったこともあり、このパターンにハマってしまった作品だと思います。作品の出来云々よりも大赤字だったことをネタにしているだけの人も多いようですが、それを考え出すと記事の大前提が崩れてしまうので、ここはあえて無視して論を進めることにします。

主人公ハル・ジョーダンの成長

私が『グリーン・ランタン』を愛せずにいられないのは、ハル・ジョーダンの魅力があるからです。軽快にジョークを飛ばし、シリアスな状況においてもユーモアを忘れない、いかにもアメリカンな彼の性格は、見ていて全く飽きません。ここはすこしデッドプールにも似ていますね。
また、彼は弱さを自覚しており、責任が持てず、怖くなると逃げ出してしまう自分を恥じています。初めの段階では、およそヒーローからはかけ離れた性格なのです。物語はそんな彼がグリーン・ランタン・コァのメンバーとしてリングに選ばれるところから始まります。観客はどうして彼がヒーローの素質を見込まれているのか?という疑問を抱きながら映画を見ることになります。アンサーはラストバトルで明かされるのですが、これが非常にスマートで綺麗なのです。他の宇宙人と比して圧倒的に若く未熟な人類が己の弱さを見つめ、その先に発見するものはなんなのか、と考えると、これ以上ないベストなアンサーだといえます。弱くて自分勝手な部分もあった彼がやがて真のヒーローへと成長していく過程がとてもカッコいいし、熱いのです。

変幻自在でイマジネーションに溢れたアクション

グリーン・ランタン・コァの楽しさはアクションに詰まっています。リングの力と意志の強さによって、ヒーローたちは思いついたアイデアをそのまま具現化することができるのです。敵を縛りたかったらチェーンを作り、落下物から市民を守りたければその上に屋根を作るのです。あまりにコミック的な要素が強いので、少々荒唐無稽に感じられるかもしれません。ここが好みの分かれ目でもあるのですが、次々に繰り出される予想外のアクションは、オモチャ箱を漁っている感覚です。このワクワク感は他のヒーロー映画にない持ち味でしょう。

手堅くヒーロー映画の王道を行く

『グリーン・ランタン』はベタすぎるほどヒーロー映画の王道を行く作品だと言えます。弱さの中に強さの種を秘めているヒーローの卵、ハル・ジョーダンのキャラクターを筆頭に、彼が愛するヒロインの存在、ハル・ジョーダンの闇落ちの「if」として登場するヴィラン、逆境を乗り越え、真の意味のヒーローに成長していく気持ちよさは、この手の映画の鉄板です。王道を外れることなく、最後までベタを貫きます。奇をてらったりせず、素直にヒーローを描こうとしているのは好感が持てるし、誰でも安心してみることができる優しい作りになっていると評価できるでしょう。シンプルな展開である分、特徴付けることも難しくなってくるのですが、そこで生じる問題点に関しては次の章で詳しく検証します。

設定とストーリーのミスマッチ

ここまで良いところを挙げてきましたが、最後に評価が低い理由についても考えてみます。この映画が気に入っている私でも、いくつか引っかかる点があります。特にグリーン・ランタンのコミック的で派手な設定(リングの創造力、緑のコスチュームを着た宇宙人、「怒り」を原動力とするラスボスなど)と後半以降の真面目なストーリーが微妙に噛み合っておらず、チグハグな印象を与えます。
前半のコメディ寄りな展開はハル・ジョーダンの軽い性格と相まって楽しい雰囲気なのですが、中盤以降はハル・ジョーダンの弱点に焦点を当て、彼がどのように成長し本物のヒーローになっていくのかを描いており、前半とのズレが生じているのです。コメディ一辺倒でもそれはそれでヒーロー映画としては物足りなさがあるので、バランスが難しいところではあります。それでもグリーン・ランタンの設定を考えると、少々シリアスに寄せすぎた印象です。語り口が安定せずフラフラしてしまったために、全体的な空気感が損なわれてしまったのはもったいないところです。

あれやこれやと描きたい要素を詰め込み、前半と後半でバランスが悪くなってしまった結果、全体を俯瞰すると盛り上がる場面に欠けて見えるのは否めません。私はハル・ジョーダンがヒーローとして覚悟を決め、戦いに身を投じる場面だけで十分に燃えるのですが、特にロジックを重視して作品を評価する人は、展開に未熟さを覚えるでしょう。ここもまた評価の分かれ目になっていると思います。

これだけネタにされるのも、ある意味では注目と期待の裏返しかもしれません。DCEUでも2020年に『グリーン・ランタン・コア』としてリブートされるそうです。一体どうなるのか想像もつきませんが、非常に楽しみです。そしてDCEUが盛り上がりを見せる中で『グリーン・ランタン』が再評価される日が来ることを祈っています。

 

Writer

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トガワ イッペー

和洋様々なジャンルの映画を鑑賞しています。とくにMCUやDCEUなどアメコミ映画が大好き。ライター名は「ウルトラQ」のキャラクターからとりました。「ウルトラQ」は万城目君だけじゃないんです。

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