「脚本を仕上げずに撮った映画は駄作になる」ジェームズ・ガンが批判 ─ 「この話を何度しても、まだそういうことが行われる」「腹が立つ」

「脚本なき映画製作」の話題に戻ると、ガンは「未完成の脚本を書いている間に第一幕の撮影を始めてしまっている」との問題を指摘。「よくあるのは、第一幕が素晴らしいのに、それが最終幕と繋がっていないこと。最後に繋がる流れが書けていないと、映画はうまくいかない。プロットとはそういうものではありません。時計のようなもので、全てがピタリとハマって一緒に動かなきゃいけない」。至極当たり前のようにも聞こえつつ、大手スタジオではこれが意外と守られていないようだ。
ガンは苛立ちを隠さない。「僕は何度も何度もそういう光景を目にしてきましたし、めちゃくちゃ腹が立ちます。この話を僕が何度も何度も繰り返しても、彼らはまだそういうことをやっている。おかしいですよ、これ。僕は絶対にやらない。絶対にやりたくない」。
実際にガンは新たに就任したDCスタジオで、タイトル不明の未発表企画をバッサリと中止したことがある。「脚本もできていて、映画のゴーサインも出ていた。進めているところでした」というが、最後まで納得ができなかったようだ。「第二稿、第三稿が上がってきたが、変化がなかった。良くなっていなかったんです。ずっと同じ状態に留まっていた。だから言いました。この映画は作れない。できません。よくないと。出来が悪いことはみんなわかっていました」。
良い監督と良い脚本家が入っているからと言って、その脚本がうまくいくとは限らないと、ガンは断言している。「こういうのは、最終的にみんなが慌てることになる。もう映画が公開されるというのに、その映画が良くなりそうにない。監督も悪評を浴びるし、脚本家も悪評を浴びるし、我々全員が悪評を浴びることになる。だから、僕はそんなことは望まない。そういう映画は作らない。だから中止したんです」。
なぜ、見切り発車と言える形で巨額を費やす大作が動き出してしまうのか?それは、「みんなゴーサインをもらうことに大興奮して、とにかく作ってしまうから」とガンは言う。「彼らは、全員に“イエス”と言わなくちゃいけないから、全員を失望させたくないからです。映画業界はお金や利益のことばかりと言われますが、実際には“私を、私を、私を、私を、私を”という感じ。酷いもんですよ。みんな嫌われたくないし、誰かを失望させたくない。それは良くない。誰にとっても良くないことです」。
マーベル・シネマティック・ユニバースでの強みや課題も学んだガンは、新DCユニバースでの計画発表にはやや慎重だ。現在公開中であるシリーズ映画第1弾『スーパーマン』は、全体におけるチャプター1である『Gods and Monsters』に属しているが、このことはあまり強調されていない。2023年2月にこのチャプターの作品予定がいくつか発表されたが、現在までにきちんとリリース計画が固まっているのは、2026年US公開予定の映画『スーパーガール』と『クレイフェイス(原題)』、同年HBOマックス配信予定の「ランタンズ」。その他にも複数の企画が存在するが、語られたように、きちんと納得のできる脚本が完成してから製作を進める意向だ。
「彼のDCワールドに対する深い愛情が、作品のフレームすべてに輝いています」とガンを称賛するのは、親会社ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのデヴィッド・ザスラフCEOだ。「我々はジェームズ・ガンの情熱とビジョンが大スクリーンで具現化した『スーパーマン』の飛翔を目にしました。『スーパーマン』はまだファースト・ステップ(第一歩)に過ぎません」。
このほか情報によると、ワーナー・ブラザースは『スーパーマン』ヒットを受けて新たな『ワンダーウーマン』映画の準備を加速させているという。こちらもジェームズ・ガンが承認する脚本が仕上がってから、初めて最終的なゴーサインを経て製作開始となることだろう。
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Source:npr